ミノタウロスの迷宮
「申し訳ございませんでした。」
サーニャはルクレツィアに会いたくて父親にお願いをしたのだが、予想外の展開になってしまった事を後悔していた。リースたちを屋敷に泊めて、翌日ミノタウロス迷宮の件を謝罪した。
「お気になさらず。今の私は冒険者ですもの、こうして指名があるのはむしろ名誉なことですよ。」
ルクレツィアはサーニャを気遣って言った。リースとエスターはどこかでマグダレーナとルクレツィアのパワーレベリングをする機会を探していたので、ミノタウロス討伐に異論はない。
二日後、リースたちはミノス島の中央にある迷宮に来ていた。古代の遺跡が迷宮化した場所で、石造りの建物の中にいるような感覚に陥る。攻略済みのダンジョンなのでマップもあり、通常であれば危険な場所ではない。だが今はB級指定のミノタウロスが大量発生中だ。エスターを先頭に、両脇にマグダレーナとイグニス。中衛はリースとエマ、後衛がルクレツィアとサーニャ、カレン。
「角を曲がったら二頭。」
入ってすぐからエンカウント。エスターが弱体化、マグダレーナとイグニスが一頭ずつ仕留める。
「次は一頭、カレン!」
「二頭いる。魔法でいく!」
「エスター、一撃もらって。エマは回復頼む。」
経験値が偏らないように指示を出すリースと、意図を理解して立ち振る舞うエスターのコンビネーションにサーニャは驚嘆する。
(すごいわ、二人とも)
全三階層のダンジョンのうち第一階層を順調に攻略。第二階層に下りた時、リースはある異変に気付いた。
「アンデッドがいる‥‥。」
「マズいわ。」
サーニャは顔色を失った。今いるメンバーの中で聖騎士はマグダレーナだけ。エマはハイプリーストではないので対アンデッドの浄化魔法は使えない。
「引き返しましょう。」
だがリースたちは平然としている。
「何とかなるかな?リース。」
「問題ない、エスター。」
この二人は全く冷静そのものだ。その余裕はどこから来るのか?サーニャたちの疑問はすぐに解けた。マグダレーナは勿論、リースもエスターもアンデッドを苦も無く倒してゆく。実体がなく物理攻撃耐性のあるゴーストでさえ、彼らの剣に触れたとたんに消滅してゆく。
「ミスリルの効果はすごいです。」
マグダレーナの言葉にまた驚くサーニャたち。
「ミスリルですって?」
幻の金属ミスリル。聖剣と呼ばれる剣に使われるが、希少ゆえ恐ろしく高額なレアメタルだ。
「うちもそこそこ大手の商会だからねー。つてがあるんだよ。」
リースは平然としている。
(何なの、この人たち)




