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罪深い男の想像話  作者: 病み谷/好きな言葉は『贖罪』
《第一章》 怒る彼は全てを殺し尽くす
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人探し中の『ヒト』

「操られるのが俺の方で良かったね。」 

「俺の方だったら回復出来ないもんな。」


血が混じった軽口を叩き合って、高谷が草薙剣の刃の方へ身体をずらし、自身の身体を引き裂きながら、快斗の攻撃範囲から脱する。


「ぐぉ⁉」


快斗が『ヒト』に向き直ろうとしたところで、紫色の光が快斗を包み、もう一度操られそうになる。


「『炎玉』」


しかし、高谷が『ヒト』へと『炎玉』を放ち、その目論見はなくなる。


「ジャマ、スルナァ……」

「喋れんのか。」


腕に紫色の光を集め、刃を形成して『炎玉』を斬り裂く。『ヒト』が顔と思われる部分を歪めて、何処からか声を出す。


「オマエェ、ライト?」

「アァ?」


『ヒト』が体を揺らして、快斗に向かって問いかける。言葉の意味がわからず、快斗が首を傾げる。


『ヒト』は少し黙ったあと、急に体を揺らして、


「アカイ、メェ、オマエ、ライトダァ‼」

「んあ?」

「快斗。ライトって何だ?」

「存じ上げねぇな。人違いじゃねぇか?」


快斗は頬をかきながら、『ヒト』に呟く。今の快斗は、髪が水に濡れているため、右目が隠れて、赤い左目だけが覗いているのだ。


もし、この『ヒト』が、何者かに誰かを探し出せと言われているとして、その特徴が赤い目と言われていたら、見間違えるのも頷けるが、


「そんな少しの特徴しか教えなかったのかよ。髪の色とか服装とかいろいろあったろ。もっと。」


快斗は苦笑しながら、突き出された紫色の刃を草薙剣で流し、その腕を斬りつける。


赤い切り口が覗くが、血は出ない。その傷にを無視して、『ヒト』が空へと浮かんで、


「アァアア‼」


両手を前へ突き出し、手のひらから黒い雨雲のようなもの、否、雷雲が出現し、紫色の雷を大量に快斗達に放つ。


「『ヘルズファイア』‼」

「『猛血』‼」


快斗が獄炎を放ち、高谷が手首を斬り裂いて出た血を炎と化させて、紫色の雷を迎え撃つ。


魔力がぶつかり合い、爆炎が広がる。快斗は草薙剣を構えながら、右へ跳ぶ。すると、快斗が今まで立っていた所に紫の針が刺さっていた。


「ギィィイ‼」


『ヒト』は浮遊しながら、数多の紫針を出現させ、走り回る快斗を狙う。


走りながら躱し、流し、撃ち消し、跳ね返す。


「ギィィイ‼ナゼ‼ナゼ、タタカエル⁉オマエハ‼タタカエナイッテ!!」


『ヒト』が、なかなか倒れない快斗に苛ついて、頭とおもられる部位を抱えて震える。その度に紫色の雷がバチバチと出現し、『ヒト』の魔力が高まっていく。


「知ったこっちゃねぇよ‼戦えないとか、意味わかんねぇ。お前みたいな強えやつ仕向けるってのに、その相手が戦えねぇはずねぇだろ‼」

「ガッ⁉」


快斗が紫針の合間を縫って草薙剣を投げ飛ばし、『ヒト』の目の前に『転移ワープ』して、草薙剣で目と思われる2つの穴を斬り裂く。やはり、血は出ない。


「アレ?ミエナイ‼ミエナイ‼」

「いちいち騒ぐなよ‼」


快斗は『ヒト』の頬を拳で打ち付け、横へ突き飛ばす。殴られた部位を抑えて、紫刃を纏った右腕を『ヒト』は振るうが、


「シャアアアア‼」 

「アガ⁉」


振り上げられた右腕を、高谷が剣を振り回して、細切りに斬り裂いていく。そのまま回転して、背中を右肩から左脇腹までバッサリと斬りつける。


「ウデ……ハ?」

「斬れたよ‼」 


斬れた右腕を目の前に持ってきて、感覚がなくなったことを不思議がる『ヒト』の腹を、快斗が蹴り飛ばす。『ヒト』がくの字に曲がり、吹き飛んでいく。その先には、


「さっきと同じだ‼ハァア‼」


肥大化した腕を振り上げて、殴る準備万端な高谷の姿が。背中を思いっきり殴られ、逆くの字に曲がって『ヒト』が突き飛ばされる。


「ク……キ、キィィイィイアァアアァアア‼」

「む……。」

「な、なんだ?」


すると、突如『ヒト』が頭を片腕で抑え、痛むような素振りを見せる。


意味不明な動きに警戒しながら、高谷と快斗が構える。と、


「ガ……ガ……ガァ‼」


ラジオの雑音のような声を出したあと、『ヒト』の頭部にいくつもの亀裂が入り、勢いよく頭が開いた。


するとそこから、


「オ、オボエテ、イロ‼」

「なっ⁉」

「お、おい‼」


一回り小さくなった、全身の傷が全て消えた同じ形状の『ヒト』が出てきた。そして、紫針を乱暴に撒き散らしながら、『ヒト』が逃げ出していく。方向は、川市の方向。


「おぉい‼待ちやがれ‼」

「クソ‼地味に速い‼」


快斗と高谷が翼を形成して追いかけるが、想像以上の速さに、紫針が放たれている事により、追いつく事が出来ない。


「キィィエエエェェエ‼」

「「ッ⁉」」


途端、『ヒト』がいきなり振り返り、両腕を空に掲げた。すると、黒紫色の大きな光弾が

作り出された。


「キエロォ‼」

「チィッ‼」


『ヒト』が勢いよく両腕を振り下ろし、それに合わせて巨大な紫光弾が快斗と高谷に迫る。速度は速く、躱すには時間が足りない。そして、2人が考えた事はここで一致する。


「攻撃は」

「最大の防御‼」


快斗の草薙剣が獄炎を纏い、高谷の剣に血が滴り、それが炎となる。


「息、合わせろよ快斗。」

「わーってらい‼」


高谷と快斗が同時に飛び出し、互いの剣をクロスさせて、紫光弾を迎え撃つ。


「『死歿刀』‼」

「『崩御の剣』‼」


快斗が『死歿刀』を、高谷が『崩御の剣』を発動し、2色の炎が交わって新たな炎が出来上がる。


「「『交われ、斬死の炎よ(フレイムオブデス)』」」


赤紫色の炎を纏った2つの剣が、紫光弾とぶつかり合う。


「ぐ……」

「お、重い……。」


紫光弾の力が強く、快斗と高谷が少しずつ押されていく。


「ハァァア‼『血獣化』‼」


高谷が『血獣化』を発動。口が赤いマスクで覆われ、腕が肥大化し、能力値が底上げされる。


「オオオオ‼『極怒の顕現』‼」


快斗も『極怒の顕現』を発動。髪が黒く染まり、牙と爪が伸び、能力値が底上げされる。


「いけぇぇ‼」

「ハァァア‼」


それぞれの雄叫びを上げて紫光弾を押していく。少しずつ紫光弾が下がり始め、剣が触れているところが斬れ始める。しかし、それでも斬り飛ばすことはできない。


「く……そ……」

「チッ‼」


快斗が重圧に苦悶の表情になり、高谷が盛大に舌打ちをする。


どうすればいい?快斗が考えていると、ある出来事が頭をよぎった。それは、始めて『ヒト』にあったあの夜。


快斗は『極怒の顕現』の次のステップを思い出した。左目の上から赤黒い角が生え、自我を失う可能性があり、強い反動が降りかかるが、強力な力を得ることができる。


「こうなったら……やるしかねぇ‼」


快斗は意気込んで、自身の中の黒い魔力を掘り起こし、開放する。快斗の周りに黒い瘴気が舞い、そして、


「ああああああああ‼」


左目の上から赤黒い角が生え始める。血が流れ、途轍もない激痛が体中で起こり、血が吹き出す。が、止まらない。まだ、目の前の魔力の塊が斬れてないから。


「ああああ‼」


快斗は更に黒い魔力を開放。角が更に伸び、激痛が更に増す。そして、


「死ねやぁぁあ‼」

「ガァアアアア‼」


勢いよく、紫光弾をバッテンに斬り裂いた。


「う、ぐ、ぐぅううううう‼」


途端、体中の筋肉が収縮。肉離れが次々と起こり、流れ出す血は止まらない。気絶しかけるが、なんとか堪え、頭を抑えながら『ヒト』の方を見ると、


「オマエハ……オマエハァ‼‼」


黄色い雷で出来た針のようなものに貫かれて、その場に止まっていた。


「ぶち殺してやる‼」


異常に溢れる殺意が抑えられなくなり、快斗は空気を蹴って『ヒト』へと接近し、


「ラァアアア‼」

「ナ、ナニ……」


『ヒト』が何かを言う前に、快斗が今まで以上の速度で飛び回り、『ヒト』の体をバラバラに斬り裂いた。白い肉片が舞い散り、快斗の意識が遠ざかる。


角はすでに消え、額には大きな傷が出来ている。『極怒の顕現』も解け、快斗は力なく地面へと落下していく。


硬い地面に当たると思ったが、


「おおっと‼な、何なんだ君は⁉」


誰かにキャッチされ、快斗が目玉だけを動かしてキャッチした人物を見る。


灰色のローブを纏い、顔を隠している男子。

少し見える顔は、真っ赤な両目に金髪の………


そこで、快斗の意識は途切れた。

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