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罪深い男の想像話  作者: 病み谷/好きな言葉は『贖罪』
《第一章》 怒る彼は全てを殺し尽くす
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サリエル&ルシファー参戦

現在、高谷とネロテスラは互いにぶつかり合いながら、徐々に上空へと移動していた。


「ハァ………ハァ………。」

「ハァ……ハハ……ハハハ‼やるじゃ無い‼魔神因子‼見直したわ‼」

「く………あぐ………」


体中の傷の痛みに疼きながらも、一瞬で塞がった傷口は、まだ戦えと高谷に語りかけているようだった。


「うわ……」


下からは何やら衝撃波が吹き荒れ、また新たな邪悪な気配を感じ、高谷は快斗の身を心配する。


「何してるのよ‼下の魔神因子を心配してるの?あの因子はあなたよりも強いから大丈夫よ‼それよりも、私との戦いに集中して‼」 

「………強いから心配しないという理屈はおかしい気がするけど……。」


本気で心配する高谷を他所に、ネロテスラは絶えず刃を振るい、高谷はそれを受けながらも、ネロテスラの体にダメージを負わせていく。


「なんで心配してるの?あのコはあなたよりも強いじゃない‼」

「だから、強いから心配しないって言うのはおかしいって……」

「何言ってるの‼強ければ勝てる‼勝てたら死なない‼心配するところなんて無いじゃない‼」

「………………。」

「もっと本気で来て‼もっと全力で襲って‼私と本気で向き合って‼」


邪神因子は両手を広げて、満面の笑みで語りかける。高谷はじっとネロテスラの目を睨んで腕を組んでいる。


「なんでそんなに心配になるの?なんで私を見てくれないの?」

「…………。」

「そんな怖い顔で睨まないで‼私はあなたが気に入ったから結構好きなのよ?いっそ、あなたも私と同じ邪神の配下に……」

「はぁ……もういいや。面倒くさい。」

「…………へ?」


ため息混じりに投げやり言葉を言い放った高谷は、邪神因子の視界から消え去る。どこに行ったのかと邪神因子が探していると、いきなり左腕が痛みだした。何事かと、自身の左腕を見ると、そこには左腕はなかった。


「ッ⁉」


壮絶な痛みに悲鳴を挙げないのは流石といったところか。だが、次に続く音に、邪神因子も血の気が引いていった。


バリバリと、硬いものが潰れていく音。それに混じって、柔らかいものが拗じられるような不快音。


邪神因子が恐る恐る音のする方を見ると、


「は………。」


そこには『血獣化』した高谷が、ネロテスラの左腕を頬張っていた。だが、高谷が左腕を頬張っているのは口であって口ではない。


今は高谷は両腕が肥大化しており、真っ赤な甲羅を纏っており、目を真っ赤。血涙が流れ、口には真っ赤なマスクのような物で塞がれている。


なら、どこで喰っているのか。それは裸になった上半身、胸からへその辺りまで大きく縦に裂けた大口だ。


「は、ハハ………」


異常すぎる体の作りに、邪神因子は乾いた笑いした出てこない。


高谷は、左腕を全て喰い終わると、ゆっくりと邪神因子に向き直り、その大口を動かして声を発する。


「それじゃあ、本気でやろうか。」


ネロテスラの血で濡れた体を撫でて、高谷が笑いながら大口を開いて飛びかかった。


「ハハハ‼いいわいいわ‼本気でらっしゃい‼相手して上げるから‼」

「それもすぐ終わるけどね。」


顔を大きく歪めて、邪神因子は醜く笑う。高谷も大口を開いて笑い、醜いもの同士、激しくぶつかり合ったのだった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「快斗様‼快斗様‼」

「く………まだ悪魔は起きないのか‼」


暴風が吹き荒れる中、既に半壊したメサイア本部のなかで、『剣聖』ヒバリと『拳聖』ライトは、『月の魔獣』と戦っていた。


力量は、ヒバリとライトを合わせて互角。だが『月の魔獣』には『反撃カウンター』という能力がある故、力比べでは負けてしまう。


「『剣聖』‼これはどういう状態だ‼」

「答えろぉ‼」

「む⁉なにか言ったのか?すまん‼全く聞こえない‼」


やっと国の精鋭騎士団が追いついてきたが、『月の魔獣』の前に成す術なく吹き飛ばされていく。


「ぐ……早く起きてくれ悪魔‼」


そのメサイアの戦闘地の端で、ルーネスが気絶した快斗に回復薬をかけながら呼びかけていた。


「心音が……快斗様‼起きてください‼」


体中についていた擦り傷や、割れた頭蓋は既に回復薬によって完治しているが、中々意識が戻らない。


「早く起きてください快斗様。ヒバリ様とライト様が大変です。」


ルーネスは、未だ目を瞑ったままの快斗を抱きしめて願う。


「どうか、救いを……。」


それは、ルーネスの切実な願い。それが誰に届くでもなく、ただその場に滞る。


「……『緑結晶の円状型空間クリスタルドーム』……。」


ルーネスは静かに快斗を地面に寝かせ、緑結晶で壁を作って守る。背負っていたロンギヌスを引き抜き、


「しばらくここで。私はお二人の加勢に向かいます。申し訳ありませんが、快斗様。どうか目覚めてください。」


ルーネスは快斗の髪を撫でたあと、『月の魔獣』に立ち向かうライトとヒバリに加勢しようとしたとき、


「キュイ‼」

「………キュー様。」


快斗のフードから、キューがピョンと飛び出した。そして、キューはルーネスの胸に飛び込んで可愛らしく鳴いた。


「キュー様。危ないので、快斗様と一緒に居てください。」

「キュイ‼キュイキュイキュイ‼」

「……キュー様?」


キューはルーネスの注意を無視して、ルーネスの頭の上に飛び乗って魔力を高めていく。ルーネスが不思議がっていると、キューがカッと目を見開いて、


「キューーイーー‼」


大きく叫ぶと同時に、空間に丸い何かの出口を出現させる。するとそこから、


「わぁっ⁉」

「ふぅ……」


2人の少女が盛大に落ちてきた。


「ッ⁉原野様⁉」

「ハァ……ハァ……はぇ?ルーネスさん?」


そのうちルーネスの足元に盛大に転がってきた少女、原野を驚いた様子で見下ろす。原野は汗をかきながら真上を見上げて、それがルーネスだと理解するのに少し時間がかかった。


「わぁ⁉ルーネスさん⁉なんでそんなに傷だらけなの⁉て、えぇ⁉なにあれ⁉え⁉あの金髪の子誰⁉あの白いの何⁉あの綺麗な人誰⁉えぇ⁉」

「お、落ち着いてください‼原野様‼ちゃんと息を吸ってください‼」


息継ぎなしに疑問をすべて吐き出す原野を、ルーネスが背中を擦って落ち向かせる。そうしながらも、ルーネスは新たに現れた少女をじっと見つめ、

 

「原野様。この方は?」

「げほ……げほ……ハァ……あぁえっと、この人は……」

「いいよ。私が自分で自己紹介するから。」


少女は胸に手を当ててにっこり微笑んで、


「私はサリエル。月に封印されていた堕天使です。『月の魔獣』を再封印するため、原野ちゃんに封印を解いてもらいました。」

「………はい?」


原野を宥めていたルーネスが、混乱し始める。今度は逆に原野がルーネスさんをなだめ始めた。


サリエルは頬を掻いて笑うと、手を握ったり開いたりを繰り返して、


「あまり使えないみたいね。早々に方をつけるよ。」

「さ、サリエル?」

「2人はここで、快斗君を守って。『月の魔獣』は、この世界の人達じゃ倒せない。でも、封印できる人もいない。だから、封印できる私が行かなきゃ。」


サリエルは笑みを浮かべて少し透ける体をうんと伸ばして、背中の翼をはためかせて上空へと浮かんでいった。


「む⁉なんだこの魔力反応は‼」

「す、凄い神聖魔力……ルーネスさんの槍よりも凄い‼」


サリエルの魔力に驚いてエレスト姉弟が目を見開いてサリエルを見上げる。


「ギギギ‼」


『月の魔獣』も凄まじい神聖魔力に反応して真上を見上げた。瞬間、その顔に透けた金色の鎖が叩きつけられた。『月の魔獣』が地面を抉って埋まる。


「神々に憎悪を抱く醜い魔獣よ。罪なき生物に厄災を齎すと判断し、今ここで封印します。『神鎖・天の鎖』。」


凝縮された神聖魔力を纏った鎖を帯のように操って、サリエルは『月の魔獣』を弾き飛ばす。跳ね返ってくる打撃は、華奢な手から放たれる魔力派によって打ち消される。


「す、凄い………。」

「な、何なんだ……あの少女は……。」

 

皆が唖然とする中、ヒバリとルーネスは我に返って、


「加勢する‼」

「はっ……うん‼姉さん‼」

「瓦礫から快斗様を‼」

「え、あ、うん‼」


ヒバリとライトは『月の魔獣』へ。ルーネスと原野は快斗へと駆け寄る。


「サリエル‼あの伝説上の天使か‼分かるぞ‼この凄まじい神聖魔力‼そして、私にかけられた呪いが効かない‼」


ヒバリが風で浮き上がってサリエルを間近で見つめる。詰め寄り方が独特で、サリエルは思わず顔を隠してしまう。


「呪い?あぁそのピアス……。」

「あぁ。耳が聞こえなくなる呪いを掛けられた。あなたと悪魔なら声は聞こえるが、それ以外は聞こえん。」

「そう………。」


少し心配そうな表情になるサリエルだったが、ヒバリは気にした様子もなく、


「気にするな。それよりも、『月の魔獣』だ。」

「ええ。でもあの程度の力しか取り戻せていないのなら、私だけでも十分封印できる。」

「真実か?」

「私は嘘は嫌いよ。間違えることはしょっちゅうあるけど。『鎖突』」


話の途中に飛びかかってきた『月の魔獣』に、サリエルが真上から先端が刃になっている鎖をいくつか出現。そのまま『月の魔獣』を地面まで押さえつけた。


「準備完了までは10分はかかるわ。それまであれの動きを止める必要があるわ。」

「なら、私がそれを。」

「ん。念には念を。お願いできる?」

「任せろ。」


ヒバリは地面に降り立ち、


「ライト、聞いていたか。奴の動きを封じる。」

「分かった。姉さんと抱き合うみたいに拘束すればいいんだね‼」

「聞こえなかったが、理解したということは分かった。行くぞ‼」

「はい‼」


ヒバリの掛け声に合わせて、ライトが『月の魔獣』に飛び超える。ヒバリとライトで『月の魔獣』を挟み込むように配置につく。


「ギィイアア‼‼」


『月の魔獣』が四つん這いになって、刃のように鋭く進化した2本の腕を左右に突き出す。


「『爛々打打』‼」

「『瞬く鎌鼬』‼」


が、それを2人の超高速連撃で押さえ込み、逆に押し返す。跳ね返る攻撃が倍々に増えていくが、なんとか力で捩じ伏せる。


「AAAAAAAAAAAAAAA‼‼」

「ハァアアアアアアア‼‼‼」


雄叫びをあげ、ギシギシと音を立てる両肩の痛みを無視して、2人は連撃を叩き込み続ける。


「ギギ……ギギィ‼‼」


削れ削れ、痛め痛め、削がれ削がれ。『月の魔獣』の腕に伝わる痛みが頂点に達し、


「ギィイアア‼‼」


悲鳴を上げて腕を引っ込めた。瞬間、ヒバリとライトは同時に地を蹴り、凄まじい轟音を響かせながら、ライトの拳とヒバリの風龍剣で『月の魔獣』を挟み込んだ。


「ギイィィィイイイ‼‼」

「く………」

「ぐ………ぅ…。」


今まで与えた攻撃の跳ね返りが襲い掛かり、それでできた隙で、『月の魔獣』が逃げ出そうとするが、


「駄目‼『怪手乱殺』‼」


見兼ねた原野が『死者の怨念』を操り、『月の魔獣』を更に抑え込む。


「いいわ‼あと7分‼」

「ええい‼」

「ハァアア‼」

「くぅうう‼」


上ではサリエルが封印の準備を勧めており、そのタイムリミットまで、3人は全力で『月の魔獣』を抑える。


「ギィア‼」

「なっ⁉」

「くぅ……」


が、『月の魔獣』は鋭く進化した2本の腕を開いてヒバリとライトを突き飛ばす。その勢いを殺すことができず、2人は思いっきり壁を突き破って消えていく。抑えているのは、原野一人になった。


「あれ?」


原野ははっきりと見えた。押し寄せる『死者の怨念』を押し返していく『月の魔獣』から溢れる怨み妬みの数々。何処からか出現した黒いものが『月の魔獣』の力を強めていく。


それに対抗するように、自然と『死者の怨念』も強さを増していく。


地面から生え伸びる腕が、肩、首、腕、腰、足、頭を掴んで引きずり込んでいく。出来上がっていくのは、禍々しい魔力を放つ大きな鎖で閉じられた扉である。


その隙間から腕が伸び、その先にある憎悪と怨念の巣に餌を求めている。


「ォォォォ………‼」


掴む腕の力が強まり、唸り声が『月の魔獣』の精神を蝕み、絶え間なく溢れ出る悲しみがその力を弱めていく。そして、


「ォォォォオオオ…………‼」

「ギィ⁉」


悲しみが1つとなって生まれたのは髪の長い女性。優しく『月の魔獣』の首に手を回し、その薄い唇を首筋にそっと付けた。瞬間、『月の魔獣』の魂が溶けだす。


だが、その強靭で巨大な魂はそう簡単には溶けない。


「はや……くぅ………」

「もう‼意外と抵抗が強いなぁ‼」


抵抗するため、急に強くなった『月の魔獣』を封印する鎖の制作に手間が掛かり、原野の負担が増えていく。


「うぅ……ううぅぅぅうううぅうう‼‼」


『死者の怨念』を操れば操るほど、その波に流されかける意識を必死に保ちながら、原野は全力で『月の魔獣』を抑え続ける。


「あと、2分‼耐えて‼原野ちゃん‼ハァ……何でこんなに急に強く……⁉」


膨れ上がる力がサリエルを瞠目させる。『月の魔獣』の体が変色し、バキバキと音をたてて、骨格が歪んでいく。


「ギィ…ギギ……ガァアアアアア‼‼」

「………苦しんでいる?」


と、力を取り戻しつつある『月の魔獣』が頭を抑えて地面に叩きつけ始める。体中が痛むようで、転がりまわっている。


「ガァアアアアア‼‼」


尾が収縮し、代わりに体全体が肥大化していく。背中の2本の腕も消えていき、その代わりに禍々しい魔力を放つ角が4本ほど生え伸びる。


「ギィギイ……アァアアァギィイイイイイ‼‼」

「ッ⁉」


増した魔力が暴風の如く吹き荒れ、苦痛の叫び声が流星の如く降り注ぐ。


「うぅ………ああああああああ‼‼」


途端、原野の頭に凄まじい頭痛が走り、『死者の怨念』の操作力は手放される。


『月の魔獣』は腕を全て振り払い、怒号にも近い叫び声を上げて、原野を狙って腕を突き出す。


「『流星』‼」

「ガッ⁉」


飛びかかった『月の魔獣』に、サリエルが魔力を凝縮させた『流星』を何発も叩き込む。


「うう………なんで……こんな……‼」


いきなり強くなったのか。そう叫ぶ前に、サリエルの視界には1つの拳が一瞬写った。何かと瞠目していると、強い衝撃が顔に。鼻血を吹き出しながらサリエルが地面に激突する。


「いったい‼もう‼何なのよ‼」


苛立ち全開で立ち上がると、『月の魔獣』は二足歩行となり、肥大化が止まらない。


「ッ⁉完全体になっちゃう‼」


サリエルは『天の鎖』を出現させ、うねるそれを『月の魔獣』に叩きつけた。少なからず、『月の魔獣』にはダメージが入る。が、跳ね返ってきた攻撃を打ち消そうとして、


「あうっ⁉」


予想以上の力に、サリエルは吹き飛ばされた。


「な、なんで……もしかして、跳ね返りの力が上がってるの……?」


そんな予想をしている間に、『月の魔獣』は導かれるように気絶した快斗の方へと向かって行く。


「ッ‼」


その前にルーネスが立ちはだかり、ロンギヌスを構えて魔力を高める。


「快斗様には触れさせません。その汚れた指1本でも‼」


決死の覚悟で、ルーネスは『月の魔獣』に飛びかかった。瞬間、


「待て。ルーネスとやら。」

「ッ⁉」


音速以上の速度で突き出されたロンギヌスの矛先を、一瞬で現れた誰かが指でつまんで止めていた。ゆっくり振り返って笑ったその人物は、


「快斗様⁉」

「げほ……げほ……あぁ、済まねえルーネスさん。ちっと今色々あって………コヤツの相手は俺に任せろ。」


いつもの快斗から誰かへと気配と口調が交互に変わり、快斗は頭を抑えながら『月の魔獣』に向き直る。『月の魔獣』は、さっきの癇癪が嘘のように静かに佇んでいる。


快斗は、口元を歪めて、


「お前に任せるぜ………了解だ。」


もう1人の自分に意識を手渡す。快斗の左目が爛々と輝いて、気配は快斗の面影が全くない。


「久しいなニグラネス。魔獣になったと聞いてはいたが、よもやそこまで醜くなっているとは心外よ。俺にとってはどうでもいい事だが。」


そう言って、快斗の体を使う誰かは『月の魔獣』、ニグラネスの心臓部に手を当てて目を閉じる。ルーネスが咄嗟に止めようとするが、ニグラネスから攻撃の気配を感じない。


「やはりなぁ。」  


何かは、翼を形成して浮き上がり、手のひらに魔力を集めて獄炎を作り出す。


「神は、やはりクズしかいないようだな。」


その獄炎を掲げて、空に向かって放つ。それは空中で止まり、徐々に温度と威力を高めていく。


「神に背きし我が友よ。廃れ、汚れ、衰弱しつつあるその魂を。せめて最後は俺の手で喰ってやろう。」


そう言って、何かはニヤリと笑うと草薙剣を呼び出して、刃を下向きに構えた。


「我が剣、草薙剣をもって終焉としよう。…………ここまで、よく頑張った。」


そう言って、何かは…………自身の、快斗の心臓を草薙剣で突き刺した。


「ぐ……ふ……」

「快斗様‼」

「ッ……快斗君⁉」


倒れ伏す原野とルーネスが快斗の名を呼ぶ。快斗は、大量の血を吐いてフラフラと揺れたがすぐに止まり、その血濡れた顔でニヤリと笑った。


「俺に心臓を捧げよう。………降りてこい‼

ルシファー‼‼」


と、先程作り出した獄炎が反応し、快斗を包んで燃えていく。


「ッ………快斗、様?」

「え……え……」

「さて、ニグラネス。久々に本気でやり合おうではないか。………手加減はなしだぜ。この命尽きるまで、相手してやらァ‼」

「ギギィアアア‼‼」


獄炎が晴れると、現れたのは快斗だ。だが、服装はフード付きの灰色の服とジーンズではなく、黒いコートのようなものを着た、少し大人びたような服装だった。


そして、感じられる魔力はそこしれない。通常の快斗の何倍かも考えられない。


「全力で行く。ニグラネス。お前も全力を出してぇなら出しやがれ。」

「……ギィア‼」  


高らかに宣言した快斗に、ニグラネスが飛びかかる。


その一瞬、兵士の中の1人が青ざめた表情で小さく呟いた。


「獄値……5380……⁉」

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