仲間と探索
さて、これからどうしようか。ずっとこのままって訳にはいかないからね。一応戦闘での役割分担は決めたし、武器も二人とも持った。準備もばっちり。ただ、何をするにも目標や目的がないとできるものもできなくなる。
「そういえば、智香は何処からここに来たの?」
「えっと、実は埼玉から来ました。私がこのゲームで一番最初に来た場所は福島だったんですけど。」
「?一番最初に来た場所が福島なのに埼玉から来たってどういうこと?」
「最初は福島に居たんです。ただ、一ヶ月前にゲームエリアが変わるって運営からメッセージが届いたら急に転移されて、気が付いたら埼玉に・・・。」
「なるほど、ゲームエリアが変わったのか。智香は他にプレイヤーには会っていないの?」
「いえ、いろんな人と出会いました。ただ、フレンド登録が転移と同時に消えていて、関東エリアになってからは聡さんが初めてです。」
転移するとフレンド登録が強制解除されるのか、厄介だな。それにこのゲームのサブタイトル『友と戦い生き抜くRPG』っていうのに他のプレイヤーとの遭遇が結構シビアだ。智香は能力のおかげで僕と会えたけど他のプレイヤーはかなり厳しいだろう。タイトル詐欺にもほどがあると思うんだが。
「智香は、このゲームの最終目的って何か分かる?」
「さあ?私にもそれだけは良く分かっていないんです。私が出会ったプレイヤーの皆さんもこのゲームの意味に疑問を持っていましたけど、だれも知らなかったんです。」
「やっぱりそうか。仕方ない、行きたい場所があるなら行って見よう。旅行気分で関東を回るのも面白そうだし。現状、生き残るのが最優先だけど命の危険がない状況なら少しは楽しんでもいいだろう。」
「えっと、大丈夫、ですか?そんなに気楽で・・・。」
「んー。正直死ぬときは死ぬし、このゲーム世界でずーっと気を張りっぱなしってしんどいだろ。それに、今は生きること以外に目的はないからって言っても何もしないなんてありえないしな。だから、そう一応仲間探しも含めての関東巡り旅ってこと。色んなところ見てみたいしな。」
「そう・・・ですね。分かりました。聡さんと旅行したいです!」
「まあ、あまり気を抜きすぎるのも良くないけどね。」
「は、はい。気をつけます。」
よし、これからは色んな所を見て回って行く事を前提に行動しよう。勿論仲間探しもしっかりしながらね。智香の能力があれば仲間探しも捗るだろう。
「早速だけど、智香はどこか行きたいところはない?」
「そうですね。まず、東京からは離れたいですね。」
「?どうして?東京なんて観光名所がいっぱいあって楽しいじゃん。」
「えっ!?ここ、かなり強い魔物がうじゃうじゃいるんですよ?今の私じゃ全然敵わない敵ばかりなんです。」
「ああ~。そうなんだ。そりゃ、ヘルハウンドも飢えるよな。自分より強い魔物がいっぱい居るんだから。」
「あっ、いえ。ヘルハウンドより強い魔物は一応見かけませんでしたよ?」
「あれ?そうなの?僕が見たときヘルハウンドが凄く飢えていたと思ったんだけどな?あれって普通の状態なのかな?」
「それは分かりませんが、他の魔物は確かにヘルハウンドより弱いBランク前後ですが中には群れを成すものもいます。それらに負かされ、最終的に縄張りをとられ、しっかりしたご飯を摂れなかったということも考えられます。」
「なるほど、魔物同士の生存戦略、か。なんていうか、普通の動物みたいだな、人間を積極的に襲って食べるだけで。そこら辺は他と変わらないって言うか・・・。」
「そうですね。彼らにも生きるためには住処を奪い合い、獲物を取り合い、生き残るために殺しあう。そういったところは全ての動物に当て嵌まるんじゃないでしょうか。」
「そうだな。それじゃ、東京から離れるとして何処に向かう?」
「あ、あの私、千葉に行ってみたいなと思ったんですけど・・・。」
「へぇー、千葉か。じゃあ、千葉の何処に行こうか?」
「あ、えっと、あんまり良く知らないんですが、九十九里浜とか鋸山とか観光名所がいっぱいあると思ったんです。」
「そうだな、とりあえず千葉に行ってそこから何処に行くか決めようか。行く途中で何かハプニングが起こるかもしれないしな。」
「起こって欲しくないですけど・・・。確かにガッツリ決めるよりはちょっと緩く決めるほうが何か起こったときに対処しやすいですし、千葉にも強力な魔物が住んでいるかもしれませんから。」
「よし!それで行こう。まずは千葉に出発だ!」
「はい!」
ギュルルルルルル~~~~
「~~~~ッ!!!?/////」
智香は盛大に鳴ったお腹の音に恥ずかしさで悶え始めた。・・・ちょっと可愛いな。
「ははは、もうこんな時間か、智香もお腹空いたようだし一緒にご飯食べようか。」
「・・・はい。////」
「そんなに恥ずかしがらなくてもいいよ。」
「すいません。大きな音出してしまって・・・。」
「僕もお腹が空いていたんだ。別に構わないよ。っていうか僕は朝ごはん食べたけど、智香はまだだったよね?ごめん、話に夢中で気づかなかったよ。待ってて、今作るから。」
「はい。有難う御座います。」
もう、1時過ぎているし、サッサと昼ごはんを作らなきゃ。ヘルハウンドの肉は昨日全部食べたし、残っている食材で作るしかないか。まあ、カレーでいいか。
「よし、出来た。超簡単うまカレー。」
「とっても美味しそうですね。それにしてもカレーにしては早くないですか?まだ30分くらいしか経っていませんよ?」
「ああ、時短カレーだし、ルーは固形の奴じゃなくて粉末だから煮込み時間もかなり短く出来る。まあ普通なら出汁とか取らなくちゃいけないんだけど、なんかそういうのも一緒に入っているみたいだから大丈夫だと思う。蜂蜜も入れたからしっかり肉も柔らかくなっていると思うよ。」
「そうなんですか。それじゃあ、いただきます。」
「召し上がれ。」
「・・・んん~。とっても美味しいです!牛肉もしっかり歯ごたえがあるのに柔らかくて、ジャガイモも人参も玉葱もカレーと食べると甘味が一層際立っているような・・・。それにカレールーもいつも食べているのと全然違います!」
「それは良かった。作った甲斐があるよ。」
「はい!」
昼ごはんを食べ終わったら、片付けてここを出る準備をする。あっ、ちなみに持っている地図は関東地方の地図だ。都道府県ごとの地図だと一枚10ポイントだけど八地方ごとの地図だと一枚100ポイントもする。あんまり割に合わない、けどないより全然良い。
「それじゃ、今度こそ出発だ!」
「はい!」
こうして、僕たちの旅は始まった。
カレーは市販のルーを粉状にした奴をイメージしてくれれば良いと思います。(本当に時短になるか分からないけど)