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光の裏で

ある日突然ソイツはやってきた。白い髪に金色の瞳をした青年はオドオドとしながら教壇に立つ。


「突然だが、この一般科生が今日から精霊科の授業を特別に参加する事になった。そうだ、この前編入した編入生だ。校長先生の命令だから異議申し立ては校長先生に直訴しに行くように。では自己紹介を。」

「ルーク・エルスタインです。よろしくお願いします。」

「じゃああの1番手前の席へ。」

「はい。」


ソイツはまるで人間ではないような容姿をしていた。ソイツが講義室に入室した瞬間から講義室内の空気が一変したように感じた。ソイツが席に座った途端に精霊達がソイツに群がっていく。僕が契約していた精霊も例外でなくソイツの元へ行ってしまった。


「え、ちょっとなんで?」


確かに常軌を逸した存在である事はひしひしと感じるが、そうであっても僕は不満だった。

風の中位精霊だった僕の精霊は契約した時からいつも一緒だった。ご飯を食べる時もお風呂に入る時も勉強していた時もそれこそ遊ぶ時だって、いつも一緒だった。彼女は片時も僕の傍を離れた事がなかった。そんな僕の精霊はソイツに吸い寄せられていくように行ってしまった。あぁ、憎い。とても憎い。

ソイツが講義室に入って来る度に彼女は向こうへ行ってしまう。アイツに取られてしまう。アイツが来たら取られてしまう。僕の精霊が、僕の精霊が取られてしまう。僕のだけなのに。僕の精霊なのに。

アイツが憎い。

アイツが憎い。

僕だけの精霊。

僕だけの精霊だ。

アイツには渡さない。

取られる前に殺してしまおう。

そうすれば僕の精霊は帰って来てくれる。

僕の元へ帰って来てくれるんだ。

さァ、アイツを殺シにいこウ。

アイツを殺さナくてハ。

アイツをカクジツにコロすニハ...?


「やぁ、少年。こんな所で何をしているんだい?」


ハッと顔を上げるとそこは見知らぬ路地だった。あれ、屋敷に帰っていた筈ではと焦って辺りを見回す。話しかけてきた初老の紳士のような出で立ちの男は優しく僕に微笑んだ。


「あ、えっとその...道に迷ってしまったようです...。ここはどこですか?」

「ここは貴族街前の路地だ。それより君は...いい顔をしているね。」

「え、あっとその...?」

「ははっ、違う違うそういう意味ではないのだよ。君はとても()()()をしている。私はとても大好物だ。そんな君に相応の贈り物を授けよう。」


初老の男はポケットから美しい紫の宝石が嵌め込まれた指輪を僕の手元へ落とした。


「これはね、君の奥底へ眠る美しい感情をそのまま引き出してくれる代物。良い物だろう?」

「いえ、これはお返しします。僕には勿体ない代物です。」

「いーや、今の君にはとても必要さ。...殺したい人間がいるんだろう?」

「...!?」


ドキッと胸が鳴った。これは誰にも話していないし、話すつもりもない。僕の心情を察するかのように初老の男は笑い出す。


「君にはとても殺したい人間がいるようだ。そうだろう?」

「...はい、そうです。」


気がつけば口が開いていた。


「殺したいんだろう?」

「...はい、殺したい。憎いです。アイツがいなければ僕に平穏は訪れる。また前のように楽しい日々がくるんです。」

「そうだろう、そうだろうとも。この指輪はね、着けていればいる程力が増大する。つまり殺せる可能性が上がっていくのだよ。」

「...これを着けるだけで殺せるって事ですか?」

「そうだとも。さぁ、その美しい指に嵌めてごらん?」


初老の男はそう言うと指輪を僕の指に嵌めた。すると次の瞬間身体を謎の力が満ちていき、僕は万能感に溢れアイツを殺したくて殺したくて仕方なくなった。


「どうやら君の殺したい人間は精霊に精通しているようだ。それならばこのネックレスもサービスしてあげよう。これを着けて学校を歩き回ればその殺したい人間も下手には動けなくなる。」


美しい紫の宝石が嵌め込まれた金のペンダントトップを僕の首に掛けるとそれを隠すように服の中に入れた。僕は軽くなった足で路地を後にする。今すぐにでもティータイムにありつけたいくらいに快適だ。あァ、こレでヤツをコロせる。確信めいたモノがぐるぐると頭の中を回っていった。

明らかに様子の変わった制服の少年を見送った男は明らかに人間のモノとは違う赤い瞳を細めてニタァと嗤った。


「さぁ、楽しい楽しいパーティーの始まりです。人間共よ、泣いて喚いて踊りたまえ。」


路地は何事もなかったかの如く静かになった。

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