死者が最後に見ていたもの
どさっ
その鈍い音がする方に人々は振り向き一斉に悲鳴をあげた。
「きゃー!」
「おい!誰か救急車呼べ!」と、その鈍い音のする方に、少女が血塗れになり横たわっている。どうやら、あのビルの屋上から飛び降り自殺をはかったようだ。そこに一人の女が
、人混みをかき分け少女の遺体の方へ歩き出した
「じゃまだ。どけ」女は呟くように無表情に少女の遺体の側にしゃがみ込み少女の見開いた眼差しに優しく手を添えてめをつぶった。
その光景は、少女の遺体を取り囲む人達にとっては異様でしかなかった。その光景をスマホを使って写真を撮るもの、口を押さえ気持ち悪そうに見続けるもの…現状を知り合いに電話で話すものと様々な行動を取る中で、その女の行動は異様でしかなかった
更に目を引いたのは、女の風貌であった。オーバーオールに三つ編み。片手にはアニメショップの紙袋。この現場とは不釣り合いの女はブツブツと
「そうか。悔しかったよなぁ」と呟いた後、人だかりをグルっと見渡し、スクっと立ち上がり、一人の少女の目の前に立ち
「おい。おまえ…。」と強い口調で少女に言った
「は?なんなんですか?急に」と少女は驚いた様子で答えた。三つ編みの女は続けて
「おまえだよな?この子をここまで追い込んだ奴は?」
「何を急に?私、こんな子…見た事もないし。」と言うと、その少女の後方から2、3人の男女が現れ
「何言い掛かり言うとんねん!」と、三つ編みの女を睨みつけいった。すると三つ編みの女は
「この子の最後に見たものに、あんた達がこの子を屋上の端まで追い込んで逃げ場を奪って飛び降りをさせたんだろ?この子は、もう死んでるから…死人に口無しというけど、目は口ほどに真実を語るんだよ!」と言い放った
少し驚いた様子で
「う。嘘よ。こんなの絶対嘘に決まってる」声は少し震えていた。
三つ編みの女は、その少女の瞳を覗き込むように、もう一度言った。
「おまえだろ?」すると少女は首を横に振り、手で口を塞いだ。三つ編みの女は
「はい。はい。あんたがいくら言葉で嘘をつこうとしても身体は正直に真実を教えてくれる。図星をつかれた時の瞳孔の開き、あんたが首を横に振る前に見せた一瞬の頷き、そんで…口を塞ぐのは真実を話そうとする自身への自制なんだよ」と、さらに追い込んだ
少女はキレだした
「仮にだとして…あんたに関係ないじゃん。」とすごみだし、まわりの仲間も三つ編み女を威嚇した
「あー。そうなんだ。人ってね、真実を追及されるとね。身体がこわばり…威嚇するんだよ。まさに、あんた達の行動そのものね…と、後一つあるんだけどね。」と笑を含めて答えた。すると、その少女の仲間の一人が
「だるっ。こんな女相手にしてんの面倒やわ。帰ろっ帰ろっ。」と現場を後しようとした時、三つ編み女は立ち去ろうとする少女達を指差し
「それだよ。それ。固まる。威嚇する。最後の三つ目は逃げるんだよ」と大声で言うと、少女はその場にへたり込み
「だって…あの子が約束を守らないから…。でも、死なせようなんて思わなかった。」と泣きながら答えた。同時に警察が到着した。少女達はその場で補導され、その騒動に紛れて三つ編み女は人混みに紛れて立ち去ろうとした時、
ガシャッと、三つ編み女の右手に手錠が掛かった。その方向を見ると初老の男が、三つ編み女を見て、ニカッと笑いながら
「はい。そこまで。捕まえた。」と反対側の手錠を自分の左手にかけた