穴の底
ガイアの大穴。
直径2キロほどのクレーター。
露天掘りの鉱山のように、らせん状のスロープで底に降りられるようになっている。
「1日はかかりそうだ。」
「そうね。」
辺りは静まり返っている。
「静かすぎる。」
リースは呟いた。
「行きましょう。」
エスターは足取りも軽く、サッサと降りてゆく。
ようやく底まで着いた。野球場ほどの広さの、砂が溜まってできた平地になっていて、中心には10メートル程度の穴がある。
「何も‥‥感じない‥‥」
エスターは何を期待していたのだろう。
「ここも違ったのか‥‥」
俯いて足元を見つめていたが、まだ諦められないのかフラフラと穴のほうへ歩きだした。
「危ないよ。」
後を追ったリースがエスターの手を掴んで連れ戻そうとしたが、手遅れだった。砂が動き出してエスターは足を取られ転んでしまった。
「マズい!」
両膝ついて何とか踏ん張ろうとするリースだったが、流砂は無情にも二人を吞み込んでしまった。そのまま流されて、砂と一緒に底知れぬ穴に落ちてゆく‥‥。
(わき腹が痛い‥‥肋骨をやっちゃったな)
リースは痛みで顔をしかめた。
(防御が甘かった)
肉体強化に加えて防御壁も展開したが、落下の衝撃は想定を上回っていた。
(君の重みのせいで骨折‥‥言えないな)
二人は20メートルほど下の穴の底にいた。エスターをかばって下敷きになったリースだった。痛みをこらえて起き上がり、少し離れた場所に彼女を寝かせると、治癒スキルを発動した。
「月の波動」
骨折も擦り傷もたちまち回復してゆく。次いでエスターも回復させた後、リースは周囲を見渡した。今いる場所はホール状の空間で地下洞窟の一部のようだ。
「ここは?」
暫くしてエスターの意識が戻った。ガバッと上半身を起こして周囲を見る。ちょっと離れた場所でリースが折り畳みテーブルを置き、のんきにお茶を飲んでいるのが見えた。
「あ、気分はどう?痛いとこない?」
「問題ない。それより、君はそこで何をしているのだ?」
「ティータイム。」
「何をのんきなことを!」
「心配ないよ。助けはもう呼んであるから。」
通信用に試作した鳥形ゴーレムをさっき飛ばしてあった。半日もあればオアシスの支店にピンチを知らせてくれるはず。
「なら安心していいのだな。」
お茶を飲んでエスターが人心地ついたところで、リースは洞窟の探検にさそってみた。横穴があってその先には何かありそうなのだ。
「そうだな。ただ助けを待っているのも退屈だろうしな。行こう!」




