ベルガー商会
「何とかなって良かったですな。」
街道を走る馬車の中、番頭が主人に安堵した様子で話しかけた。
「ああ、ルテティア出店、やっと許可が下りた。」
主人は、最近あちこちの街に進出しているベルガー商会の会長シュタイン・ベルガー。まだ40代だが、やり手と評判の商人である。
「まあ、酒と宝飾品、骨董はダメでしたな。」
既存の老舗とつながる貴族連中は、ライバル潰しに加担して市長へ圧力をかけたのだろう。
「想定内だよ。」
取り扱う商品は食料品と日用雑貨等に限定されたが、それでいいとシュタインは思っていた。庶民を相手にした商売に特化することで、商会は急成長してきたのだ。それは既存の大手と棲み分けする戦略だった。だから他の大手と正面からぶつかることも避けていられるはずだった。だが、知名度が上がるにつれ、状況は変わりつつあった。脅迫の手紙、嫌がらせ、中傷やデマの流布などが最近起こるようになっていた。
街道脇の、見晴らしのいい高台。3人の黒ローブ姿の男がいた。遠眼鏡で見張っていた男が言った。
「来た!」
リーダーの男は、もう一人に命令する。
「始めろ!」
言われた男が、魔法陣を道のそばに展開。何も知らず接近する馬車。詠唱が終わる。すると、魔法陣からサイクロプスが出現した。馬が驚いていななき、馬車が止まる。
「何事だ?」
シュタインは窓から外を見た。
「マズいな‥‥。サイクロプスだ。」
番頭の男は、小さく呟いた。
「馬がやられる前に始末します。」
番頭はサッと馬車から飛び出すと、サイクロプスの前に走り出て、剣を抜いた。
その頃リースは大森林の周縁部にいた。
「何の反応だ?」
索敵レンジの中に、急に反応が出た。意外と近い位置だ。
(見落としていた?いや、そんなはずない!)
確かめなくてはならない。リースは走り出した。
森を出てすぐのところに街道があった。サイクロプスに襲われている馬車があって、護衛らしき男が一人、応戦中だ。
(何なんだ。また‥‥。)
馬車の前にサイクロプス、そして後方からティンバーウルフの集団が迫っている。これもいきなり出現したように見えた。
「助太刀するぞ!」
リースはそう叫んで、馬車の後ろ側に飛び出した。
「感謝する!」
番頭は答えた。そして、サイクロプスに切り込んだ。リースの前には20頭ほどのティンバーウルフ。取り囲むつもりか、両側へ広がろうとしている。
「シールド展開!」
馬車を馬もろとも保護しておく。襲い掛かってくるウルフをザクザク斬り捨てる。馬車に近づこうとして、弾き返されるウルフを着実に仕留めていくリース。
一方、サイクロプスも傷だらけにされていた。立っていられなくなり、膝をついたところを弱点である目を突かれて絶命した。




