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にがあまメモリーズ  作者: 空犬
『陽春の章』
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2-3話『委員会体験週間のお知らせ』

 桜木教育学校に入学して数日が立った。

 教科では戦術という分野、戦っているときの陥りやすい心理を習ったり、相手の先読みの仕方など。体術という分野では戦い方を知識として習った、体術という分野の一環で人体の構造も一緒に習い、人体の急所を学んだり。


 実技では射撃訓練と体術が行われた。射撃訓練で初めて本物の銃に触れたときは緊張した。小豆沢先生の武器についての授業を活かして、美園先生からの指導を受けつつ初めて銃を撃てた。もちろん反動もあってちゃんと撃てたのは数回だけだった。体術というか実技は三人一組で行うことが多く、体術も三人で実践していた。翠はやられることの方が多かったが美園先生のアドバイスを聞いてめげずに挑戦した。


 現在金曜日、六時間目教科の授業中。


「……よし、今日は知らせないといけないことがあるから、授業はここまで」


 六時間目は国語の授業の真っ最中だった。終わるのにもまだ時間がある。小豆沢先生はその知らせたいことのために六時間目の授業を終わらせた。


「来週の月曜日から委員会体験週間が開催されます」


 全員の教科書の片づけが終わったタイミングで小豆沢先生はそう言った。入学式や学校案内でも出てきていた委員会、体験ということは実際にその委員会に参加できるということだろうか。


「ここでは生徒全員、委員会というものに入るんだ。一年生はまだ委員会がどれぐらいあって、どんな活動をしているか分からないから、実際に自分達で行ってみたい委員会を決めて実際にその仕事を体験する、それが委員会体験週間」


 そう言って小豆沢先生はさっきまで国語の授業で使っていた黒板の内容を全て消し、新たに何かを書きだした。

 書き出したのは色々な委員会の名前、『監査委員会』『保健委員会』『安全委員会』『飼育委員会』『整備委員会』『自然委員会』『総務委員会』『図書委員会』、全部で八個の委員会があった。


「順番に説明するね。まず監査委員会は、各委員会の予算管理と内部調査が主な仕事内容になっている。簡単に言うと、予算の計算と委員会がちゃんと仕事やってるか監視するっていうのが仕事だ」


 監査委員会、翠は小豆沢先生が最後ら辺に言った計算という単語でここは無理だなと感じた。計算が苦手な翠はここで活動はできないだろう。どちらかと言えば彗斗が向いてるんじゃないかと思う。


「保健委員会、この委員会は学校にある保健室の当番、怪我人の手当、薬草・傷薬の管理が主な仕事だよ。ここは今女子生徒が多く所属してる委員会でもあるね」


 保健委員会は翠としてはどちらかといえばありだ。手当や治療という分野は兵士になったとき役に立つと思ったから。だから、入りたい委員会がない場合はここでもいいかもしれない。


「次に、安全委員会は……この委員会は少し特殊で、担任からの推薦がないと所属することができないんだ。ここの委員会の仕事内容を簡単に言うと、学校外の見回り」


 見回り、ということはもしかしたら学校に無断で入ってきた侵入者と戦うことがあるということなのかも。

 だから選ばれた生徒しか所属できない。遊び半分ではこなせない仕事内容だから。


門庭(もんてい)っていう第一の門と第二の門の間にある空間、皆も学校に来るとき通った場所、あそこ全域が見回りの対象なんだ」


 あの空間にも名前があったのか、少し驚きだった。入学式の日の翠はあそこの道のりで体力が無くなって彗斗にすごく心配されたんだった。


「だから安全委員会は、委員会体験週間には含まれてない。後ほど適正があると思った子に僕から声をかけるから」


 安全委員会は戦うということに関してはいち早く経験ができる委員会なのだろう。だから絶対に翠は選ばれない、今の段階ではその才能を持ってないから。


「飼育委員会は、外に飼育小屋があってその中で飼っている動物たちの管理が仕事。ここの委員長は自分で動物を飼っているから、動物が好きな人は色々な子達に触れるよ」


 学校案内でも言っていた単語。動物を飼うってどんな感じなのだろう。翠は今までペットとか飼ったことないからお世話が上手くできるのか分からない。


「整備委員会は、この前学校案内で見に行った武器庫、その中で保管されている武器の管理と保全。あと模擬武器っていって、木材で作る偽物の武器の製作も含まれてる。ちなみにここの委員会の顧問は僕が務めてます」


 付け足しで「ここは一番見学者も多いし、入りたい人も他の委員会と比べて多いよ」と小豆沢先生は言った。それはそうだろう、直で銃などの武器に触れることができるのだから。ここは志望する人も多そうだ。


「自然委員会は学校に設置されてる花壇や植物の世話。あと、昔の自然委員会委員長が作った野菜畑の管理もある。ここは年に何回か畑の収穫でその野菜たちを調理して委員会メンバー全員で食べるらしいよ」


 自然委員会、翠の中で一番興味を引いたのはここだった。ここは別に将来兵士になったとき役に立つ知識を得られるかと言われればそうでもない。だけど、翠はどうしてもここに所属してみたい、希望者がいなければ絶対に自分が入りたいと思った。


「ここは入学式でも挨拶で総務委員会副委員長が出てたね。総務委員会はクラスの委員長と副委員長が所属する場所なんだけど、仕事内容はクラスの管理と学校イベントの企画立案と進行。ここでは自分達でやりたいイベントを実行できる場所でもある。話し合いも加えて、だけどね」


 進行、リーダーが所属する委員会。翠にはそこまでリーダーシップはないし、誰かの上に立つなんてやったこともないこと。ここもやめておこうかな、イベントの企画立案という部分は興味はあるが、それ以外があまり自分には向いていない。


「最後に図書委員会、ここは図書室の本の管理、あとは貸出・返却の窓口当番がある。まあ名前の通りだね。ここは新たに入荷する本のリクエストは委員会メンバーから聞かれるし、その都合で届いた本を一番最初に見れる、だから本好きにはオススメの委員会だよ」


 翠の勝手な偏見だけど、図書委員会は静かなメンバーが多そう。第七区画にも図書館はあったし、基本図書館は静かに本を読む場所だから、自然とそういうメンバーが集まってそうだ。


「これで全部だ。どこを選ぶかは皆に任せるよ。あと来る人数は把握したいから、これから配るプリントに何曜日にどこの委員会に行くかっていうのを記入してほしい。提出は月曜日の朝のホームルームまで」


 そう言って配られたプリント。月曜日から金曜日、五つの欄がある。委員会は八個。だけど安全委員会は体験がないって言っていたから選べるのは七つ。


 自分が行ってみたい委員会を五つ選ぶ。とても難しい問題だ。行ってみたい委員会はある、だけど仕事内容が絶対に自分に向いていないものも複数あるのだ。どれを選ぼうか。


「委員会体験週間は友達同士で行ってもいいよ。席の隣同士でもいいし、寮の同室メンバーで行ってもいいし、一組二組の子達を誘ってもいいし。これは全員参加だから、行かない以外なら基本なんでも大丈夫だよ」


 小豆沢先生の許可が下りたから、彗斗を誘ってもいいということだ。同じ区画同士、とは言っていなかったけど。行かない以外なら基本大丈夫と言っていたから、これも大丈夫だろう。


 そのまま六時間目、ホームルームの時間が過ぎ、翠は自身の部屋に戻っていた。今日の掃除当番は彗斗と諒が含まれていた。二人は教室の掃除当番が一緒だから、二人が帰ってきたらどの委員会に興味があるのかとか聞いてみよう。


「おい、そこのお前!」


「へ!? あ、はい!」


 寮に入った瞬間、赤髪の男の子に話しかけられた。こんな人一年生の中にはいないはずだから、もしかしたら先輩なのかも。


「お前は入る委員会は決まっているか? 決まってないなら飼育委員会はどうだ? 色々な動物もいるし。皆賢いぞ。それに優しいやつばっかだし、触ると毛並みは気持ちいい! どうだ? 決まってないなら飼育委員会に入らないか?」


 これは俗に言う勧誘というものを翠は受けているのだろか。この人が何年生の人なのか知らないけど、初対面でこんなぐいぐい来られてちょっと怖い。


「おい、烈央(れお)、一年生が怖がってるだろ。そんな強引な勧誘で入ってくれるわけないだろう!」


 熱烈な勧誘に戸惑っていると、横から金髪の男の子が乱入してきた。


「烈央は放っておいて……君、一年生だよね?」


「二三年生にいないんだからそうに決まってるだろ」


「……監査委員会に興味はない? 計算が主な仕事だし、地味かもしれないけどやりがいがある委員会なんだ!」


「地味って自分で言ってる。入ってほしいならちゃんと宣伝しろよー」


「……もう! さっきから横からこそこそと! 聞こえてないとでも思っているのか!」


 金髪の人が翠に宣伝しているのを横から烈央という人がボソッと嫌味のようにちょこちょこ挟んでいる。いつ金髪の人が怒るのだろうとむしろそっちの観察してしまった翠だったが、金髪の人は早い段階で烈央という人にキレていた。


「相変わらずキレやすいな、(まこと)は。だめだぞ? 兵士たるものいつ何時も冷静でいないと」


「別に僕だっていつもキレてるわけじゃない! 烈央がそういうこと言ってくるからじゃないか!」


「ほらまた感情的になってる。俺みたいに柔軟な人にならなきゃな! あとで教えてあげようか?」


「そんなもんいるかー!」


 そう言って金髪の誠とかって呼ばれてた人は赤髪の烈央と呼ばれてた人をそのまま追いかけて行った。怒りながら。

 だけどあの烈央って人もからかうのが楽しそうな印象があったし、そういう人なのかも。


 勧誘は去って、ようやく部屋に戻れると安堵したとき、寮を見渡してみると、自分以外にも他の一年生たちが同じように委員会の勧誘にあっていた。一組の子も二組の子も、遠くでは優依が、その隣では功雅が。二三年生の人達の委員会勧誘を受けていた。


 翠はようやくさっきの人達が去り、早く部屋に戻らないとまた同じ目に合われるということを容易に想像できた。だから、見つからないように急いで部屋に戻った。

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