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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

世界は今日、猫を求めている

作者: 瀬上七菜
掲載日:2025/08/08

シロくんは今日も草むらのお気に入りの場所でお昼寝をしている。

私達は管理された生き物で、その証に耳に切れ目を入れられている。

働く事も出来ず、飢えない様に時々粗末な食事を与えられるだけだ。

もちろん、子供を作ることもない。

ただいつか不可抗力で死ぬまで生かされているだけだ。


サバっちは池の近くの草むらで涼し気に目を細めている。

池を中心にカナルを配置されたこの公園は夏でも比較的涼しい。

池はさすがに人が入る事は無い。

だって汚れているから。

でもカナルは汚水でない水が流れている。

そこで子供が派手に水を撥ねて遊ぶ事がある。

そんな時は私達は近づかないで物陰で身を潜めているしかない。

厄介者の私達を嫌う人々は少なくない。


ハッちゃんが管理者の与える餌にありついている。

シロくんもサバっちも、もちろん私も食事を求めて管理者に走り寄る。

そうすると、既に食事を口に入れたハッちゃんが拘束されて、目と口を観察される。

「56番、特に異常は見られません」

「面倒だから番号順に観察しよう」

そう言って彼等は私を拘束し、観察する。

まだ食事してないよ!

「57番、少し衰弱してますね」

「仕方ない。全部を養う費用なんて無いんだから、この条件下で生き延びる個体を手助けするしかないんだ」

拘束を解かれた私は食事にありつく。

シロくんとサバっちが大分食べちゃったよ!

「58番も衰弱してますね」

「時々観察していると、草むらで動かないからな。長くないかもしれないな」

「61番、まだ若いからか、比較的元気ですね」

「そいつ、ここでの食事が少ないから成長してないだけだぞ」

そう、サバっちは若い訳じゃない、体が小さいだけだ。


管理者達は毎日食事をくれる訳じゃない。

それだけだったら私達はとっくに餓死している。

夜、暗くなるとおばさんがやって来て食事を与えてくれるんだ。

キィキィ鳴る自転車の音がすると食事の時間だ。

「シロくんは元気がないね、大丈夫?」

シロくんはおばさんの言葉には気も留めずに食事を続ける。

「サバちいは相変わらず小さいままだね。もっと食べさせてあげられると良いんだけど…」

そう、サバっちは実はサバ小なのだ。

「ハチちゃんは暑さで参ってないかい?」

ハッちゃんはこの頃食が細い気がする。

「クロちゃんもちょっと細くなったね。せめてよく噛んで食べてね」

暗闇の中、私はおばさんを見つめる。それ以上の愛想は知らない。

「ふふ、ありがとう、クロちゃんだけはおばさんの事を気遣ってくれてるんだね」

そりゃ、そうだ。おばさんがいなかったら私達はもう全滅している。


久しぶりの雨の夜からシロくんがいなくなって戻らない。

彼がいた草むらは何日も主がいないままだったが、私達は戻って来た彼が怒るのが恐くてそこには近づかない。

そうこうしている内に、他の住人がやって来た。

おばさんはトラと呼んでいる。推して知るべしだ。

トラくんは若いから食欲が旺盛だ。

おばさんが毎晩持ってこれる食事には限りがある。

おばさんは公平に食事を分けようとするが、トラくんが横取りしようとする。

私の食事も半分取られた。

私達の間には不穏な空気が流れた。


暑い夏の日、トラくんが私の過ごす木陰にやって来て暴れた。

若くて他者の食事を横取りしている身体は健全な彼と、食事を奪われて空腹が酷い私では元気が違う。

仕方がなくとぼとぼと他の日陰を探した。

そもそも涼しい場所は限られているんだ。

なんとか確保していた涼しい場所を取られたら暑さに耐えられない。


新天地を求めて移動するか…私は決心した。

少し離れた場所に雑木林と草むらがあるんだ。

食事がもらいにくくなるが、夜涼しくなったら公園に戻ってくれば良い。

そうして雑木林の木陰に移動した。

ここでも暑くて仕方が無いが、一応日陰だ。

横になってうつらうつらしながら日が暮れるのを待つ。


いくつかの星が見える様になった頃、公園に移動する。

そんな私の横にヘッドライトの光がどんどん近づいて来る。

急いで渡らないと…でもお腹が減った上に暑さで参っていた私はいつもの様には走れなかった。

車のタイヤに押しつぶされた私は思った。

ああ、シロくんもこうして終わったんだね。

私もただ生きているだけの生涯がこうして終わる…


夜やって来たおばさんが猫達に餌をやる。

「鯖小と虎くんとハチちゃんだけかい…今度は黒ちゃんの番だったんだね。もっと餌をあげられなくて済まなかったね。でも、生まれてきてくれて、少しの間でも仲良くしてくれて有難うね」

公園に住む野良猫達が生涯を終えても、その死を悼んでくれるのはおばさん一人だけだった。

 今朝、マウスのカーソルがウィンドウズのある場所を指すと、写真と文字が示されたんです。4匹の子猫を手で抱える写真と、「世界猫の日」の文字です。そう言う事は前の日に言ってよ!と思っても仕方がない。キーワードを挙げて、それをつないで書いたのがこの文章です。公園猫の保護活動を批判するものではありません。これからもお願いします。


 死を悼む、というのはその生を祝福する事の裏側だと思います。だから言おう。

「世界中の猫達、お誕生おめでとう」

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