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にがあまメモリーズ  作者: 空犬
『陽春の章』
15/30

2-10話『飼育委員会、最後の委員会体験』

 金曜日、委員会体験週間最終日。金曜日に翠達が選んだのは飼育委員会。

 翠の第二希望の委員会。飼育委員会はどっちかというと数合わせのために選んだ部分はあるが、普段動物やペットとの関わりがないからこそ見学してみたいという気持ちもある。


 翠としてはやっと辛かった監査委員会を乗り越えたため、幾分か表情がスッキリしてる。

 今日の目標は飼育委員会の活動を真面目に見学、体験しつつ動物とたくさん触れ合って疲れを落として癒される。これを最終日に掲げようと思う。


 飼育委員会の集合場所は室内飼育部屋。学校案内でも小豆沢先生が言っていた場所だ。そして今日が初めての持参するものが必要らしい。と言ってもそんな難しいものじゃなく外靴を持参というだけ。


 だから一度玄関口に行って外靴を持って行ってから室内飼育部屋へ。


 武器庫とは逆方向の廊下の先にあるらしい室内飼育部屋。紫雨からもらった地図を頼りに初めてそっち側の廊下を進む。

 ガラス戸から見える中は色々物が置かれているのが見える。飾り物や動物用のクッションなど。


 失礼します、と挨拶をし室内飼育部屋のガラス戸を引いた。


「お、いらっしゃいです! 君たちが見学者の子達ですね、ようこそ飼育委員会へ!」


 手招きされ入室。室内飼育部屋には最初に挨拶してくれた丸メガネをかけた上級生の女の子。窓の側に座り外を見ている同じく上級生の女の子。そして、誠の前に翠を勧誘してきた赤髪で烈央と言われていた下級生の男の子。最後に見た目が怖いおそらく顧問の先生。


「君たちで三人だからあと半分ってところですね」


 プリントを見ながらそう呟く丸メガネをかけた上級生の女の子は、プリントから目を離し入口の方に目を向けるとあ、と言葉を漏らした。


 三人はその言葉に後ろを振り返る。そこには、


「こんにちはー!」


 中に入ってすぐに大きい声で挨拶する來香。その周りには沙良と優依が立っていた。


「翠に彗斗に諒じゃない。あんた達も一緒だったのね」


 沙良の言葉にだから半分と言ったのかと謎が解けた。つまり今日は一年三組見学者六名で飼育委員会を体験するということだ。


「さて、六人揃ったことだし委員会体験を始めましょー!」


 メガネをかけた上級生の女の子の高い声で奥の方にいた飼育委員二人と顧問の先生が駆け寄る。近くで見ると顧問の先生が怖い。主に顔が。


「まずは自己紹介ということで……私は六年一組、飼育委員会委員長の綾瀬(あやせ) 呉羽(くれは)と言います! 皆よろしくです!」


 最初に翠達に話しかけてくれた上級生の女の子。呉羽は黒髪を三つ編みツインテールにしていて丸メガネをかけている。そして昨日会った未舞とはまた違うような、ゆるいというか砕けた敬語で話すのが特徴の生徒。


「四年二組の不番谷(ふつがや) 四季(しき)、よろしく」


 水色の髪を太もも辺りまで長く伸ばしている上級生の女の子で、彼汰と同じく感情表現が一切ないのも特徴だ。


「お前あの時ぶりだな」


 指を差されながら言われた言葉は間違いなく翠に向けた言葉だろう。目線がちゃんと翠がいる方に向いている。


「俺は二年一組、赫也(かくや) 烈央(れお)、よろしくな!」


 赤髪で、初めて勧誘を受けた日は結構グイグイくる人だった。翠は委員会体験週間から何かと色々な人に振り回されている気がする。

 自然委員会は陽向に抱っこされてぐるぐるしたし、整備委員会では伊月に引っ張られて強引に一緒に作業をして、図書委員会では今度は夏希に引っ張られ仕事を教えながらオススメの小説を教えるというある意味器用なシーンに目の当たりにして。


 監査委員会の出来事はまあ翠が理解しないのも要因としてあるため除外。三日間だけでも翠は色々な人に振り回されている。今度は烈央かと警戒心が上がる。


「そしてこの人が飼育委員会の顧問ですよ~」


 呉羽は両手を使い顔が怖い顧問の先生に向かって手を広げる。それに乗っかったのか烈央も呉羽と逆の方へ。その先生を囲むように手を広げた。まるでこれから祝われる人みたいな感じだ。


「呉羽、烈央、それやめろ。……ゴホン! 二年一組担任、飼育委員会顧問の遠坂(とおさか) 虎朔(こさく)だ。よろしくな」


 見た目は黒髪をハーフアップにしている先生。主に顔面が怖い遠坂先生。目が吊り上がっていて、顔のパーツ自体がもう怖いのか分からなかったが、とにかく顔が怖い先生だ。


「遠坂先生見た目はめちゃ怖いですけど、名前は可愛いんですよね~」


「はあ、呉羽、オレの話はいいから進行しろ」


 ため息をつく遠坂先生。やれやれと言った顔をしながら進行を再開した呉羽に、翠達が今度は名前を聞かれたためここで六人の自己紹介が入る。


 六人の自己紹介が終了し次は呉羽から飼育委員会の活動内容と今日やることの説明を聞く。

 説明を聞いている限り外に飼っている動物がいるらしい。呉羽曰くこの室内飼育部屋は冬や天候が悪い日に動物たちが過ごす場所らしい。普段は外の飼育小屋にいるとのこと。


「説明はこんなもんですね。今日は実際の飼育小屋の掃除と餌やりをやります! 見学者の皆さんは外靴持ってきてますか? ここから直で外に出れるのでそのまま飼育小屋へ向かいますよー」


 先に出て行った飼育委員の後に続くように翠達六人も外に出て飼育小屋へ向かう。

 着いた飼育小屋は思っているより大きい建物で皆驚いていた。だが飼育小屋の中には色々な動物たち。うさぎ、ニワトリ、犬種が分からないけど大型犬や柴犬、インコやスズメにカラス、そしてリスなど、色々な動物たちが飼育小屋の中にいた。


 そして飼育小屋の裏から呉羽に向かって寄ってくる狼二匹に犬と猫、そしてネズミ。隣に植えてある木の上からは二匹のカラス。皆あんぐりと口を開けている。それに気づいた呉羽が、


「あ、この子たちは私が自分で飼っているペットです。皆可愛いでしょ~」


 この学校ってペット連れ込みいいんだ、と六人全員思ったことだった。第七区画で見かけるのは野良犬とか野良猫ばかりで、狼やネズミをこんな間近で見たことがない翠は狼のフォルムに惚れる。


「さて、まずは小屋の掃除をしましょう! ……あ、一つ約束してほしいのが、小屋の中にいる子たちは皆優しいし余程のことがない限り噛むなんてことはしませんが……安全も考慮しないとなので、一年三組の皆さんはこの子達に触るときは側に飼育委員の誰かがいるときだけにしてくださいね。作業するときも私たちがやったあとにやるようにしてください。約束ですよ?」


 そう言って呉羽は持っていた鍵で飼育小屋開ける。そして、


「じゃ、皆いってらっしゃ~い」


 と言って小屋の中にいる子全員何もリードを着けていない状態で外に散らばっていった。


「え、全員逃がしちゃっていいんですか!?」


「大丈夫ですよ、最後には全員帰ってきますから」


 翠の焦った声色に何も反応せず、作業道具を色々取り出す呉羽。次の言葉を言う暇なく、飼育委員に渡された道具で全員で小屋掃除が始まった。


 小屋が広い分、動物たちの小屋の掃除のはずなのに部屋の掃除をしているみたいだった。

 まず動物たちのトイレを綺麗にし、小屋と言っても檻状のものなので風は通るが、抜け毛や餌の食べカスもある。それを箒で掃きとったり、水飲み場用のお皿に水を補充。あれだけ動物がいたのだから、こんな風になるのも仕方ない。


 九人で小屋掃除を初めて数十分で小屋はピカピカになった。すると呉羽は制服の中から笛のようなものを取り出しそれを拭く。だけど何も音は聞こえない。


「この笛は動物たちには聞こえる音が出てるんですよ」


 そう言うが笛から何も音が聞こえず、本当にこれで帰ってくるのか不思議と思っていたとき、何かが走っている足音が聞こえそっちに目を向けると、呉羽に向かって走っている動物たちが見えた。


「じゃあ次は餌やりしながらこの子達と触れ合いましょ!」


 飼育委員から配られた袋に入った餌をぶら下げ、飼育委員同伴の元実際に触ってみることに。


「触ってみたいって思ってたけど、実際に触るとなると……」


「私も……少し怖い」


 数匹のウサギたちに翠と優依は硬直。見た目はもふもふしているが、内なる凶暴性があるかも。うさぎって蹴ったりすることがあるって聞いたことがあるし。


「大丈夫ですよ~、二人とも。……だってあの顔面が怖い遠坂先生でもこの子達と仲良しなので!」


「余計なことは言わなくていい!」


 遠くで見ている遠坂先生がそう吠える。二人のやり取りに翠と優依はぷっと吹き出した。そんな二人を見て嬉しそうに呉羽は表情を崩し、


「うさぎさん達もいきなり手を伸ばしちゃうとびっくりしちゃいますから、姿勢を低くして、手をそーっと差し伸べれば大丈夫です」


 二人は言われた通り、緊張しながらも餌をそーっとうさぎに向かって伸ばすと、嬉しそうに二人の手元にやってきて餌を食べる愛くるしいうさぎ達が。


「あ、食べてくれた!」


「私も……!」


 別の場所では彗斗が遠くに餌を置き、食べに来てもらうという方法で一人で餌やりをしていた。すると背中に視線を感じて振り返ると一匹のニワトリが彗斗の傍にいて、そしてジッと見ていた。


「うぉ! び、びっくりした……」


 しゃがんでいたのもあって、目の前にニワトリがいて思わず大きめの声を上げてしまい咄嗟に口を押さえる。

 餌を地面に置くもそのニワトリは食べるわけでもなく、鳴くこともなく、ただただじーっと彗斗を見つめるだけ。彗斗自身もその視線が痛くなってきたとき、


「多分この子は、手渡しで餌をもらいたいんじゃないかな」


 彗斗の隣にしゃがみそう言う四季に、とりあえず餌を手のひらに乗せそれをそっとそのニワトリの前にやる。手のひらに近づいたニワトリはその餌を食べた。なぜ、と考えたが動物だしそこらへんは人間と違うんだろうなと答えを出すことによって落ち着いた。


「この子に触ってみる?」


「え、いいんですかね……」


 そのニワトリを四季は自分の膝に乗せた。さっきは手渡しで餌もいけたし、撫でるのもできるのかと思いながら手を伸ばす。ニワトリは触った彗斗の手のひらに自分の頭をすりすりと擦りつけた。そのくすぐったさに不覚にも可愛いと思う彗斗の元に、


「彗斗くん、ニワトリ触ってる! 私も触ってみたい!」


 駆け寄ってきた來香と一緒にニワトリを触る彗斗なのだった。


 また別の場所では、犬や鳥たちに餌をあげる諒と沙良が。


「犬種分からないけど、この子はちょっと怖いわね……」


 柴犬や餌に寄ってくる鳥たちにご飯をあげる沙良と諒。だったが、沙良は犬種が分からない大型犬に少し怖さを覚える。すると、


「大丈夫だ。こいつ顔は怖いけど優しくて面倒見がいいやつなんだよ。ほら!」


 横からやってきた烈央がその大型犬、土佐犬をうりうりーと言いながら撫でくり回す。土佐犬も撫でられるのが好きなのか烈央に甘えているようだった。


「こいつ自身力が強いけど、そーっと手を伸ばせば噛むなんてことはしないぞ」


 飼育委員の烈央がそこまで言うなら、と思い意を決して腕を伸ばし餌をあげる。すると土佐犬は噛むことなく手のひらに乗ってる餌を食べていく。

 感動しているとその土佐犬の頭の上にスズメが一匹乗った。だけど何も気にしている様子がないため日常茶飯事なのかもしれない。

 沙良が餌をあげれたのを見て諒も同じく餌をあげる。すると鳴きながら鳥たちが諒の頭に、次の瞬間にはリスが肩にも乗っていた。


「お、皆諒の方に寄ってるな」


 諒は頭に乗っている鳥たち、肩に乗っているリス両方に餌をやり、そーっと触ろうと手を伸ばすと鳥たちリスは怖がることなく諒の手のひらを受け入れた。



「皆どうでしたか? 飼育委員会はいつもこんなことしてるよーって分かってくれたら嬉しいです! この見学を通じて飼育委員会に入りたいと思ってくれたら、私たち全員とても嬉しいです、待ってまーす!」


 飼育委員会委員長、綾瀬 呉羽の言葉で委員会体験週間全て終了した。



・・・・・・



 数日後、一年三組の教室では六時間目の時間を使って委員会決めが行われた。

 結果はこうだった。


 翠、自然委員会。

 彗斗、監査委員会。

 諒、図書委員会。

 彼汰、安全委員会。

 伊月、飼育委員会。

 功雅、総務委員会兼、一年三組の学級委員長。

 沙良、総務委員会兼、一年三組の副学級委員長。

 優依、保健委員会。

 來香、整備委員会。


 という結果になった。


(あれ、諒くんなんで……)


 皆所属したい委員会が決まっていたのか結構すんなり委員会決めは終わった。だが、翠はこの結果に一人疑問を残したのだった。

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