ミノタウロスの王
厄介な敵は他にもいた。魔法をくらうと爆発して増殖する赤いスライム。剣で斬ると増殖する青いスライム。液体金属のような銀色のスライムには攻撃が全く通じなかった。そいつは高速移動からの体当たりをしてくるいやらしい奴だった。この3色が混じって出現するから大変だ。青に放った魔法が赤に当たる。赤を斬ろうとして、死角から銀の攻撃をもらう。そうやって消耗させられてしまうのだ。
だが、リースはすべて凍らせて動きを封じてしまった。動けなくしてから色ごとに分けて集めたスライムを落ち着いて片付けていった。銀のスライムも、凍らせれば剣で倒せた。
(本当にすごいのはリースさんだ‥‥)
サーニャは理解した。剣と魔法の両方が使える人間は、お伽話の勇者くらいのものだ。シーサーペントを粉砕したのもリースだったと聞いた。
(この人たちと一緒でなければ‥‥私たちだけで来ていたら今頃‥‥)
オートマタ、三色スライム、初見殺しの相手を退けてついに一行は迷宮の最深部、ボス部屋にたどり着いた。高さ5メートル以上ある鉄の扉にサーニャが触れると、それはひとりでに開いた。薄暗い部屋の奥に玉座があって、巨大な何かが腰かけているのがうっすらと見えた。
「ミノタウロスの王‥‥。」
エスターも誰も見たことのない巨体。普通のミノタウロスの倍はある。壁のあちこちにある照明装置の光量がじわじわと上がり、黒光りするミノタウロスの姿がはっきり見えてくる。両眼を閉じて眠っているような様子だが、ピリピリする空気感が伝わってくる。両目がうっすらと開いた。
「八人‥‥か。少ないな‥‥。」
「しゃ‥‥べった!」
ルクレツィアが声を上げた。サーニャたちも驚いている。平然としているのはドラゴンに会っているリースたち3人。
「もっと大人数で来ると思っていたが。」
ミノタウロス王は不満そうだ。
「まあいい。お前たちが戻らなければ、次はもっと大勢でオレに殺されに来る。」
喋る魔獣を初めてみたルクレツィアたち五人は、すっかり相手にのまれてしまっている。ちょっとマズいな‥‥。リースは冷静に相手の分析を試みる。
(獲物は戦斧か。食らったらヤバいね)
ミノタウロス王は、リースに目を止めた。
「まずは男から始末しよう。」
リースはそれを聞くと一歩前に出て、静かにマチェットを抜いた。
ミノタウロス王は立ち上がると、横に立てかけてあった戦斧を掴んだ。しばしのにらみ合い。先に仕掛けたのはミノタウロス王だった。リースの振り下ろされる戦斧。リースは片手で受け、いなした。体制を立て直して、次は横に薙ぎ払う。リースはまたも片手で跳ね上げる。
「本気で来い!」




