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罪深い男の想像話  作者: 病み谷/好きな言葉は『贖罪』
《第一章》 怒る彼は全てを殺し尽くす
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急展開

時は少し先戻り、ライトが薬を買いに行ってから約30分後、


「ヤバい‼快斗‼」

「んあ?」


目を閉じて正面突破以外の安全な作戦を考えていた快斗のもとに、高谷が焦りながら跳んできた。


快斗は思案を遮られたことに少し苛つきながら、高谷に意識を向ける。


「ら、ライトが誰かに捕まったみたいだ‼」

「……ハァ?」


考えもしなかった言葉に、快斗の思考が一瞬停止する。が、直ぐに意味を理解した瞬間、快斗が触れている地面に亀裂が入り、建物が倒壊する。


「何⁉」

「どうされましたか⁉」


轟音を聞きつけ、原野とルーネスが走り寄ってくる。


「ヤバいんだよ‼ライトが何かに捕まった‼」

「ええ⁉」

「ライト様が?ですが、ライト様の侵入は、まだ誰にも……。」


原野は言わずもがな、ルーネスでさえ焦りだす。


快斗は立ち上がって、比較的落ち着いた様子で高谷に聞く。


「ライトは今何処にいんだ?」

「えっと………これは、黒本?もしかして、メサイア本部かも……」

「分かった。」


高谷が結論を出す前に、快斗は地面を蹴り飛ばして高速で走り出す。


尋常じゃない怒りと焦りが混ざり合って、快斗は何故だか笑ってしまう。街道を蹴り崩し、家の屋根を抉り、メサイア本部へと一直線に向かう。


「ちょ、快斗⁉」


いきなりすぎる展開に、高谷がついて行けない。それでも理解はしたようで、『血獣化』を発動して走り出す。


「ま、待ってよ‼」

「もうどう仕様もありません。行きましょう‼原野様‼」

「ええ⁉ルーネスさんまで⁉」


背負う金色槍に手をかけ、ルーネスが走り出す。一番足が遅い原野は、必死になってあとを追いかける。


「オオォォオォオオ‼‼」


怒り任せに快斗がメサイア本部の屋根に踵を落とす。石で作られた分厚い屋根は、快斗の勢いを一切弱めることが出来ずに侵入を許してしまう。


幾何学的な模様が描かれた藍色の床に降り立ち、快斗が周りを見渡すと、


「待っていたぞ悪魔。」

「まんまとおびき寄せられやがって。」

「お前は絶対に殺す‼」

「イキリキッズはここで死ね‼」


渡辺、内田、蛯原が殺気立った様子で、快斗のことを取り囲んでいた。そして、その後ろで悠然と喋る老人。


老いてはいるが、溢れ出る闘志と鬼気が、快斗を警戒させる。ナイフのように鋭い目で、その老人を快斗は睨み付ける。


「不躾な視線を俺に向けるな。俺は悪魔が嫌いだ。ここでお前を殺してしまいたいが、それはコイツラに任せよう。」


そう言って、老人は腕輪に魔力を流して瞬間移動をして消えていった。


「『死鎖』‼」

「『大炎華』‼」

「『蒼炎熱波』‼」


瞬間、快斗を取り囲む3人が一斉に魔術を放った。


ピンク色に輝いた鎖鎌が真上から振り下ろされ、足元には炎でできた大華が出現し、後ろからは凄まじいエネルギーが迫りくる。


怒り任せに突入してしまったことを後悔しながら、快斗は体を捻って鎖鎌と熱波を躱し、鎖鎌を引いて移動。爆撃を間一髪で躱した。


そのまま、蛯原まで急接近。


「な……」

「ハァア‼」


『剛力』を発動した右腕を、蛯原の真上から叩きつける。両腕で防いだが、威力が強く、蛯原が床を突き破って下の階へ。


「『ヘルズ……』」

「『炎龍頭潰し』‼」

「く……。」


追撃で床に空いた穴に『ヘルズファイア』を放とうとするが、赤い炎でできた炎龍を剣に纏わせた内田が迫り、放てない。


「『魔技・怨念の……』」

「『蒼乱輝連魔』‼」

「うぜェ‼」


着地して『魔技』を放とうとするも、渡辺が作り出した蒼い炎の輝く鱗粉が放たれ、快斗は吹き飛ばされる。


「クソ……面倒だな……。」

「死ねぇ‼」

「おわっ⁉」


体勢を整えて、再度飛びかかろうとした瞬間、真下から鎖鎌が突き出された。


体を倒してなんとか躱すも、それは致命的な隙となる。


「やべ……」

「『炎龍腕斬り』‼」


縦に振るわれた燃える剣が、快斗の左腕を斬り裂こうと迫った。が、


「『猛血』‼」


降り注いだ液体の様な炎が、それを阻んだ。


きまると思っていた内田は躱すことが出来ず、それに瞠目した蛯原を快斗が蹴り飛ばす。


「ナイス高谷‼」

「先走りすぎるよ快斗‼」


炎を振らせた少年、高谷が肥大化した腕を振り回しながら着地した。


「高谷。」

「うん。ライトは多分下の階だ。行ってきなよ。」

「お前一人でいけんのかよ。」

「『不死』だからなんとかなる‼」

「能力頼みか……まぁいいや、頼むぜ‼」

「了解‼」


快斗は戦場を高谷に預け、地面を突き破り、下の階へ。


「ライト‼何処だぁ‼て、いたわ。」


上がる砂埃の中、快斗がライトの名を呼ぶ。と、檻に閉じ込められたライトを発見した。


「なんだよ。こんな近くにいたのか。上での戦いは何だったんだ。まぁいいや。そこどけ。黒本。」


快斗は頭をかいて、剣を構える黒本に話しかける。


「嫌だね。私は光を守れっていう命令があるの。」

「んー。それは守れじゃなくて見張れ。だろ?」

「どっちだって同じこと‼」 

「いや、全然ちげーよ。」


黒本が雷を纏って、快斗に斬りかかる。刃が当たる寸前で草薙剣で受け止め、弾き返して殴り飛ばす。

 

「『紫雷』‼」


紫色の雷の糸を伸ばし、快斗の心臓を狙う。それを弾いて、快斗は檻まで一直線に迫る。


「ライト‼そこ斬るから離れろ‼」

「は、はい‼」

「ぐ……待て‼」


ライトが檻の奥へ。快斗が鉄格子を斬り裂き、その真上から剣を振り下ろす黒本が迫る。


「間に合え‼」


鉄格子をすべて斬り裂いて、快斗は間一髪で草薙剣を滑り込ませ、黒本の刃を防いだ。


「くうっ⁉」


黒本が、刃のぶつかり合いによって生じた波動で吹き飛ぶ。


「ぶねぇ……ライト、怪我は?」

「な、無いです。助けていただいて……有難うございます。」

「気にすんなよ。結構ギリだったが。」


快斗はライトに手を貸して立ち上がらせる。


「ひ、光?あ、天野と手を組んで……るの?」


知り合いの様な喋り方に、黒本が唖然とした様子でライトに聞く。


「は、はい。あと、光っていうのは偽名で、本名はライトです。」

「ライトって……この国の次期王様?」

「はい。そうです……多分。」


驚きに黒本が口をパクパク動かしている。快斗は面倒くさそうな表情をして、


「あー。もういいかな。行くぞライト。」

「……すみません。まだ、やる事が残っています。」

「んあ?」


ライトの手を引いて、外に逃げ出そうとする快斗を、ライトが引き止める。


ライトは真っ直ぐ黒本を見つめて、笑っていった。


「ええっと、さっき、僕はあなたに手を握られて、ドキドキしたんです。」

「へ?」

「それで、なんでドキドキするのかなって考えたんです。」


ライトは黒本を真っ直ぐ指さして、


「この感情が、恋、と言うのだと。」

「こ、恋?それは……えっと……」

「最初は思いました。」


動揺する黒本に、ライトは続ける。


「違ったんです。恋なんかじゃありませんでした。」

「じ、じゃあ……」


ライトは黒本に近づいて、


「僕がドキドキしたのは、あなた自身に対してではなく、あなたの中にある……僕の物になるはずだった魔力に、体が反応しただけだったんです。」

「?それは……どうy……」

「僕の固有能力、返してください。」

「ぶ……。」


満面の笑みで言い放って、ライトは黒本の腹に拳をねじ込んだ。黒本が腹を抑えて蹲る。


「お、おい……ライト?」

「はい。なんですか?」

「む………。なんだ、お前。誰だ。」


一瞬、ライトの奇行に驚いたが、直ぐに冷静になって理解する。


「クソッタレ‼結局お前誰なんだよ‼」

「俺はお前だ。何度言えばわかる。」


明らかにライトではない口調で、ライトに取り憑いた何かが話し出す。


「その体から出ていけ‼」

「拒否する。」

「ざけんなっ‼」


快斗が跳んで、ライトに拳を向ける。が、寸前で受け止められてしまう。


「ぐ……。」

「まぁ聞け。俺はお前に危害を加えるわけでも、この体を壊すわけでもねぇ。」

「ハァ?」


わけのわからないことを言い出した何かに苛ついて、更に拳を振り上げる快斗だったが、


「聞けと、言っただろう。」

「ぐお⁉」


快斗でさえ見えないほどの速度で、鳩尾を殴られた。吹き飛ぶことはなく、衝撃が体内を走り回る。


「あ……ぐ……。」

「いいか。コイツにはまだ降り立っていない能力がある。」

「んだとぉ……。」

「お前の頭脳ならわかるだろう。だが、そうだなぁ。ヒントをやろう。コイツの姉の固有能力の1つに、『風神』が存在する。ここまで言えば、分かるだろう?」

「………『雷神』か……。」


余裕そうにライトの中の何かが話を進める。


「この小娘の中には、その能力が入っているのだ。まだ覚醒していないがな。」

「で?」

「それを取り返せ。でないと……コイツは死ぬ。」

「ッ⁉」

「お前も悪魔の端くれならわかるだろう?魂が半分以上抜けている生物が、長時間生きていられるわけが無い。」


その言葉で、快斗はライトが話していたことを思い出した。妖艶魔サキュバスに、魂を取られたと言う話を。


「今は俺が抜けた部分の代わりとなっている。俺がいなければ、とっくのとうにコイツは死んでいる。」

「マジかよ……。それには、感謝するぜ……。」

「お前の礼はいらねぇ。それより、この小娘から能力を抜き出すんだ。その方法を………不満で不快で最悪だが、渡すとしよう。」

「なんでみんな俺の事を最悪よわばりするんだ?」

「それはお前が最悪だからだ。」


何かはライトの体を使い、体の頭を掴んだ。そして、


「ゼニメラ・ヒテ・オリトクヘラ・メシヤ」

「?」


意味のわからない言葉を呟いた。途端、快斗の頭の中に、魔力と共に何らかの情報が流れ込んだ。それは、


「『魔技・魔奪の欲物』、対象の所有している物の中から、1つだけ、確実に奪い取る事ができる能力だ。」


何かが乗り移ったライトの表情は、ニヤリと歪んでいた。

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