冒険者デビュー
「で、これはどういうことだ?」
リースが請けてきたクエストを巡って、エスターが納得いかない様子だ。
「マグダレーナの初仕事が、下水道の清掃作業ってのは、どうなんだ?」
「ギルドからの依頼になってるが、スポンサーはうちの商会なんだよ。」
ベルガー商会は新興の商会で、老舗と違って王侯貴族の顧客が少ない。そこで、庶民層の支持を得るために社会奉仕活動に力を入れている。定期的に仕事をもらえるのでギルドから感謝もされる。
「私はそれでいいです。」
マグダレーナが、二人に割って入る。最初だからもう少し冒険者らしいものをというエスターの気持ちもわかる。逆に、魔獣討伐だけがクエストじゃないというリースの言い分ももっともだと思う。今回はエスターが折れることにした。
先日のように、高圧洗浄機とブラシで作業を進めていく。それと、今回リースは消毒剤を用意していた。学校のプールでお馴染みの次亜塩素酸ナトリウム錠剤だ。汚水に投入すれば、ブロブが苦しがって上がってくる。マグダレーナがそれをどんどん処分してゆく。
「これ、近々うちで売り出す予定なんだ。今日はテストで使ってる。」
「キレイにする薬なんですね。」
マグダレーナはずっと感心ばかりしている。
順調に思えた作業だったが、そろそろ今日は終わろうかと言っていた時に異変は起こった。
「この先に何かいますね。」
マグダレーナは魔獣のいる気配を感じ取った。
「ゴブリンかな。」
エスターも気付いていた。
「その角の先に3体、コボルトだな。マグダレーナ、やれるか?」
リースは冷静に言った。
「やってみます!」
マグダレーナはサッと躍り出ると、3体のコボルトをあっさりと片付けた。
「コボルトがなぜこんな所にいるのだ?」
エスターは首をひねる。
「廃墟に住み着くことはあるが、大体は森にいる奴らだからな。」
「変だね。飼われてたのが逃げたのかな。」
リースも不審を抱いている。
大都市サンドリアの地下下水道は規模も大きい。続きは明日にしよう。リースたちは一旦、引き上げることにした。
その夜、飯屋で食事中にリースは、隣のテーブルが気になっていた。動物商と思われる男が周囲にからかわれていた。
「先月はたまたま売れたかも知れないけど、なあ。」
「そいで牡山羊ばっか持ってきたのか。」
「馬鹿だなあ。牝、連れてこないとダメだろ。」
「でもよ、この前はすごい良い値で売れたんだ。」




