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罪深い男の想像話  作者: 病み谷/好きな言葉は『贖罪』
《第一章》 怒る彼は全てを殺し尽くす
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「やぁ、快斗君。元気にしてたかい?」

「んあ?………なんでいるんだよ。」


宴の夜の後、全員が酒を飲みすぎて撃沈し、その後唯一起きていた快斗と高谷とヒバリで全ての役人や兵士達を寮やへやに運び込み、全身疲労でぐっすり眠ったのだった。


そんな時、快斗の夢の中には、


「魔神、エレメロ様ご登場ってね。」

「鬱陶しい野郎だな。」


亜麻色の髪をサラッと払い、エレメロは慣れていないキメ顔をしようとして不気味な笑みを作る。


「夢の中にまで割り込んで何だってんだよ。」

「特に何も無いさ。ただ、君の顔を見たくなったんだよ。」

「お前にゃウィンクは似合わねぇな。」


顎にピースを当ててかがみ、可愛げにウィンクをするエレメロを引き気味に眺め、快斗は頬を掻くばかり。


「まぁ、冗談だよ。私の世界一面白いネタに笑ってくれなかったのは残念だが、目的は他さ。」


エレメロは来ているドレスと乱れた髪を戻し、


「改めて、1人目の邪神因子討伐おめでとう。」

「討ったのは俺じゃねぇんだけど。」

「知っているよ。だから今、高谷君も同じような夢を見ているはずさ。」

「あいつもこんな図々しい奴が夢に入ってきて唸ってるよきっと。」

「まぁ、そんなことはさておき。」

「ん。」


エレメロは急に真剣な眼差しを快斗に向けて、


「私の気にしすぎかもしれないが、ココ最近、聖神と竜神の動きが怪しい。少し気をつけるべきだよ快斗君。」

「その二柱は見学だったんじゃねぇのかよ

。」

「確信は持てないさ。ただ、私の予想と言ったところだが、私はこう見えて『未来予知』も可能でね。そんな未来が見えたと言うだけさ。」

「未来見えたんなら確実じゃね。」

「正解確率は30%と言ったところさ。そんなに心配することじゃない。」


手をフラフラと振って、エレメロは微笑む。快斗は顎に手を当てて考えて、


「だったら、なんで俺にこのことを言いに来たんだよ?」

「あぁ。それはただ、君にこの事を知っておいて欲しかっただけだよ。」

「あ?」


エレメロは快斗に近づき、顎をくいと上げると、


「君には生きていてくれないと困るのさ。それに、君は悪魔だ。何があるかわかったもんじゃない。」

「どういう意味だよ。」

「要約すると、心配してあげてるんだよ。君のことを。」

「余計な世話だよ。」


エレメロを振り払って、快斗は触れられた顎を拭く。


「心配してくれる美女になんて反応をするのさ。」

「図々しいな!!」

「まぁ、そんなことはどうでもいいんだけどね。」


エレメロはフッと微笑んで、


「まぁ頑張ることだね。私には君の運命を変えてあげられるほどの力はない。精々、人の心に闇を生み出すぐらいしか出来ないからね。」

「エレメロって案外弱いのか?」

「私が直接降り立てば、星なんて消すのは簡単だよ。」

「恐ろしい野郎だな。」

「さて、そろそろ時間だ。」


エレメロがそう言うと、2人がいる空間がゆがみ始め、世界に亀裂が入っていく。


「また会いに来るよ。」

「もう来んなよ。」

「そう言って、本当は喜んでるのが私には分かるんだよ?」

「喜んでねぇっての。」


徐々にエレメロの姿が薄れていく。快斗は忌々しげにエレメロを眺めて、


「んま、因子を倒す時ぐらいなら、来てくれていいけどな。」

「ツンデレ、と言うやつかな?」

「知ったこっちゃねぇよ。早く出てけ。」

「ふ。分かったよ。」


エレメロは快斗の言葉に笑うと、手を振りながらゆっくりと消えていった。空間が裂け、快斗も体に意識を引き戻されていく。


「…………ふ。」


快斗は無意識に、独りでにそんな空間の中で笑っていたのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「さて、こりゃどうしたもんかな。」


皿やら食べ物やら飲み物やらが散らかりまくった広場を見て、快斗は盛大にため息をつく。


「宴の後は面倒な掃除が付き物だ。一種の生理現象とも言っていい。」

「そんなもんかね。」


後ろから現れたヒバリの言葉に共感して、快斗は『分身』を発動。さっさと片付けを始める。


「手際がいいな。」

「こう見えても潔癖症でな。片付けとか整理とかは得意なんだよ。」


散らかったグラスや皿を魔力で引き上げ、起きてる食材は焼き払う。机や椅子は全て重ねて隅に置き、噴水に浮いている食べ物を拾う。


「これは、私は必要なさそうだな。」

「いや、風で落ちた食べ物寄せてくれや。集まったら全部燃やす。」

「うむ。了解した。」


ヒバリが風を発生させ、塵や食べ物を寄せ集める。出来上がっていくゴミの山に炎を打ち込み、全て消し焼いていく。


「んー。朝から掃除?手伝うよ。」

「ふわぁ………おはよう。片付け?手伝いまぁす……」

「んお。はよリアン。原野。原野はもうちょい寝てろ。バランス崩して倒れて頭打って死にかねん。」

「そんなに貧弱じゃないよ!!」

「目が覚めたね。」


賑やかな声を上げながら、リアンと原野も合流する。


続いてルーネスにエリメア、ベリランダなどの面子が揃い、全員で1時間ほどで、広場を元の状態に戻した。


「うし。んじゃ、取り敢えずは朝飯食いに行くか。」

「そうだね。」


快斗は綺麗になった広場を見て満足すると、箒を背負って城に戻って行く。と、1つの疑問が浮かんだ。


「あれ高谷は?今日はまだ見てねぇが。」

「え。あぁ、えっとね……その……」

「?」


快斗が振り返って原野に聞くと、原野はバツが悪そうな表情になって視線を逸らす。


「なんだよ。昨夜思いっきり夜這いかけたせいでまだ寝てるとか?」

「かけないよ!!」

「そんな勇気ないもんな。」

「うぅ……否定できない……!!」

「んで?実際は?」

「…………。」


本題に戻ると、直ぐに原野はまた視線を逸らした。


「?なんだってんだよ。リアン。お前知らない?」

「………まぁ、別に言っても大丈夫だよね。」


リアンは表情を硬くして、


「高谷君は、メサイア幹部『二番』ルージュ・サンネルフの罪を受け持って、今は処刑されているよ。」

「…………はぁ?」


予想外すぎる答えに、快斗は空いた口が塞がらなかった。

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