海の魔物
船がオリンピア共和国の海域に差し掛かった時だった。見張り役の船員が何かを発見したようで、慌ててマストから降りてきた。
「大変だ!船が魔物に襲われてるぞ!」
「ほぼ正面だな。ただ、遠いな。」
船長が言う。
「迂回しますか?」
操舵手が訪ねてきた。
「進路はそのままで。」
リースはそう言うと、マストにある見張り台に駆け上った。望遠鏡で様子を見て、すぐ下りてきた。
「どうなんだ?」
エスターが尋ねる。
「ギリギリだろうな。」
ルクレツィアも前方の様子を伺っている。
「魔法使いが応戦中ね。」
「間に合ってくれよ。」
客船アウロス号の船上は魔獣の出現でパニック寸前だった。
「シーサーペント‥‥。」
「ツイてないわね。」
護衛任務で乗船していた冒険者パーティー【スカーレット】リーダーのサーニャは唇を嚙んだ。B級パーティーだが昇級も近いと言われていて、腕には自信もあった。サーニャは炎魔法の使い手で『紅蓮のサーニャ』の二つ名を持つ。アーチャーのカレン、槍使いの騎士イグニス、プリーストのエマ、メンバーも実力経験共にすぐれたパーティーだ。
「全力でいくよ!」
サーニャは叫んだ。死闘の始まりだった。
海の王者、海竜シーサーペント。全長50メートルの細長い体で巻き付いて大型船さえ沈めてしまう魔獣。弱点は火だが、巨体を焼き尽くすほどの火力がなければ倒せない。サーニャは自分の最大火力をぶつけるため詠唱に入る。シーサーペントの攻撃を防ぐのはイグニスの役目。カレンは牽制、防ぎきれないダメージ回復はエマが行う。
「ギャオッ!」
シーサーペントの魔法アイスアロー。いくつもの氷の矢がパーティーめがけて飛んでくる。イグニスの槍がそれを弾き飛ばす。捌ききれずに右肩と左太ももに掠る。
「ぐっ!」
顔をしかめるイグニス。
「まかせて!ヒール!」
エマの回復魔法。
「サンキュー!」
礼を言うイグニスに、親指を立てて応えるエマが注意する。
「次、来るよッ!」
「やらせん!」
カレンの矢がシーサーペントの首横にヒットする。アイスアロー第二弾が逸れる。
「まだまだッ!」
シーサーペントは狙いをカレンに絞ったようだ。大きな氷の槍をカレンに放った。
「アイシクルスピアか!」
イグニスは、両腕に力を込めた。
「ライトニングスピア!」
一点突破の槍術を氷の槍にぶつける。氷が砕けて散る。
「みんなお待たせ!行くよッ!」
サーニャの詠唱が終わった。
「スカーレットインフェルノ!」
大火球がシーサーペントに襲い掛かる。だが、距離がありすぎた。シーサーペントは危険を察知して回避行動に出た。海中に逃れようとする。大きな水柱が上がりサーニャの魔法はそこに当たってしまった。水蒸気爆発が起こった。
「やったか?」




