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魔力砲

 巨大な爆発の衝撃はリースの所へも伝わった。

「やるねー♪」

 ルクレツィアは同じメイジとして、何が起こったか想像できた。

「ダメだ、倒せてない。」

 リースの索敵スキルはまだ魔獣の反応を捉えている。

「勝負はこれからだ。」


 客船のほうは、まだ騒然としていた。

「避けられたわ。」

 サーニャが叫ぶ。功を焦りすぎた。一度で決めようとしすぎた。

「ドガーン!」

 船体に衝撃があった。水中で体当たりされたようだ。船がグラリと大きく揺れる。

「絶対また頭を出すはずよ。」

 アーチャーのカレンの声に、全員身構える。サーニャは今度は速度重視の魔法を準備に入る。高度な技術を要する二重詠唱で、魔法を二つ準備する。カレンは気配を感じようと集中する。

「右から来る!」

 右舷側の海面が盛り上がり、今度はすぐ近くからシーサーペントの頭が姿を見せた。

「ファイアジャベリン!」

 だがその時、シーサーペントの尾が船体を叩いた。船は大きく揺れ、魔法の射出方向がずれてしまった。放たれたたくさんの炎の槍の半分以上は当たらなかった。

「アローレイン」

 カレンも必死に攻撃をかける。だが、シーサーペントにほとんどダメージを与えられなかった。手負いになって猛り狂うシーサーペント。なりふり構わず体当たり攻撃を始めた。100メートル級の客船だが、このままではいずれ沈められてしまう。

「これまでなの?」

 グラグラ揺れる船上で、振り落とされないよう物につかまっているので精一杯のサーニャたち。反撃はおろか、もうなすすべもない。響き渡る乗客の悲鳴。


 リースたちの船はまだ2キロ近く手前にいた。

「マズいな‥‥。」

 エスターが呟いた。

「ルクレツィア、いけるか?」

 リースの問いに首を横に振るルクレツィア。

「届くけどよけられて船に当たるわ。」

「とっておきを使うか。」

 リースは両腕に魔力を流し始めた。両手を組んで前方に伸ばし、手首から先に魔力を溜める。方向はシーサーペントに向けて‥‥。

「オーラキャノン!」

 魔力砲は超音速で発射され、客船に襲い掛かるシーサーペントの頭部を粉砕した。



 「何が起こったの?」

 サーニャたちは、頭部を失ったシーサーペントの体がガラスの破片のように粉々になって降り注ぐのをただ無言で見ていた。船内で沸き起こる歓声が遠く聞こえる。

「ボオーーーー」

 警笛が聞こえて初めて、接近中の貨物船の存在を知ったサーニャたちだった。

「助けられた‥‥。」

 特別目のいいカレンだけは、魔力砲の直撃を目撃していた。何か攻撃がすごい速さで飛んできた。方角も合ってる。あの船の誰かがシーサーペントを一撃で吹っ飛ばした。デッキで手を振っている冒険者らしい人たちの中の誰かが。紅蓮のサーニャでも倒せなかった魔獣を一撃で。しかもあんな遠くから。あの中にすごい人がいる‥‥。

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