聖騎士団
「君は秘密が多いな。」
エスターは呆れたように呟いた。
「今度また説明するよ。それより‥‥。」
「何者かが下水道にコボルトたちを入れたのは、たぶん間違いないと思う。」
リースの意見にギルマスもうなづく。
「ちょっとこちらで調べておく。他言無用で。」
気付くのが遅れれば大惨事になったかもしれない。箝口令は仕方ないだろう。こういったテロ対策は領主の仕事だ。一介の冒険者の手に余る。
「あれは巻き込まれただけのようだね。」
「ギルマス、そんなに簡単に信用して良いんですか?」
副ギルマスは諌めるような口調で返す。
「女神の使徒なら、我々の敵にはならないはずさ。」
とある建物の中、黒ローブの男たち5人。階段を降り、その先の地下室で1人が壁の飾り金具を触ると、壁が動いて隠し通路が現れた。そのさらに先は、下水道だ。
「どういうことです?」
「エサがいないぞ!」
リーダーの男は、1人を殴り飛ばした。
「も、申し訳ございません。」
石畳に膝をつく。
「時間がありません。やりましょう。」
リーダーの男は呪文を唱えた。すると、ケルベロスが召喚された。そして、殴られた男だけが残された。恐怖にゆがむ顔。リーダーの男は壁に戻った。
「お前がエサになりなさい。」
壁が閉じられた。魔獣の唸り声、断末魔の叫び声。
リースたちは海側の港に来ていた。北大陸に戻る、明日出港する船のチケットを買うためだ。
「2等は残り一部屋なのか?」
「当日キャンセルがございましたら、もう一部屋ご用意できますが、お約束はできません。」
どうするか窓口で相談中。1等なら空きはあるそうだ。
「2等の4人部屋を、3人で。」
「では、金貨10枚、頂戴いたします。」
三人は窓口でチケットを受け取り、宿へ引き上げようとしていた。
「うわぁー」
「化け物だー」
「助けてー」
あたりにいた人たちが叫びながら、走ってくる。
前方にケルベロスが現れて、唸り声を上げている。
何がどうなっている?ここは街中なんだぞ?
「行こう!」
エスターは叫んで、走り出す。あとの二人は続いて走る。
「ここは我らに任せよ!」
魔獣の近くに、5人の騎士がいた。
「皆は逃げるのだ!」
クモの子を散らすように逃げてゆく人々。魔獣の動きを牽制しつつ、民間人が逃げる時間を稼ごうと、魔獣の前に立ちふさがる聖騎士たち。
「ホセとマルコは左。オルテガとデレクは右。真ん中は俺がやる!」
団長が指示を飛ばす。
「かかれッ!」
5人の聖騎士たちは一斉にケルベロスに襲い掛かっていく。




