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今代の勇者

「勇者?」

 千年前、魔族と呼ばれる邪悪な者たちがあった。大量の魔物を率いて人類に戦いを挑み、大勢の犠牲者が出た。その時、勇者と呼ばれる者たちが魔族と戦い、これを退けた。人族に伝わる神話だ。勇者は、仲間の魔法使いと結婚して初代ロマリア皇帝となった。同じく仲間だった聖女と騎士はそれぞれ聖教会と聖騎士団を創設。エルフの戦士は、エルフの王になった。そんな話である。

「ステータスを見てごらん。」

 ステラがそう言ったので、四人はステータスを各印した。リースは探索者から異界の勇者になっていた。エスターは剣士から魔法騎士、ルクレツィアは魔法使いから星の巫女に、マグダレーナは聖騎士から星騎士へとクラスチェンジしていた。

「あたしたちの加護を得て、あんたたちは今までの器に収まり切れなくなったってことだよ。人もエルフも、成長するもんなんだ。だから逆の場合もある。オルテガといったかね。あの子は今頃、真っ青になってるだろうよ。クラスや称号は、女神が唯一、世界に干渉出来る部分なのさ。」

 上級職を得たとしても、それに胡坐をかいていては成長は望めない。通常は成長できなくなった時点で反省するが、そこで気付かなければクラスという女神の恩寵を失うこともある。そうなれば最悪、闇落ちの結末が待っている。

「オルテガ‥‥。」

 リースは言葉を失って立ち尽くした。彼の身に何があったのだろうか。

「会えばわかることさ。」

 ステラはそれ以上、その件について話してはくれなかった。



「ルクレツィアにはあたしの目をやったから。これからどこで何をするべきなのかは、見えてるはずさ。」

 ステラはそう言ってリースたちを見送った。

「世界の行く末を、あたしも見守るだけさ。歯痒いけどね。」



 サテライトから離れたシャトルは、大気圏突入の準備に入ろうとしていた。

「何処に降りればいいのだ?」

 タネ子が尋ねる。

「ヒスパニアに行って。バルチェロ。」

 即答するルクレツィアは、何かを見たようで、険しい顔をしている。

「私の故郷です‥‥。」

 マグダレーナは心配そうにルクレツィアを見る。エスターはそんな二人の手をグッと握り締める。言葉よりも強い励ましだ。

 リースはタネ子とヴィジョンを共有する能力を得たが、ルクレツィアのヴィジョンも彼女が望めば受け取れる。そして、そのヴィジョンはリースにも共有されていた。古都に迫る魔物の大群が見える。スタンピードだ。奮戦する守備隊。魔法使いが広域殲滅魔法を放って必死の抵抗を試みるも、多勢に無勢、防ぎきれるものではない。そしてリースは、その魔法使いに心当たりがあった。

(あれは、兄さん?)


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