ライト覚醒
一日遅れましたね。すみません。
思ったんですけど、毎日投稿しなくてもいいですかね?
「こっちです‼速やかに避難お願いしまーす‼」
「押さないで‼ゆっくりと歩いて行けばいいですから‼」
メサイア本部に突っ込んだ快斗が拭き上げた爆風と爆音のお陰で、街は今大混乱へと陥っていた。
が、その自体も予想していたギドラは、街のあちこちにメサイア隊員を配置。避難誘導も順調に進んでいた。
「ちょっと大げさに感じるなぁ。」
「それな。あいつ1人来ただけでこんなに騒がしくなるもんなのか?」
やる気なしに呟くのは、貴族外の近くの住宅街に配置された2人、丹野と長谷部だ。ここらの住民の避難は既に済んでおり、今は逃げ遅れた住民を探している最中である。
「でもさ。あんだけ見回ったら残りの住民なんていないだろ。」
「ね。それこそ隠れる気で隠れないと……あれは?」
住宅地の真ん中、公園のような広場の木の裏に、1つの気配を感じた。
「誰だ?」
丹野が不思議がって、白身に命じて木の裏を探らせる。すると、
「ひっ……うぅ……。」
目を擦りながら、大量の涙を流している少女が現れた。丹野と長谷部は顔を見合わせて、少女と同じ高さにかがんで聞いてみる。
「父さんと母さんは?」
「うぅ……わ、かんない……。何処かに……行っちゃった……。」
「これは迷子だな。」
「まぁ……取り敢えず、避難所まで連れて行こう」
2人は少女の世話を白身と黒身にまかせて、快斗の愚痴を吐きながら歩いていく。少女は白身に肩車され、それを黒身が落ちないように支える。
が、黒身の腕は刃であるため、上手く支えることができない。
「すごいすごーい‼手が6個あるの?手が包丁なの?すごーい‼」
少女は2つの人形に怖がる様子もなく、それどころから楽しみ始めている。と、白身と黒身の中に何かが沸き立ったような感覚がした。
だが、2つの人形は、そんなことを忘れて、主人の命令に従って、せっせと少女を運ぶのだった。
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「ふむ。そろそろ………。」
快斗達が飛び出していった空間の端で、静かに集中している少年。とは言っても中身は違う者なのだが。
「アイツら……俺を守れといっただろうに。」
悪態をつくルシファー。声音と裏腹に、その集中力は並のものではなく、王宮魔術師が10人いたとしても数日かかる技を、たった数十分で完成させてしまった。
「ふむ。では……そろそろお前に意識を受け渡すか………ん?」
「あら。こんなとこにいたのね♡なかなか見つからないから苦労したじゃない。」
「………あ?」
ルシファーがライトに意識の主導権を渡そうとした瞬間、壊れた天井から1人の女性がゆっくりと降り立った。
「こんなところに1人で……大丈夫?魂くれたら、私が守ってあげる。」
「………絶対に嫌、だそうだ。」
ルシファーがライトと会話して、その答えをそのまま口に出す。女性が首を傾げて、直ぐに気が付いた。
「あなた……その体の持ち主じゃないわね。」
「ああ。違うぞ。俺はルシファー。魔神皇帝王だ。」
「ル、ルシファーって、あの伝説上の大悪魔じゃないの。そんな変なの名乗ってないで、本当の名前を名乗りなさい。」
「名乗ってるんだが。」
ルシファーの自己紹介を信じない女性は、体をくねらせて笑う。そんな女性を睨んで、ルシファーが口を開く。
「お前は……妖艶魔のようだな。」
「それがなにか?」
「……いや、誇り高き悪魔の真似事の下衆が、まだ生きていた事に驚いてな。」
「ッ‼あんた……ムカつくわね。ここで消してあげるわ。」
「やれるか?お前らのような雑種の衆、俺のような高貴な悪魔を傷つける事ができるか?」
妖艶魔がクリリナイフを振り上げて、ルシファーを斬り裂こうとするが、
「この身体は俺のものではない。故に、傷つけるわけにはいかない。悪いが死にはせんぞ。」
振るわれる刃は『刃界』まで至りかけるほど速い。が、
「うーむ。この身体はなかなかの物だ。全ての筋肉が鍛え上げられている。俺の体ほどではないが、並ではない速度が出るだろう。」
その言葉通り、ルシファーはライトの体を完璧に使いこなして刃を躱す。体に雷を纏い、雷の速さで妖艶魔の周りを走り回る。
「く……速すぎる……。」
「ふむ。見てみろ光の子よ。俺がお前の真の力を使いこなしてやる。」
ルシファーは妖艶魔から離れ、繋げた魔力を開放し、固有能力を覚醒させる。
途端、ライトの中から魔力が爆発的に膨れ上がり、世界に干渉して雷を起こし、体中を取り囲む。
「………んん?」
と、ルシファーは違和感を覚えた。体中を巡る魔力の通り道。その一番太い部分に突っかかりがあるのだ。
瞬時に探ると、その正体にルシファーは目を見開いた。そして、軽くフッと笑うと、
「うむ。ここからはお前の意思、自身の力で開放せよ。俺の出る幕はもうなくなったようだな。」
「あなた……何を?」
薄れゆくルシファーの気配に、妖艶魔が訝しんで聞く。ルシファーはライトの綺麗な顔を歪めて笑い、
「……お前の名は何だ。聞かせろ。」
「……ネロテスラよ。」
「ふむ。覚えておこう。」
ルシファーは壁際まで歩き、寄りかかって座ると、
「ではさらばだ。お前はこの体の主に負けないよう、精々奮闘するんだな。」
「その子は魂がほとんど無いのよ?そんな子に私が負けるはずないわ。それに、その固有能力は強力だけど、魂がないなら使いこなせないわ。」
「今に見ていろ。この体の主は、余裕でお前を超える。」
そう言って、ルシファーが外界からの関係を遮断。周りが見えなくなり、ライトの体ががくんと震えて数秒止まる。
そして、急にライトの体から太い稲妻が大量に出現し、ネロテスラに殺到した。
「ッ⁉」
が、やはり長年生きていた妖艶魔であるだけあって、瞬時に反応して、稲妻を斬り消した。だが、斬り裂いても斬り裂いても、稲妻はとどまることを知らず、むしろ威力と数が増えていく。
「く……『崩絶』‼」
ネロテスラを中心に魔力波が出現し、強制的に稲妻が掻き消されていく。
「ハァ……何なのよ……」
ネロテスラが肩で息をしながら、光の根源のライトを見ると、
「……あら?」
そこにライトの姿はなく、ただ、焦げた壁と床だけが見えていた。何処に行ったのかと首を回そうとした瞬間、
「『斬雷』」
「ッ⁉」
後ろから横凪に振るわれた雷を纏った手刀。光の速さで首に迫るそれは、『刃界』を通り抜け、ネロテスラのクリリナイフの防御をスレスレで追い抜き、首に近づいた。
「う………」
が、咄嗟に首を傾けたため、その手刀は首を掠めるにとどまる。だがかすりでもそれは雷を纏った物。僅かな切り傷の周りを焼き焦がしていく。
「速いですね。」
「く………あなた……その姿は……」
首元を抑え、ネロテスラが苦しげにライトを見上げて絶句する。
そこには、美しい1人の角の生えた少年が、笑顔で立っていた。
纏っている雷は青緑色。金色の髪は反り上がり、後ろの長い髪は三つ編みにされ、犬歯が鋭く伸びる。
そして、額には真っ赤な美しい角が生えていた。
「まさか、僕が鬼人だったなんて、と考えてますか?」
「ッ………あら。初対面の時はあんなに初々しい反応だったのに。」
「覚醒したお陰ですかね。何故だが人と喋るのが怖くないんです。」
いつになく爽快に笑って、ライトがネロテスラに話しかける。
その軽い立ち姿に反して、かかる魔力不可は凄まじく、ネロテスラは血の気が引いていく。
だが、魔力をクリリナイフに流し、ネロテスラは狂気的な笑みを浮かべる。
「ふふ。いいわ。私の封印していた能力も開放してあげる♡」
刃を舐め、ネロテスラはライトを卑しい目線で見つめる。その視線を睨み返して、ライトは魔力を高める。
「あまり時間はありませんね。すぐに終わらせます。」
「できるかしら?」
互いに鬼気をぶつけ合い、戦闘が始まった。