ルナ
洞窟内にも認識阻害は働いていた。
「いにしえの大魔導士の隠し財宝かな。」
だが、洞窟の奥から何かを感じる気がした。索敵はずっと働かせているが、反応はないままだ。一番奥に着いたとき、さすがに僕は、巨大な生き物の存在を感知していた。
「何なんだこれ!」
伝説で語られる存在、物語本の主役、ドラゴン。だが、眠っているようだ。僕は気付かれないように脱出しようとしたが‥‥失敗した。
「人間か‥‥千年ぶりじゃな、客人がここに来るのは。」
低めの女性の声に聞こえた。
「どれ、この時代の人間のチカラ、確かめさせてもらうぞ。」
ドラゴンが襲って来た。
リース、ジョブはエクスプローラーでレベル49。ドラゴンにかなうわけがない。ブレス攻撃もなく、じゃれるように前足を振るうだけだったが、かわすので精一杯。何とか音速剣を当てるが、鱗に傷をつけただけでダメージが入らない。
「ほう‥‥。わしの体に傷をつけたか。」
ドラゴンはちょっと本気になったのか、爪の動きが速くなった。
(ヤバい、避けられん)
咄嗟にバリアを展開するが、あっさり砕かれた。巨人サイクロプスの渾身の一撃にも耐えたのに。格が違いすぎる。
「グァッ!」
身体強化をして防御姿勢をとったが、左腕の骨が折れたようだ。僕は弾き飛ばされて、岩壁にたたきつけられた。
(あばら骨2、3本折れた)
ドラゴンが近づいてきた。マチェットはさっき飛ばされた時に手を離れている。僕はその時、ドラゴンの胸の鱗が1枚だけ欠けているのを見つけた。
(やるしかない。)
右手に全魔力を込めて構える。だけど僕の魔力量は知れている。極限まで集中だ。密度を上げるには、時間軸を詰めるのだ。一瞬をイメージするんだ。
「エーテルストライク!」
意識を取り戻した時、僕は温かく柔らかいものに頭を乗せていた。膝枕、その言葉が浮かんだ。薄目を開けて、それが正解だと分かった。見知らぬ少女に膝枕をされて、僕は寝かされていた。
「起きたか?」
声がした。それは、あのドラゴンの声に似ていた。反射的に僕は飛び起きた。
「これ、びっくりするではないか!」
改めて少女を見る。年は11~12歳くらいに見える。長いシルバーブロンドの髪。薄手のシルクのような半透明の下着っぽい布をまとっている。
「わしは月の竜、ルナじゃ。死と再生を司るものじゃ。」
この少女がドラゴン?何を言っている?
「仕方なかろう‥‥。おぬしがわしの体を吹き飛ばしてしもうたでな。ほれ、見てみよ。」
ルナはそばに落ちているものを指さした。二つに割れた大きな卵の殻が落ちている。復元すれば80センチ近いサイズだ。まさか‥‥。




