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罪深い男の想像話  作者: 病み谷/好きな言葉は『贖罪』
《第一章》 怒る彼は全てを殺し尽くす
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楽園

「リン達はこのあとどうするんだ?」

「そう。それが問題なんだよな。」

「ん?」


快斗と高谷は、地面に転がった木の上で、今後の貧民達の生活をどうするか悩んでいた。快斗の膝の上は、リンとキューが陣取っている。


「我々としては、もう王都には……」 

「戻りたくないと。まぁ、あんな生活させられてたからな。またそうされないとも限らない。トラウマが出来ちまうのも当然さ。それを踏まえて考える必要があるな。」


快斗に話しかけているのは、貧民達の代表者、ケインである。


「うーん。違う街に移るとしても金がねぇ。戻る場所もねぇ。雇い手もねぇ。人生詰んだニートみたいだな。」

「ニートが可愛そうだからそういうこと言うなよ。でもなぁ。本当にどうしようか。これだけの人数だと、一緒に旅するなんてことも出来ないし。」

「んーーーーーー、あ。いい場所がある。」

「え?」


腕を組んて考えていた快斗がふと、ある場所を思い出す。


「ヒナー‼ヒナはいるかー‼」

「はいはいなんですかぁー‼」


ステテテという音を立てて、小身のヒナが駆けてくる。


「お前さ、俺が教えたスムージー覚えてるか?」

「?ええ。覚えておりますけど……。」

「よし。いいこと思いついたぜ。」

「なんだ?」

「まぁいいや。取り敢えず、今からあそこに向かうぜ。高谷ならわかるよな。始まりだ。」

「………あぁ。あの場所ね。」

「「「?」」」


リンとヒナとケインが首を傾げる。快斗はリンを抱きながら立ち上がり、決め顔で言った。


「行くぞ。始まりの街、セルス街に‼」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


あの発言から一週間。特に何もなく、全員がセルス街に到着。街には入らず、一行は森の中へと入っていった。


「ちゃんと記せよ〜。俺だってうろ覚えなんだからな〜。」

「大丈夫なのか?」

「多分な。」


快斗たちは言わずもがな、貧民達も今は武器を持っている。


「ね、ねぇ快斗お兄ちゃん。本当にこの先に楽園があるの?」

「おう。俺がそう呼んでるだけだけど、それに相応しい場所だぜ。魔物が出たら俺がぶっ殺すし、心配すんなって。」

「分かった。」


不安を隠しきれず、リンが質問してくるが、快斗は手を振って軽く答える。リンはそれで納得したようで、手に持つ斧槍を握りしめて着いてくる。


何故その武器を選んだのかは分からないが、物分りが良くて助かると、快斗は笑いながら大股で歩いていったのだった。


それから一時間ほど歩いて、


「おおお……」

「ここが……」

「よし‼お前ら着いたぞ‼ここが果物の森、名付けて、『楽園エデン』だ‼」


快斗が十二支幻獣『巳』を倒したときに訪れた果物と野菜の森。快斗が名づけた『楽園エデン』と言うながしっくりくる場所である。


「お前らはこれから、ここで生活してもらう事になると思う。他に行く宛もねぇし、ここなら野菜、肉は揃ってるし、ここらは凶暴な魔物は少ないからな。」

「ここで?」

「そう。家を作って、塀を作って、畑を作って栽培して……そうして自給自足で生きていくのさ。誰にも制限されず、自由に暮らせるぞ。」

「いいかも知れないな。だが、本当にこんな山奥で大丈夫なのか?」

「いや、無理だろうな。食材があるっつっても、服とか皿とか、工具がたりねぇ。だから、それを調達してくんのが、俺達の役目だよ。」

「なるほど。じゃあどこで調達してくるの?」

「それはもちろん、セルス街だよ。さっき確認したけど、俺がぶち壊した部分がもう元通りになってたし、工芸品的なやつは沢山あるんだろう。」

「よくそんなところまで見抜けるな。んで?交渉でもするのか?」

「いや、そんなことしたら突っぱねられるだろ?だから、するのは交渉じゃねぇ。こちらが一方的に、全部頂く。」


快斗はニヤつきながら、セルス街がある方を見て頷く。


「取り敢えず、まずは安全と食料の確保だ。ルーネスさん。」

「ええ。『緑結晶の壁』。」 


ルーネスが地面に金色槍を突き刺して魔力を流す。すると、貧民達をを囲って緑色の壁が4つ出現し、防壁となる。


「とりま、今はこれで行くけど、資材が手に入るようになったら石の壁を作って本格的に村造りだ。」

「なるほど。では、その村造りはどなたが?」

「もちろん、お前らさ。俺らも手を貸すけど、自分でやるって事もお前らは学ぶべきだぜ。あと、お前らにはこれから戦術も教える。つっても我流だけど、戦えないよりはマシだろ?またあんなふうに働かされないように、自分の身を守れるぐらいには強くならないとな。」


疑問をぶつけてきたケインにウィンクしながら答え、快斗は草薙剣を掲げて大声で叫ぶ。


「これからお前らは、貧民から戦闘民族へと生まれ変わる‼自分の身を守れるくらいに、いや、他人を守れるぐらいに強くなれ‼この世界は弱肉強食だ。強くて賢いやつは優遇され、弱くて馬鹿なやつは差別される。逆に言えば、強けりゃなんでもいい‼強くなれ‼お前らは今日から、ヒナ筆頭の『侵略者インベーダー』だ‼」

「えぇ⁉」 


快斗が高らかに宣言し、その言葉に責任を丸投げされてる感が半端ないヒナが驚く。


そんなヒナとは裏腹に、貧民達は雄叫びを上げてやる気を表している。その反応に快斗は満足して、草薙剣を背負い直す。


「んじゃ、ヒナ筆頭。宜しくな。」

「え⁉その線で行くんですか⁉急すぎません⁉ちょっと‼ちょっと待ってくださいよ快斗さん⁉丸投げは酷いですぅ‼」


貧民達の期待をヒナに預け、快斗は、食肉にする魔物を探しに行ったのだった。

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