表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/52

大道芸

 月日は過ぎ、僕らは12歳になった。


 弟オルテガに剣士の才能があるのは間違いなかった。父とは目を合わせることもなくなり、僕は屋敷内で空気のような存在になっていた。

 なんとなく、後継ぎは弟なのだろうと思っていた。ならば僕はどうするか。冒険者になろう。そのためにも鍛錬は欠かさずにいた。


 運命の日。


 一家そろって教会へ赴き、僕と弟は神託の儀に臨んだ。


「リースリング、祈りなさい。」

 司祭の前に進み出て、僕は両膝をついて祈った。


「お告げがありました。そなたは…探索者エクスプローラー、一般職である。」

 聞いたことのないジョブ。誰もがポカンとしている。

「そなたは世界中を旅しなさいと神はおっしゃいました。」

 司祭は続ける。

「固有スキルは、振動操作、じゃな。」

 これも聞いたことがない。

「いったいそれは?」

「男爵殿、物を揺らすことができるようですな。」

「それが…何の役に立つ?」

「うむ、手品か大道芸のようなものかと。」

 最近こちらの教区に来たばかりの司祭は僕の母を知らずに、迂闊にも大道芸と口にしてしまった。父は顔を真っ赤にして両手をきつく握り締め、プルプル震えた。

「もういい、次だッ!」

 僕はその場から引きずられて脇へと追いやられた。

 

「オルテガ殿は、聖騎士。正義のためにその剣を振るうようにと、神はおっしゃいました。」

 弟は聖騎士を授かった。


 その後のことはあまり思い出したくない。



 これが最後だと父に言われ、弟と木剣で打ち合いをした。

 昨日とは別人の弟の剣に完敗。これが聖騎士の力なのか。

 

 父の部屋に呼ばれ、僕は除籍されて平民になった。

 貴族には兵役義務があるのだが、一般職では入れない部隊に配属されるからだという。

 まあ、便利なタテマエである。

 

 屋敷から追い出され、裏庭の小屋に住めと言われた。

 いやなら黙って出て行けということか。

 他所の貴族なら結構な数の金貨を持たせて送り出すのにな。

 

 以前、庭師の住んでいたボロ小屋で、僕は呆然としていた。

 どうしてこうなった?

 硬いベッドに腰かけて頭を抱えていると、足音がした。

 入口の扉を開くと、立ち去るメイドの後ろ姿が見えた。

 扉の横に食事を載せたトレイが置いてあった。

 一言もナシかよ…。


 小さなテーブルにトレイを自分で置く。

 野菜と肉のかけらが入った薄いスープと黒パン。

 冷めてしまっている。


 固いパンをぬるいスープに浸してかじると、涙が出てくる。

 みじめだな。


「レンチン出来たらいいのにな。」


 電子レンジを思い浮かべたとき、たくさんの記憶が一気に甦ってきた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ