転生者
リースはいつの間にか手にしていた刀で、ミノタウロス王の胴体を横一文字に斬り飛ばした。
「嫌だ‥‥」
ミノタウロス王は言った。
「まだ殺し足りねえ‥‥もっと‥‥」
もがきながら。
「アキバで‥‥歩道にランクル‥‥突っ込んだ‥‥殺したりねえ‥‥」
「黒のランクル」
「知ってたか‥‥」
そこでこと切れた。呆然とするリース。ミノタウロス王は灰になってサラサラと崩れていく。残されたものは王冠と大きな戦斧。それと、黄色いサングラス。
「こいつ‥‥転生者か。」
忘れもしない、前世で僕をはねた暴走車の。
『あなたは巻き込まれました』
『本来の召喚者は運転手』
『そばにいたあなたも一緒にこの世界に』
女神の言葉がフラッシュバックする。
(誰があいつをこの世界に呼び寄せた?何のために?)
それはわからない。ただ言えることは、あいつは大量殺人犯で、その人生の続きをやろうとしていたということだ。
(勇者召喚じゃなく、これじゃまるで悪魔召喚じゃないか)
いつか見た、生贄の牡山羊。リースの中で、パズルのピースがコトリと音を立てて嵌った感覚があった。
凱旋したリースたちを労うパーティーが開催されて、四人はサーニャたちと共に歓待の輪の中にいた。大人の事情で、主役はサーニャたち。リースたちはサポート役扱いだったが、それはルクレツィアが望んだことでもあった。サーニャは不満そうだったが、ルクレツィアの一言で納得させられた。
「この街には、あなたたちという英雄が必要なのだわ。」
「どうした?昨日からずっと様子がおかしいようだが。」
リースがバルコニーで夜風に当たっていると、エスターが真後ろから話しかけた。
「考え事してたんだ。」
「うん、聞こうか。」
「そうだな‥‥例えばだけど。」
リースはポツリポツリ話し始めた。
「ある国に、人をいっぱい殺した奴がいたとする。」
「それで?」
「そんな奴を別の国にたくさん呼び集めたらどうなる?」
「その国は大変なことになるな。」
その時、二人の背後で声がした。
「面白そうな話じゃないか。」
「姫殿下‥‥。」
「ああ。後でじっくり聞かせてもらうよ。」
宴の後、リースたちはルクレツィアの部屋にいた。部屋全体を障壁で囲うようにリースに命じた後、ルクレツィアは静かに語り始めた。
「他人に聞かれたくない話もあるからね。ご苦労だった、リース。」
何の話が始まるのだろうか。
「まずは私の家族のことから話をしよう。」
ルクレツィアはロマリア皇家について話し始めた。




