日常
主人公がチートなのはお約束・・・。
木の葉が赤や黄色に色付いてきた季節。空気はひんやりと夏に溜まった熱気を冷やしてくれるように心地良く、行き交う人々はもう長袖のTシャツに上着を羽織り着込んでいた。
そして、この時期になるととっても忙しくなるのが就職活動や受験に向けた勉強をしなければならない高校3年生。
もちろん僕も例外じゃない。ただ高校を卒業したら就職して働くつもりだけど、特にこれといってやりたい仕事があるわけではない。いや、この言い方は正確ではなくて、やりたい仕事が多すぎて全く決めることができないでいた。
僕は、物心がついた時から好奇心が旺盛でなんでもやりたがっていたと伯父から聞かされてきた。そしてそれは今も尚、僕を動かす原動力となっている。だから色んなことに挑戦してきた。
料理、裁縫、小物作り、園芸、家庭菜園、汚れたものの洗い方、壊れた物の直し方、色んな機械の動かし方、さまざまな本を読んだり、アニメやゲームも有名所はほとんどやった。科学の実験をしてみたり、習い事で習字、華道、茶道、剣道、柔道、空手、弓道、和楽器や洋楽器を習ったり、サッカー、野球、水泳、バレーボール、バトミントン、バスケ、ロッククライミング、登山、スキー、スノーボード、スケート、サーフィン・・・・・・・・
まあ、とにかく色々やってきた。5歳ぐらいから結構色んなことに興味を持っていたのを憶えている。たまに、変な事に興味を持ったりすることもあった。オカルトクラブはその良い思い出だ。
そんな感じで今まで自分がやりたいと思ったことをその好奇心でやってきていたんだがさすがに仕事を好奇心のまま辞めたり転職したりすることはできないだろう。とにかく、自分が受けるたい職種を厳選したいんだけどこれがなかなか難しい。
なんせ今までそんなことはやっていなかったからだ。やりたいと思ったことでできることはやってきたし、できないことは諦めて来た。しかし厳選のようなことは今までしていなかったのだ。
・・・どうすべきか。・・・ううん。
「おーい、霧島!聞いているのか!霧島!」
「・・・!っはい、なんですか先生。」
「なんですか、じゃないよ、授業中だぞ、教科書とノートを机に出せって。」
「すっ、すいません。ぼーっとしてました。」
「全く、気を付けろよ。最近多いんだから。」
「はい、すいませんでした。」
どうやら、考え込んでいて授業が始まったことに気づかなかったようだ。気を付けないといけないな。
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ふぅ、昼休みか、弁当食べよ。
「聡、一緒に食べよ。」
「穂野香か、良いよ。二人はどうしたんだ?」
「海斗と亮のこと?ん~、もうすぐ来るんじゃない?」
「おーい、お二人さん。俺らもまぜて~。」
「ったく、めんどくせーな。一々俺を巻き込むなよ。」
「おっ、噂をすればなんとやらだな。こっちで一緒に食べよう。」
「だーいさんせー。亮も、ほらこっち。」
「わかったから、そんな引っ張るなって。」
僕は、いつもこの4人で弁当を食べるときが好きだ。最初に声を掛けたのが幼馴染でよく僕の住んでるアパートに来ては家事の手伝いをしてくれる佐藤 穂野香、遠慮のない言葉で話しかけてきたのが隣のクラスで少し軽いノリだけど仲間思いな桑原 海斗とその次に話しかけてきたのは面倒臭がりだけど押しに弱くて困っているとよく助けてくれる吉野 亮。
いつも、この3人と昼休みに他愛も無い話しをするのが実は楽しみだったりする。
「聡、大丈夫?最近、調子悪いみたいだけど。」
「えっ?いや、だ、大丈夫だよ。」
「そう?ならいいんだけど。」
「んー?何の話?」
「聡、最近考え事してて、ボーっとすることが多いからちょっと心配してたのよ。」
「ふーん。まっ、気楽にやることが一番いいぜ、聡。気ぃ張りっぱなしなんて疲れるだけだぞ。」
「う、うん。」
「そうね。取り詰めて体壊したら、就活どころじゃないでしょ。たまには少し息抜きでもしなさい。」
「わかったよ。心配してくれてありがとう。穂野香、海斗。」
「いいって。気にすんな。」
「そうよ、友達を心配するのは当たり前でしょ。」
「そうだね。うん。」
今度、何か息抜きになるようなこと探してみようかな。
「そうだ、そういえば聞いたか?あのニュース。」
「なんだいきなり。・・・あのニュースって、最近テレビでやっている行方不明事件のこと?」
「それそれ、三ヶ月前から全国的に発生した事件。」
「あ~、僕も見たよ。確か10代後半の若い人が次々にいなくなっている奴だよね。」
「そそ、お年寄りの人たちは神隠しなんて騒いでいるんだ。」
最近日本では原因不明の行方不明者が多く出ている。確かもうそろそろで1,000人くらいだったか。最初は警察も家出の類だと処理していたらしいが数が多すぎて、大規模な犯罪組織による誘拐事件という見方に変えて捜査をしているらしい。が、未だ誰も見つかっていないそうだ。
「で、それがどうかしたの?」
「いや?聞いただけだけど?」
「って、それだけかい!?」
「まあ、俺ら4人いたら誘拐だろうが神隠しだろうが平気平気!」
「なにが平気なのかわからないし、危ないから変な事しないでよ?」
「いやいや、変なことしないって。もしも被害にあったらって話。俺ら4人が一致団結すれば怖いものなし!ってこと。」
「ふーん、そう。」
「そうそう。」
「まあ、でも危ないことには変わりないし一応、用心はしなさいよ。」
「おっ、穂野香ちゃん俺のこと心配してくれんの?やっさしー!」
「当たり前でしょ。私たちは親友なんだから。」
「そ、そうか。うん、そうだな。」
「?どうしたの?」
「な、なんでもないぞ!」
「そう?顔赤いけど?」
「なんでもないって!」
ちなみに海斗は正面から友達とか親友とか言われるのに弱い。言われると照れて顔を赤くする。意外とシャイな面もあるのだが穂野香はそれに気づいていない。穂野香は鈍感なのだ。
「そ、それじゃ、もうそろそろ昼休みも終わりそうだし、教室戻るわ。」
「そうね、そろそろ授業の準備する時間だわ。」
「じゃーな。また明日。」
「うん。また明日。」
「ええ、また明日。」
「ふぁー、眠い。」
「お前は、相変わらずだな。」
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日が暮れかかる時間になると授業終了のチャイムが鳴る。ある者は部活へ行き、ある者は友人と遊びに行き、ある者は家へと帰る。僕はこれから特に予定もないからそのまま家に帰るつもりだ。
「はー、やっと帰れる。」
「お疲れ様。」
「穂野香、お疲れー。」
「じゃあ、私部活行って来るね。」
「行ってらっしゃい。」
僕は、帰宅部だけど穂野香は柔道部に所属しているから帰りはバラバラなんだよね。ちなみに海斗は野球部、亮は剣道部だ。・・・なんでみんな部活やってるのかわからない。3人とも卒業後は就職だって言っていたけど部活やる余裕があるのかな。本当に凄いと思う。
まあ、とりあえず帰ろう。
そろそろデスゲームが始まる予感!?