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騎士道精神

 3頭のケルベロスの前に立ちはだかる聖騎士たち。彼らがいればもう安心、誰もがそう思った時に事態は一変した。さらに2頭のケルベロスが出現したのだ。遠巻きに見ている人々の方へと頭を向けるケルベロスたち。さらに悪いことに、逃げ遅れた子供が一人だけいたのだ。

「バカ、逃げろと言っただろう!」

 オルテガが怒鳴ったが、それでどうなるものでもない。ケルベロスは、恐怖で動けずに泣き叫ぶ子供に攻撃をしようとしている。火を噴く魔獣。悲鳴が起こる。

「シールド!」

 リースは魔力防壁を展開した。そして、見えないほどの速さでケルベロスの前に移動すると、3つの首を一刀で刎ねた。さらに瞬間移動、もう1頭の首を落とした。

 聖騎士たちもそれぞれケルベロスを始末していた。リースは、半球型のドームで保護していた子供のもとに行き、シールドを解除した。子供は、母親を見つけると、お母さんと叫んで走り出した。めでたしめでたしで終わるかと思われたのだが。


「そこの冒険者!」

 オルテガは、屈辱を感じていた。自分が救えずに見殺しにしようとした子供を、一般の冒険者が救って見せた。そればかりかケルベロス2頭を目の前で瞬殺である。

「勝手なことをするな。」

 この時リースはマチェットを鞘に納めていたが、オルテガは剣を抜いたまま。しかも背を向けているリースに切先を向けている。

 リースは振り返ると、縮地で距離を詰めて、オルテガの剣を下から居合抜きで跳ね上げた。オルテガの剣は中ほどで折れ、先端が回転しながら高く舞い上がり、落ちた。

「人に剣を向けていいのは、死ぬ覚悟のある奴だけだ。」

 リースは低い声で言った。



 団長は宿でずっと考え込んでいた。オルテガと年も同じくらいに見えたあの冒険者は何者だ。実はあの時に二人の間に割って入ろうとしたのだ。しかし、腹に重い衝撃を食らって両膝をついてしまった。

(一瞬だけ、私の方を見たあと、私を止めるように左腕を伸ばし、手のひらをこっちに向けた)

 リースは重力波を放って団長を牽制していた。

(私が両膝つかされたのは、何年ぶりになるか)



 オルテガは屈辱で身もだえしていた。

「リース!」

 自分を打ちのめした男の名、それは。死んだと思われていた男。いてはならない男。

「あいつが‥‥何で生きていやがる!」

 公衆の面前で剣を折られる、騎士にとってこんな屈辱があろうか。

「あの女もいやがった。」

 リースがいなくなり、次期当主として順風満帆のはずだった。しかし、騎士学院で自分の前に立ちはだかった女がいた。その二人が何故一緒にいるのだ?リースを怒らせたのが自分の、騎士としてあるまじき行為だと思いもしないオルテガだった。


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