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リースリング

 リースリング・モーゼル。

 僕はゲルマニア王国の辺境に領地を持つモーゼル男爵家の次男だった。母は旅芸人の娘だったが、男爵に見初められて僕を産んだ。出産後なかなか体調が回復せず、僕がまだ2歳の時に亡くなってしまった。


 兄弟は5つ離れた長男ミュラー、僕の1日後に産まれた3男オルテガがいる。


 兄は幼少の頃より魔法の才能を開花させていて、12歳で教会にてジョブを授かる『神託の儀』で『賢者』を授かった。人が扱える4属性(火・風・水・地)に加え、聖職者の使う聖属性まで使える伝説のジョブ。


 数百年ぶりに出現した賢者の噂はすぐに他国にまで届き、兄は一躍有名人になった。何十件もの婚姻申し込みが届く事態になり、ゲルマニアきっての上級貴族にして魔法の名門トゥルガウ公爵家の長女と婚約することになった。


 兄は貴族の子弟が学ぶ王立騎士魔法学院(全寄宿制・共学・3年制)に入学するも、魔法はすでに教授たちのレベルを超えていた。君にはもう教えることがないと言われてしまい、1日で卒業させられそうになったらしい。


「学院長先生、それはあんまりです。私だって他の皆のように学生生活を楽しみたいですよ。」

「うーむ…。では3年生に飛び級ではどうじゃろう。但し条件があるがw」


 直談判で1年だけ在籍させてもらえる代わりに、1年生の講座をいくつか持つように言われてしまった兄だった。


「あのタヌキ爺さん(怒)」

 学園長に嵌められた!実質的には教員扱いで、思っていた学園生活ではなかったとぼやく兄だった。だが本来は同級生のはずの女子が目をキラキラさせ「先生!」と言って寄ってきてくれるのはいい気分だったとカミングアウトしたこともある。


 僕は兄が好きだった。見せてくれた魔法に憧れていた。弟と違い、お前には魔力があると言ってくれていたし、自分でも兄のようになりたいと思っていた。


 だが、魔法が発動することはなかった。


 魔法陣の構築はキチンとできている。呪文の詠唱も間違えてない。なのに、魔力が魔法陣に流れ込んでいかない。賢者の兄でさえも分からないと首を傾げるばかりだった。


 モーゼル男爵家は代々、剣士や騎士を輩出してきた武家で、父も騎士である。兄が魔法の道へ進んだことで、僕と弟のいずれかに家を継がそうとして、僕らは厳しい武芸の鍛錬を課せられた。

 だが、僕は小柄だった母に似たのか、正妻の子の弟とは体格差があり、成長するに従いそれは大きくなっていった。


 だが、僕にも強みはあった。軽業師だった母に似て柔軟ですばしっこい体捌きができた。フェイントで隙を作って勝つことはできた。それが武士道のカタマリの父を怒らせた。卑怯者の剣と言われた。

 仕方なく勝ちを捨て、打ち込まれる時には衝撃を逃がすようにした。痛いのは嫌だから無意識に魔力でガードして、身体強化を発動させていた。父には軟弱な剣だと叱られた。



 金髪碧眼の一族にあって黒目黒髪の僕は、居場所がないと感じるようになっていった。

 

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