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罪深い男の想像話  作者: 病み谷/好きな言葉は『贖罪』
《第一章》 怒る彼は全てを殺し尽くす
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名付けセンス皆無

「キュ、キュイ〜。」

「こんの泥棒ウサギめ。」


快斗はあの後、白ウサギから金銭袋を取り返し、殺そうとしたのだが、最近、妙に殺すことに執着しているなと思い、たまには癒やされる事も大事だろうと考え、ずっと、白ウサギをモフっているのだ。


モフると言っても、その手付きはは頭の骨組みをグリグリとする罰ゲームと同じなので、白ウサギにとっては辛い状況なのである。


「さてさて、お前はなんで俺の金銭袋をいきなり奪って行ったんだ?」

「キュイ。キュイキュイキュイ。キュキュキュイ。キューキュッキュイ。キュキュキュッキュイキュ。キュイキュイ。」

「…………やべ。ウサギ語って俺には理解できん。クソ。せめてポケ○ークがあれば‼」


片手で頭を抑えながら、地面を叩く快斗。地味に地面が抉れていく。


「キュ、キュイ?」

「まぁいいや。普通ならここで殺してるけど〜、今は地味に腹膨れてるし、最近短気になっている自分を治す意味でお前は見逃そう。ほら、どっかいけ白ウサギ。」

「キュイ⁉」


ポイと放り投げられ、石に頭をぶつけ、撃沈するウサギ。赤い瞳が白目になっている。


「さ〜て、行くか。」

「キュ、キュイ‼キュイキュイ‼」

「んあ?」


そう言って快斗が行こうとすると、白ウサギが快斗の肩にひょこっと乗って、そのまま動かなくなった。「邪魔だ」と快斗が退かそうとするが、白ウサギは頑なに離れない。


「なんなんだよ……‼」

「キュイ‼」


白ウサギは、じっと快斗の顔を見つめ、大声で鳴く。そこには、絶対に離れないという、何故か強い意志が籠もっていた。


「ハァ…俺に付いてきて、飯のおこぼれでももらう気か?」

「キュイキュイ‼」


大きく横に首を降る白ウサギ。それを見て、快斗は考える。


「…………俺の飯を取らないなら、いい。自分で取ってこいよ。飯は。言っとくがお前は俺が邪魔だと感じたらすぐに殺して喰うからな。」

「キュイ‼」


それでも良いというふうに、大声で頷く白ウサギ。


「足手まといになんなよ。白ウサギ。」

「キュイ‼キュイキュイキュイ‼」

「んあ?」


白ウサギが大きく頭を横に振り始めた。全くなんなんだと、快斗は呆れて、再度、白ウサギに向き合い、聞く。


「何が不満なんだ?」

「キュイ‼」

「…………あ〜分かんねぇな。」

「キュイ‼」

「うるせぇな白ウサギ。」

「キュキュイ‼」

「…………名前か?俺に名前をつけろというのか?」

「キュイ‼」


やっとわかったかと言う風に、少し呆れ気味に白ウサギが頷く。意外に本気で名前を決めて欲しいそうだ。そんなもの決めてどうするのかと快斗は思いながら、考えてみる。


脳内で引っ張り出すのは、英単語。少ししか合ってない中での白ウサギの印象を英語に変えて、くっつければいいと考えたのだ。


快斗からした白ウサギの印象は、速い、白い、ウサギというこの3つだ。ウサギというのを英語にしてもダサいので没にする快斗。


なら、速いと白いである。スピードとホワイト。スピード、ホワイト、スピード、ホワイト……………………。


「…………もう鳴き声のキューでよくね?いや、流石にそれは駄目か。」

「キュイ?」


間違えて違う言い方をしてしまった時に、白ウサギの目が輝いた。快斗がまさか…という顔で、白ウサギに尋ねる。


「…………キューさ〜ん?」

「キューイ‼」

「あぁ……。よくできました…………。」


構造上、うまく上がらない前足を必死に上げて、幼稚園でのやり取りを成立させる白ウサギ。これはもう駄目だと快斗は諦めた。


こうして、快斗の永遠の相棒になりかねない魔物、キューが生まれた。名付けのセンスが皆無であると昔いわれたのを思い出しながら、快斗は、頭を抱えるのだった。

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