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罪深い男の想像話  作者: 病み谷/好きな言葉は『贖罪』
《第一章》 怒る彼は全てを殺し尽くす
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ルージュとルーネス

ライトがルシファーに取り憑かれたのと同時刻。


ルーネスは原野と共にメサイアの教会の中に入っていた。


「ねぇルーネスさん?高谷君達と合流しなくていいの?」

「………分かりません。ですが、快斗様方なら大丈夫なはずです。」

「そうかなぁ。」 

「原野様は心配症なのですよ。高谷様は『不死』なのですから、あなたより先に死ぬことなんてありません。」

「そうだよね………て、何その言い方夫婦みたい‼」


夫婦となった自身と高谷の事を思い浮かべ、原野が頬を赤く染める。


「ここに来たのは、私の意思です。原野様は高谷様方と合流しては?」

「え?でも、ルーネスさんは?」

「私は……」


にっこり笑って原野をルーネスが送り出そうとした瞬間、不意に背後から低い声が響いた。


「誰かと思えば……逃げ出した臆病者ではないか。」

「ッ………。」


振り向くとそこには、白装束を纏った老人と、銀色の槍を背負った女性が立っていた。


「だ、誰?」

「ふむ、悪魔に寄り付いた元メサイア隊員か。貴様がメサイアだった頃に、最高司令官の名を教わらなかったのか。」

「え……嘘……。」

「ここはメサイアの本部。俺がいても不自然な事はなかろう?」


老人、ギドラ・サンネルフは、その口元を嫌らしく歪めて、


「まぁ、そんな事はどうでもいい。問題は貴様らがここにいる事。そして何より……」

「…………。」


視線をゆっくりとルーネスへと向けた。ルーネスは柔かい目つきを鋭くし、ギドラを睨み返した。


「ルーネスよ。何故戻ってきた?貴様は我らメサイアから逃げ出したというのに。」

「………私は、けじめをつけに参りました。」

「ほう?」


金色槍を構え、ルーネスははっきりとした声音で答えた。槍の矛先は真っ直ぐギドラに向けられている。


「俺に槍を向けるか。」

「あなた以外、槍を向ける相手は、ここにはおりません。」


殺気とも感じ取れる鬼気が溢れ出し、原野が少し怯えるが、ギドラともう一人の女性は怯むことなく立っている。


「俺以外にはいないと?ルージュは違うと?」

「ええ。違います。彼女には何ら関係ありません。そして、悪いのはすべて、あなたです‼」

「る、ルーネスさん⁉」


ルーネスが鬼気を放ったまま、ギドラへと金色槍を突き出した。それはギドラを貫こうと真っ直ぐ迫る。が、原野からは全く見えない速度で突き出された刃は、同じく全く見えない速度で割り込んだ銀色の刃が受け止めた。


「邪魔をしないでください。ルージュ。」

「よくやったルージュよ。そのまま、その女を打ちのめせ。俺は少し準備が必要だ。」

「………私は、父上に従います。」


ルージュは、手に持つ槍、銀色槍ぎんしきそうを振り回し、勢いよくルーネスを突き飛ばす。


「く……ルージュ‼そこをどいて下さい‼あなたはそれでいいのですか‼」

「………私は構いません。私の生まれた意味は、父上に従い、眷属と化すこと。あなたのように逃げ出したりはしません。」

「ッ‼」


銀色の流星の如く、ルージュが槍を連続で突き出す。金色槍を振り回して全ての攻撃を弾き返し、ルーネスが魔力を高める。


「『緑結晶の氷雨(クリスタルフリーズン)』‼」


金色槍を上に突き出し、空間に大量の鋭く尖った緑結晶が出現し、ルージュ目掛けて降り注いだ。ルージュは慌てる様子もなくルーネスを突き飛ばし、


「『桃色結晶の竜巻(クリスタルトルネード)』。」


静かに呟いた。瞬間、ルージュを中心に桃色の小さな結晶の粒子が渦を巻き、緑結晶を正面から吹き飛ばした。


「く……。」

「諦めてください。あなたごときでは、私には勝てません。」

「『緑結晶のさざれ波(クリスタルウェーブ)』‼」


緑色の粒子で出来た波が、ルージュを飲み込もうと迫る。ルージュは銀色槍を振り回して、地面に突き刺す。


「『桃色結晶のさざれ波(クリスタルウェーブ)』。」


桃色の粒子で出来た波が、ルーネスが放った技と正面からぶつかり合う。互いに魔力を魔術に注ぎ込み、威力を高めていく。その力量は互角。と見られたが、


「ぐぅ……?」


徐々にルーネスが押され始め、ゆっくりと足が地面を抉り始める。


「な……あなたに……この量の魔力があるわけが……。」

「言ったでしょう。あなたが私に勝つことなんて不可能だと。ハァア‼」

「ぐうぅう……‼」


ルージュが威勢よく声を挙げて右手を突き出すと、波が肥大し、威力と質量が跳ね上がる。ルーネスは押され、押し返せないと判断すると、技を捨てて横へと飛び退った。


「冷静な判断です。あのまま張り合っていたら、あなたは死んでいました。」

「ハァ……ハァ……何故、あなたにここまでの魔力が……あなたは生まれつき魔力が少なかったはず……‼」

「簡単な話です。私は、人の魂を喰らう事で、魔力の限界リミッターを解除し、大量の魔力を得ました。それもこれも、あの妖艶魔サキュバスのお陰です。」

「ッ……人の、魂を……⁉」


平然と告げたルージュに、ルーネスが驚愕に目を見開いた。それは原野も同じで、驚いた表情でルージュを見つめている。


「驚きましたか?メサイア幹部『二番』の私が、悪魔の手を借りていた事に。」


ゆっくりと原野に視線を向け、ルージュが微笑みながら言い放つ。


途轍もない狂気を感じて、原野の体が無意識に震える。


「ハァア‼」


ルーネスが真横から勢いよく金色槍を振るう。銀色槍に受け止められ、高速で回転した銀色槍に金色槍が引かれ、地面へと叩きつけられる。


「ぐ……。」

「昔に比べて、槍の精度が落ちています。一体何があなたをここまで弱くしたのでしょうか?」

「く……『金色炎華』‼」

「『銀色水華』。」


至近距離で放たれた金色に輝く炎が、銀色に光る水で掻き消され、余波でルーネスにダメージが入ってしまう。


ルーネスは力ずくで金色槍を引き抜き、超回転させ、ルージュに連撃を叩き込む。上、下、右左、様々な方位から規則性なしに迫る斬撃を全て完璧に防ぎきり、ルージュは反撃として下から銀色槍を振り上げた。


空中に錆びた水が飛び散り、ルーネスが右腕を抑えて距離を取る。抑えている部位から、赤い液体が流れ出し、透ける服が赤く染まる。


「ルーネスさん‼」

「下がって‼原野様は快斗様方の所へ‼これは私の戦いなのです‼」

「そ、そんな……」

「ハァア‼」


原野の心配の音を押し切って、ルーネスが怒号の声を上げてルージュに斬りかかる。


金色と銀色の閃光がぶつかり合い、鋭い衝撃波が吹き荒れる。


「あぁ………」

「遅いです。」


が、閃光の嵐が過ぎ去ったあとには、頬に小さな傷がついたルージュと、足を突き刺されたルーネスの姿があった。


「ルーネスさん‼『絶手』‼」


原野が魔術を発動。ルージュの周りにゲートがいくつか出現し、そこから白い腕が生え、ルージュを握りつぶそうと迫ったが、


「そんな技、当たるわけがないでしょう?」


ルーネスの足から引き抜かれた銀色槍を振り回し、すべての腕を一瞬で斬り裂いた。小さな白い粒子となって、腕が散っていく。


「ええい‼」

「弱いです。」


その粒子をかき集め、原野がルージュの真上に大腕を出現させて、それを叩きつける。


だが、その大腕を、ルージュは片手で受け止め、振り抜かれた銀色槍によって消え去った。


「うう……。」


自身の力不足に悔しさを感じながら、原野がさらに攻撃を仕掛けようとした時、


「あ………」

「『桃色結晶の暴風(クリスタルウィンド)』。」


いつの間にか目の前に迫っていたルージュが、銀色槍を振り抜いた。そして、桃色の風が原野を包み込み、


「きゃあ‼」

「原野様‼」


抵抗も虚しく、原野は壁を突き破って遠くへと吹き飛ばされた。


「………。」

「あの者は後で始末致しましょう。さて」

「く………。」

「今更抵抗ですか?あなたの負けは確定ですが?」

「あの方は何も悪くありませんでした‼私ならまだしも、原野様方を攻撃することは、私が許しません‼」


足の傷の痛みを無視して、ルーネスがルージュに金色槍を向ける。ルージュはため息混じりで、ルーネスとぶつかりあった。


その光景を、遠くから悠々と眺めるギドラは口元を歪めて、


「さぁ、どうするルーネス。お前は死ぬのか救うのか。まぁ、俺にはどうでもいい事だがな。」


そう言って、魔術を行使。新たな能力を開放した。


そしてこの時、原野が快斗達と合流し、快斗が壁を突き破ってルーネスと合流するのだった。

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