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にがあまメモリーズ  作者: 空犬
『陽春の章』
19/30

3-3話『第一印象』

 二人に引っ張られて談話室に。

 授業や委員会が終わったらすぐ部屋に戻る翠は談話室を使うことがあまりない。勉強を教えてもらう彗斗と諒がいるからわざわざ外に出る必要がないのだ。


 談話室は大体宿題を一緒に取り組む人達や男女でおしゃべりする人達、色々な目的で皆使っている。たまに上級生が下級生寮の談話室にいることもあったり。


 三人が談話室に着いたときも既に談話室を使っている下級生もいるため静かに壁際の机に向かう。

 周りは複数人で集まって宿題やったり、一人で何か作業している人、色々な人がいるためあまり話に夢中になりすぎてうるさくしないようにしないと。談話室は皆で使う共有ルームみたいなものだから。


「僕達は他の組の子と委員会体験週間一緒にならなかったんだよね。伊月くんと來香ちゃんは一組か二組の子と一緒になったりした?」


「えっとね、私は翠くん達以外で、初日の月曜日に整備委員会で一組の美桜ちゃんと叶奏ちゃんと一緒になったよ」


 置いてある一人用のソファーに三人それぞれ腰掛け、机を挟んでお話する。

 來香も美桜と叶奏と既に委員会体験で知り合っていたらしい。翠的には叶奏から聞いた九条 遥以外何も情報がない二組のクラスの人達の情報が知りたいところだ。伊月は誰と一緒になっているだろう。

 肝心の伊月だがうーんと眉間に手を当てて何か考えている様子。


「……んっとぉ~……火曜日に翠達と当たってー……確か木曜日の保健委員会で一組の廉と悠真(ゆうま)が一緒になって、金曜日の図書委員会で二組の女子……咲弥(さや)果帆(かほ)穂佳(ほのか)が一緒だったな」


 伊月は一組の男子、二組の女子、全員ではないがどちらとも一緒になっていた。二人から話を聞けばたくさんの情報が入手できるかもしれない。

 まず翠が聞きたいこと。それは、


「來香ちゃんと伊月くんは同じ委員会の一年生はどんな子?」


 昨日彗斗と諒にも聞いたことだ。伊月のところは遥だけど知っているのは名前だけ。望むのはどういう子、性格、そんなところを聞きたい。もちろん來香のところもだ、來香のところは誰が一緒なのかも知らない。


「私のところは一年二組の風間(かざま) 世羅(せら)くんって子が一緒だよ! 世羅くんはー、あんまり自分から話しかけてこないんだよね。用がなかったらずっと一人っきりでいるって感じ」


 一年二組の風間 世羅の容姿は白髪。來香から見ると世羅は基本的に、來香にも委員会の先輩にも用がなければ自分から一切話しかけに来ない。だけど同室の九条 遥とはよく一緒にいるのを目撃するし、二組のメンバーでいるときは笑っているところを見たことがあるらしい。


「俺のところは翠は昨日会ったことあるけど、來香のとこと同じ一年二組の九条 遥って言うんだ。遥は~、見た目はクールなやつなんだけど人と話すのが得意じゃないんだよ。だけど動物、特に猫が大好きでさ! 猫を前にすると顔が緩むんだよな~」


 確かに昨日会ったとき第一印象は髪色も相まってクールな感じだった。伊月によると遥は話すのが得意じゃないから委員会のときは大体伊月と遥、二人で一緒に飼育委員の仕事をすることが多いらしい。


 昨日遥と叶奏が二人で話せたのは、既に委員会体験週間で一緒になったことがあるから。そこで繋がりみたいなものが出来ていたから大丈夫だったのかも。


「あ、そうだ! この前さー」


 伊月が思い出したようにテンション高く話し始める。

 内容は数日前、伊月が飼育小屋の昼当番表をどこかでなくしてしまったらしく、自分の部屋、教室の自分の机の中、室内飼育小屋、思い当たる場所を探したが見つからなかったそう。


 伊月は当番表の内容を覚えてはいなかったため、どうするか悩んだ末、同じ委員会の遥に見せてもらってそれを小豆沢先生に言ってコピーしてもらおうと考えた。


 善は急げということでその日は委員会がない日だったらしく放課後、まず小豆沢先生に話しコピーしてくれるよう頼んでおいた。その後に遥の部屋へ行き内容を話して当番表を借りる許可をくれるようお願いする。


 その際に遥の部屋に初めて入る。同室の風間 世羅は今日は整備委員会があっていないらしい。その事を聞いて整備委員会の顧問が小豆沢先生だったことを思い出し、小豆沢先生の話を何も聞かないでコピーの件をお願いしてしまった、と若干の罪悪感を感じてしまう。


 気を取り直し部屋に入り遥のスペースにはなんと――たくさんの猫グッズが置かれていたのだ。

 机に置かれている猫柄のシャーペンに色々な猫柄の筆記用具たち。椅子の背もたれに置いてある猫の肉球クッション。ベットの柵にかけられた脱ぎ捨ての可愛い猫の顔がプリントされてるTシャツ。ベットには猫のクッションにぬいぐるみ、そして抱き枕。色々な猫グッズが遥のスペースには置かれていたらしい。


 当の本人は伊月に対して何も抵抗感がなかったのか、すんなり伊月を部屋に入れそのまま当番表を探し始めていた。


 その時伊月は遥の色々な猫グッズが置かれているのを見て改めて遥の猫への愛を感じたという。


「っていうことがあってさ~! ベットに置いてあった抱き枕とか寝るときいつも抱きしめて寝てるって考えると遥も可愛いよな~」


「そうなんだね、私も見てみたいなぁ!」


 二人が話しているのを横目にあの第一印象クールな遥がたくさんの猫グッズに囲まれてると考えると、人ってやっぱり第一印象だけじゃないなと思った翠。

 それにそんなに荷物が多いと初日荷解きすごい大変だったんじゃないかと思う。


「そっか、世羅くんとか遥くんはそういう子なんだ」


 全部が全部翠にとっては興味深い話だったけどその情報を忘れてしまうのが一番困るためすぐさま頭にインプット。これも大事な情報だ。

 そして次に翠が聞きたいこと。翠にとってはこれを一番聞きたかった。


「二人が委員会体験週間で一緒になったっていう話を聞きたいんだけど、いいかな? 僕達のグループは三組の皆としか一緒にならなかったんだよね。だから聞いてみたくて」


「うん、いいよ! じゃあ私からね!」



・・・・・・



 委員会体験週間のお知らせを受けたその日。來香、優依、沙良は同室でもあるお馴染み三人で行くことに。

 行きたい委員会を決め、初日は整備委員会だった。


 整備委員会の集合場所は武器庫で中に入ると整備委員とその他に見慣れない人達が二人いた。一人はピンクのツインテールの女の子に一人は白髪を三つ編みにしている女の子。

 自己紹介でピンクのツインテールの女の子が一年一組の白崎 美桜、白髪を三つ編みにしている女の子が望月 叶奏という名前だった。


 やった内容は翠達と変わらずハンドガンの手入れをやった。最初は一組、三組と別れてやっていたが段々と和み始めて一緒に話しながら作業するように。


 來香から見て美桜はこの中の誰よりも先輩達に質問をしていた。大体初めて会う人、しかも初日の日、誰もが緊張する場面で美桜は果敢と怯みもせず堂々と先輩達に絡み分からないところなどを聞いていた。

 美桜以外に來香も色々な先輩達に絡みに行っていたらしいが。


 時には隣にいる叶奏。叶奏は分からないところを質問するのが少し緊張していたようで、そんな場面でも美桜が代わりに聞いてあげる優しさも見せていた。結構美桜が叶奏を引っ張ってくれる場面が多かったのだ。


 美桜はいい意味で素直で、裏表がない性格だからか。変に敬語やちゃん付けをしなくて、來香達も楽しくおしゃべりしながら一緒に作業に取り組めた。

 叶奏は物静かだけど優しい性格の持ち主で、來香、優依、沙良の中では優依と一緒に作業する場面が多かった。優依も叶奏が話しやすかったのか來香と沙良の二人と離れて叶奏と二人でいることも。



「美桜ちゃんと叶奏ちゃんはこんな感じだったよ!」


 來香の話はずっと自身がにこにこ笑顔で楽しそうに二人に聞かせてくれて、來香自身も相当その日は楽しかったのだろう。その笑顔と声色でそれがひしひしと伝わってきた。


「やっぱ色んなやつがいるんだな。俺も三組以外で誰と一番関わるの誰かって言われたら遥だしなぁ。委員会体験週間で一緒になって作業したけど、その日以来あんまり関わってないんだよな」


「結局はいつものメンバーが落ち着くもんね。僕はそもそも接点がないからなぁ」


 明るくて過度に絡みに行く伊月でも一番関わるのは三組の皆で、それ以外は同じ委員会の遥。桜木教育学校に入学してから、自由にできる放課後は委員会活動があればそれだけだし、なければ小豆沢先生から出される宿題もあるから結局はいつものメンバーで行動。あまり他の人達とは過ごさない。土日もいつものメンバーだし。


 翠は叶奏以外と接点がないから他の皆より話しかけに行くのは難易度は高い。


「こういうの聞いちゃうと他の人達のところに行ってみたくなるよな!」


「いきなり? 僕は一人で話しかけにいく勇気ないよ……緊張するし、僕叶奏ちゃん以外と接点ないもん」


 伊月はその性格だから翠みたく接点がなくてもいきなりその人も元にいって一緒に話そうぜ、くらいは言えそうだなと伊月を見て思う翠。


「そういえば総務委員会って学校イベントを企画するのが活動内容に入ってたよね! だからその時に一組、二組の皆以外にも他の学年の先輩達とも関われちゃうのかな!」


「あ、功雅が今総務委員会で過去の先輩達が企画したイベントを見て企画立案とか運営の勉強してるって言ってたな。学校イベントは全学年参加だから、普段関われない学年の先輩達にも関われるって功雅言ってた!」


「そうなんだ。初めての学校イベントはどんなイベントなんだろうね」


 來香の総務委員会から話が広がり伊月は楽しそうに功雅が言っていたらしいことを語る。

 翠も今は一組、二組だけの情報収集だけど、いつかは全学年の情報を手に入れたい。区画が近くないと持っている情報は意味ないかもしれないけどいずれ第七区画が他区画を倒し領土を広げれば自然と遠い区画にも届く。


 その時のために翠は情報を集める。現時点で翠は戦えないけど、情報を持ってるだけこっちが有利になるのだから。


 そうは思いつつも彗斗や諒が一緒にいるときでは味わえない空気感に翠は居心地の良さを感じ、自然と表情が緩み笑みが零れる。


 まだここにいたい。二人とおしゃべりしていたい。そんな心が翠を支配する。今はこの楽しい空間に浸ってもいいかな、と思う翠だった。

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