亀の背に乗って
亀型潜水艇は、静かに海中を進んでゆく。バラストタンク注水なんてしない。推進機構も、リースの知らない原理で作動している。そもそもこれは潜水艇なのだろうか?空を飛べそうな、何なら宇宙にまで行けそうだ。
「これって空も飛べるよね?」
「さすがです、リース様。サテライトまでなら余裕ですよ。外宇宙航行は無理ですが、海王星あたりが限界とされています。」
オートマタが答える。
「すごい技術だ。」
「はい、リース様のいらした世界からは500年程度進んだ水準にありますね。」
エスターたちにはチンプンカンプンな会話。
「何だ、あのヒラヒラした魚は?」
前照灯に照らされた深海魚に声を上げるエスター。
「リュウグウノツカイかな。」
冷静に答えるリース。
「大きな魚がクラーケンと戦っているぞ。」
「マッコウクジラとダイオウイカだな。」
リースは落ち着いている。マグダレーナは、初めて見る深海の世界に、言葉もなく見入っている。ルクレツィアは眼を閉じて、何かを感じ取ろうとしているように見える。
三者三様の過ごし方をしているうちに、亀型シャトルは海底に着いた。4000メートルほどだろうか。もっと深い場所でなくてよかった。竜宮城は、予想通り海底コロニーだった。発着ポートに入ると、シャトルが桟橋に固定された。入り口が閉じて、排水。
「着きました。」
ハッチオープン。リース達はオートマタに連れられて近未来的な施設の中を移動する。剣と魔法の世界から一転、スペースオペラの世界に連れてこられた気分だ。昭和のヘルスセンター的な感じの竜宮城を期待していたんだよ。まさか光線剣持ったカブトガニヘルメット男とか‥‥いないよね?
「さ、こちらです。」
通路の突き当りの扉の前で、オートマタは止まった。
(自動ドアだよな)
エスターはリースの行動をずっと見ていた。大昔に滅びた文明に関する伝承はエルフにもある。人間に伝わる話とほぼ同じものだ。古代の都は、人族の神話では神の怒りに触れて一夜で海に沈められたことになっている。エルフの伝承では、超破壊兵器を使った戦争で自滅したとある。
(リースが遠い世界から来たというのは、本当の事かも知れないな)
引手もノブもない扉を見て、即座に自動ドアを作動させたリースはやはり、そうなのだとエスターは確信した。
扉に触れることなく、リースは開いてみせた。真正面に立つと重量センサーが反応するタイプの自動ドアだったようだ。
「ご苦労様です。さ、入っていらっしゃいな。」
声がした。




