スカウト
「助かりました。」
番頭の男はリースに一礼した。
「どういたしまして。」
馬車の中にいた男が下りてきた。
「私からも礼を言います。」
その男は言った。リースも会釈で応えた。
「しかしロット、君がここまで簡単に接近を許すのは珍しいね。」
「申し訳ございません。」
ロットは主人に詫びた。
「奴ら、急に現れたので‥‥。」
主人が眉をひそめるのを見て、ロットは言い直した。
「いえ、私にはそう見えたというだけで‥‥。」
リースは、主人を守って勇敢に戦ったロットが少し気の毒に思えた。
「この人の言う事は当たっていると、僕も思います。」
二人は、少し驚いてリースを見た。
「僕はそこの森で狩りをしていたんですが、レンジ内にいきなり反応が現れたので確認しに来たんです。そしたら、馬車が襲われているのが見えて‥‥。」
「そうだったのか。私はシュタイン、ベルガー商会の代表をしている。こちらはうちの番頭ロット。元A級冒険者で、護衛をしてくれている。」
「ロットです。」
「リースといいます。」
「リース君というのか。いや、若いのにいい腕をしている。」
シュタインは感心している。
「ロットさんもすごかったですよ。剣は伝説級だし、サイクロプスは任せて大丈夫だと思って、ウルフの方へ行けました。」
「えっ、君は鑑定もできるのか?」
シュタインはさらに驚く。
「ちょっとこれを見てくれないか?」
馬車に積んである木箱を指さす。
「銀の鉱石ですか。品質は上で、ほんの僅かだけどミスリルが含まれてます。」
「合格だ。リース君、うちで働かないか?」
「いいですよ。」
「拾い物した、そんな顔してますな、会長。」
「剣士でありながら、魔法も使える。おとぎ話の勇者のようだよ。」
「どっちも中途半端だって本人は言ってました。」
「冒険者としてはどう?」
「じきにA級入りできますよ。14歳にしては場数を踏んでます。冒険者は経験がモノ言う世界ですので。」
「そうか。鍛え甲斐があるねぇ。」
「教えることはないですね。あれは剣を学んだ者の剣捌きでした。貴族の出でしょう。」
「だろうね。」
ルナに言われた、大地の竜を探すためにそろそろ人間社会に復帰を考えていたリースにとって、ベルガー商会のスカウトは都合がよかった。紛争地域もあり、身分証なしで入国できない国もあったのだ。
リースは商会で働きながら情報を集めた。そしてガイアの大穴の噂を聞いて、南大陸にやってきた。探索の準備が完了したころ、リースはエスターと出逢うことになる。




