無敵のメイプル
「本船の人的被害は、軽傷者が2名のみであります。船体の損傷も軽微であり、航行に支障なし。救援に感謝いたします。」
被害状況の確認も済んで、2隻はオリュンポス港へそろって入港した。シーサーペント撃破の翌々日のことだった。だが‥‥港で出迎える群衆の熱狂、勢揃いの領主やギルドの首脳たち。何か様子がおかしい。
「すごいぞ、無敵のメイプル!」
「あれが白銀の剣エスター様?噂通りステキな方ねー!」
何が起こっているんだ?
「あら?」
風で飛来した新聞を拾って読んだルクレツィアは、すぐにあっと声を上げた。
「兄様‥‥。」
『一昨日起こった客船パルテナ号シーサーペント襲来事件だが、同船を救ったのは、近くに居合わせた貨物船シュバルツ号に居合わせた【ブルームーン】だった。
パルテナ号の護衛【スカーレット】が奮戦するも、シーサーペントの攻撃は熾烈を極め、同船は沈没の危機にあった。その危機に颯爽と駆けつけてシーサーペントを撃退した【ブルームーン】とは?
リーダーのエスターは「白銀の剣」の二つ名を持つエルフ。少女歌劇にいるような長身と、華麗な剣捌きで特に女子冒険者から熱烈な人気がある。
その相棒を務めるのは、本職が商会員という少年リース。マイセン流剣術の使い手で、実力はB級以上だが本人の希望で昇級が見送られている。そこから「無敵のメイプル」の二つ名で呼ばれている。
なお、これらの情報はギルド総本部への取材で得られた確実なものです。』
ルクレツィアによると、彼女の兄エルバン皇太子殿下とギルド総本部のグランドマスターとは騎士学院で同級生、旧友同士というか悪友だという。
「私のいるパーティーが無名だと困るとでも思ったのかしら。」
「うちの兄も一枚かんでる。マイセン流なんて、身内情報だよ‥‥。」
「目立ちたくはなかったのだが。」
「ルクレツィアの動向をつかみやすくするのに、目立つよう仕向けられたみたいだね。」
妹が心配でならないシスコン皇太子のおかげで、とんでもない二つ名をつけられた。ロマリアでの尾行も皇太子の仕業だろう。追っ手をまいた事に対する意趣返しか。リースとエスターは顔を見合わせてため息をついた。
【スカーレット】の四人も新聞を見ていた。
「すごい人達だったんだね。」
「あちらにはあのルクレツィア姫も。」
「シーサーペントを吹っ飛ばしたのは姫さんじゃないの?」
エマとイグニスとカレンに、サーニャは言った。
「みんな会いたいよね。ちょっとパパに頼んでみる。」
サーニャは領主の娘なのだった。




