スパイスの国
海路と陸路を旅して一か月、一行はようやくムガーラ帝国の入口へとたどり着いた。
「米が‥‥うま~い。」
食堂でカレーライスに感動するリース。パエリアの国出身のマグダレーナ、リゾットの国出身のルクレツィアも異論はない。唯一、理解できないと言いたげに肩をすくめたのはエスター。
「私は、ナンのが好みだな。」
「まあ、それもありだけどな。」
午後からはマーケット巡り。ウーツ鋼と呼ばれるハガネの地金や、翡翠の原石、香辛料を仕入れてゆくリース。手持ちの香料や煙草や、その他を売り資金に充てる。地球とそっくりなこの世界で商売をするのに前世の知識はかなり役に立った。
星読みでかなり消耗したルクレツィアは、もうすっかり元気を取り戻していた。開放的な南国の風土、薬膳にも通じる日々の食事。あの呪殺のことは頭から離れないが、恐れてばかりではいけない。あれが要人暗殺に使われない保証はない。姉や兄が狙われたら、今の私では防げない。強くなろう。まずはマグダレーナを助けたい。呪いのせいで本来の力を出せずにいる彼女を救うんだ。
「このまま北へ向かいましょう。」
ルクレツィアはの意見にうなづく一同。国境を越えてネイパール国に入る。やがて、天にも届こうかという9000メートル近い高さの山々が見えてきた。
「あの高さだと、一日では登れないな。」
「エスター、一ヶ月かけて登るんだよ。」
「そんなにか。」
高山病の知識があるのはリースだけだった。
「まあ、行けば分かる。」
食料を買い込むリースを笑っていたエスターたちだったが、アタック初日に高山の洗礼を受けた。標高が上がれば気圧が下がり空気が薄くなることをエスターたちは知らなかったのだ。
「頭が痛い‥‥。」
「フラフラします。」
案の定、不調を訴えるメンバーが出始めた。
「じゃあ、ここで一週間キャンプな。」
調理担当のリースによる日替りカレー。ここもまたスパイスの国なのだ。牛、豚、羊、鶏、魚、材料は豊富にある。体を温めるスパイスの効果で、体調が回復するのも早い。高地に順応しながら、リース達は登頂を再開するのだった。時折、イエティやフェンリルが現れるのを狩りながら、レベルアップもしながら、山頂を目指す。
「レベル200になった。」
エスターがイエティを仕留めた後に言った。一般的にG級は10以下、F級は20以下、E級は30以下、Ⅾ級は50以下、C級で70以下、B級が100以下とされている。レベル3桁はA級の領域だ。
「200‥‥。」
先日のパワーレベリングでようやく70を越えたルクレツィアは絶句した。マグダレーナっもほぼ同じレベルだ。
「驚くようなことじゃない。リースなんかもうすぐ300だぞ。」




