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罪深い男の想像話  作者: 病み谷/好きな言葉は『贖罪』
《第一章》 怒る彼は全てを殺し尽くす
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川市

快斗が『ヒト』と戦った日の翌日。


「おー、ここが。」

「ええ。川市です。」


快斗達はその後、再度『ヒト』に襲われることなく、無事に川市に辿り着くことができた。


「意外と小さいんだな。」

「年がら年中移動してんだから大きくできないでしょ。」

「それもそうか。」


紐で結ばれた店の間を抜け、快斗達は、商店街へと進む。勿論変装はしている。


店の全てが太い紐で結ばれており、進行方向には、大きな亀のような生物がいて、その背中にある大きな棘に、紐がくくりつけてあった。


店員達の宿屋を抜け、賑わう商店街へ。あちらこちらで呼び込みが交差し、話し声、叫び声、笑い声が混ざり合っている。


店では肉、果物、食器、その他魔法の杖や、回復薬など、冒険者が使うような代物も売っていた。


街の隙間には、ところどころ水道が付いている。


「取り敢えず、食器洗うか?」 

「そうですね。では、食器は私と原野様で洗わせて頂くので、快斗様と高谷様は食料といくつかの回復訳を…」

「いんや、今回は俺が雑用係になるぜ。原野は高谷と買い物してこい。」

「へ?」


ルーネスと原野が雑用をしようとすると、快斗が雑用係を名乗り出た。


「ほらほら、早くアプローチしねぇと、誰かに取られるぞ?この世界の女性は魅力的な人が多いからな。」

「はっ……。そ、そうだね……。」

「二人とも何話してんだ?」


快斗が原野の耳元で小さく囁き、高谷が訝しんで腕を組む。


「んじゃルーネスさん。皿洗いに行こうぜ‼」

「ふふ。わかりました。」

「おい。快斗。」

「い、行こう‼高谷君。」

「え?あぁ、分かった。」


快斗がルーネスの手を取り、原野が高谷の手を取って、それぞれ逆方向へと歩いて行く。


耳まで真っ赤にした原野を不思議そうに眺めながら、高谷は少し苦笑したのだった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「もう少し安くなりませんか。」

「すまんが兄ちゃん。これ以上は流石にな。」

「せめて4割引き……」

「いや無理だ。11割ならいいだろう。」

「増えてるじゃないですか‼だったら7割‼」

「いいや、9割以下には絶対にできねぇ‼これは希少なものなんだ‼」 

「そこをなんとか‼」

「無理だ‼」

「もういいんじゃん。9割引きで。」


薬屋にて、高谷は完全万全薬という希少な薬の値引き交渉をしていた。


完全万全薬は、状態異常、生命力を全回復。攻撃力、防御力を底上げするというチート極まりない薬である。


値段は2つセットで金貨50枚。妥当な値段と言えるが、家があまり裕福でなかった高谷が癖で値引き交渉をし始めたため、少し時間がかかっている。


「でも、金貨45枚って……。」

「別にいいでしょ。この前金貨100枚手に入ったんだから。」

「でも‼」

「高谷君って、意外と乞食っぽい所があるんだね。」


何を言っても引かない高谷に少し呆れ、原野はさっさと金貨45枚を払って、高谷の手を引いて店を出る。


「くそ…俺にもっと値引き交渉スキルがあれば……。」

「何言ってるの。9割でも十分値引きできたほうじゃない。」

「そ、そうなのか?」


原野の言葉に、高谷が頭を傾げながら原野に聞き返す。その姿が可愛くて、原野は顔を手で覆ってから大きな声で「うん‼」と答える。


「じ、じゃあ、そろそろ快斗君達の所まで戻ろう?食材とか回復薬とか買い揃えたし、」

「そうだな。よし、戻るか。」

「うん。」


高谷と原野が同時に歩き出す。すれ違う人に挨拶をしながら、高谷は自分の手を眺めて、


「原野。いつまで手を握るんだ?」

「え?え、あぁ‼ご、ごめん‼」


無意識にずっと手を握っていたことに気が付いて、原野が赤面しながら手を離す。


あまりの勢いに、高谷の腕がボキッと音を立てて吹き飛ぶ。


「そ、そんなに嫌だったのか……?」

「い、いやそういう事じゃなくて……‼」

「そっか。ごめんな。もっと早く言ってやれば良かったな。」

「い、いやだから……」

「気にすんなよ。腕治ったし、さっさと向かおうぜ。」

「う……うん。」


上手く行かない2人の恋路に、原野が少し凹む。吹き飛んだ腕を抑えながら、高谷は前を見て歩いていく。


原野が駆け足で追いかけ、高谷の手に持つ荷物の半分を取って歩く。


「これくらいは持つよ。」

「あぁ。ありがとう。」

「うん。」


勘違いされたことに凹んだ癖に、直ぐに赤面する原野は感情が変わるのが早い。原野が高谷との会話の幸福を噛み締めていたその時、


「ッ……」

「?どうしたの?」

「…………魔物の気配がする。」

「え?」

「ごめん原野。ちょっと見てくる。これ、持ってってくれ。」

「え?あぁ、ちょっと‼」


高谷は、荷物を全て原野に預けて、街の隙間を抜けて川の方へ走っていった。


原野は少し呆けたあと、『魔物の気配』という言葉を思い出して焦りながら、急いで快斗達の方へ走っていった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「魔物の気配がする。」

「左様でございますか?」


高谷が魔物の気配に気づく数分前、快斗も魔物の気配を完治した。


「あぁ。なんだか……昨日の『ヒト』に似てる気配だ。」

「…………どう致しますか?」

「俺が殺る。ルーネスさんはここで高谷達の帰りを待っていてくれ。」 

「承知いたしました。しかし、最後に自爆する恐れが……」

「なら、倒す時に空中にでも蹴り飛ばすさ。それに、気配は川の中だ。爆発しても、昨日ほどの被害は出ねぇよ。」

「でしたら良いのですが……お気をつけて。」

「言われずともな。」


快斗はルーネスにウィンクして、隠し持っている草薙剣を握りしめながら、『瞬身』で川まで駆けていった。


「ハァ……。」


残ったルーネスは、洗い終わった食器をまとめ、一応用意してあった袋の中にしまうと、大きなため息をついて、


「どこへ行っても、私達は波乱万丈。落ち着いた生活になるのはまだまだ先の様ですね。」


そうした小さな呟きを言い終わった頃に、原野が焦りながら走って帰ってきた。

好みの女性。


作「高谷は好きな女性のタイプとかあるのか?」

高「うーん。そうだなぁ。静かで落ち着いてて、笑うと綺麗な人かな?料理が上手いと更に評価アップ。」

作「なるほどー。フツー過ぎて何も言えねぇわ。」

高「何でいきなりこんなことを聞いてきたんですか?」

作「さぁな。HAHAHA。」

高「?」


隣の部屋


原「落ち着いてて笑顔が綺麗……。私はどうなんだろう……。」

ル「?どう致しました?原野様。」

原「ううん。なんでもないよルーネスさん。」

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