ゼルギアとルーネス
ゼ「ふん。貴様らが見たければ見ればいい。これは、我の獄値だ。」
名:ゼルギア・ヘルロンド 種族:魔人
状態:正常
生命力:1120 腕力:1000 脚力:1020
魔力:970 知力:700 獄値:2405
「ハァア‼」
「シッ‼」
高速回転して、ルーネスは金色槍をゼルギアに横凪に振るう。低い姿勢でその斬撃を上へ流し、体を回転させ、ルーネスの懐に一瞬で潜り込み、刃を下から振り上げる。
躱そうと後に跳び退るルーネス。しかし、不思議なことにルーネスの体と同じように、ゆっくりと斬撃が前へと進み、躱す事を許してくれない。
「チッ‼」
ルーネスが舌打ちをして、金色堂を回転させて、刃の進行を防ぐ。が、そこで空きが生じてしまう。
「ふ……。」
「ぐ……」
ゼルギアが回し蹴りを放ち、硬い鉱石が埋め込まれた踵が、ルーネスの首筋を強く打ち付け、吹き飛ばす。
それでも体勢は崩さず、金色槍を地面に突き刺して軸とし、踵をゼルギアに勢いよく叩きつける。しかし、当たるかと思われた打撃攻撃は、1m左に瞬間移動されたことにより空を切る。
「面倒ですね……‼」
「よく言われる。」
その距離から更に瞬間移動を繰り返し、ルーネスの周りを残像を作りながら動き回る。
金色槍を構え、ゼルギアの気配を負いながら、ルーネスが目を閉じる。そして、移動していた気配が、斜め右後ろで一瞬止まった。
「そこ‼」
体の部位の隙間を抜けて、長い上に隠された刃が、後ろの気配を突く。確かに手応えがあったように感じ、ルーネスが目を開けると、
「残像だ。」
厨二病なら絶対に言いたい言葉ランキング第一になりそうでならない言葉をゼルギアが発し、ルーネスの死角から斬撃が放たれ、遅れて気づいたルーネスが体を倒すようにずらすも、またもやゼルギアが瞬間移動を発動して、ルーネスが倒れる方向へと回り込む。
「厄介ですね‼」
「よく言われる。」
金色槍を刃と自分の間に滑り込ませ、殺意の乗った斬撃をなんとか防ぎ、そのまま地面に突き刺した金色槍を軸として、先程と同じように回転。と見せかけて、地面に着地。しっかりと金色槍を握って横に大きく回転。金色に輝いた閃光が周りに広がり、地面に魔法陣が描かれる。
「ほぅ……。」
「これを見てその反応とは……余裕ですね。」
「余裕だからな。」
ゼルギアは感心したように魔法陣を見つめ、その術外に瞬間移動をし、下から突き出した緑色のクリスタルの刃を平然と躱す。
「これでも駄目ですか……全く、貴方様の能力は本当に厄介ですね。」
「よく言われるな。」
ゼルギアの固有能力。『光の顕現者』。自分から半径1m以内の領域のすべてを感知、移動ができ、ゼルギアには死角がない。また、1m以内なら瞬間移動ができるため、連続で発動すれば凄まじい速度となる。
ゼルギアは瞬間移動を限度なく発動できるため、ゼルギアは、かなり広い範囲攻撃を、一瞬で発動しない限り、傷をつけることすら叶わない。
「貴様では出力不足ということだ。金。」
「………デリカシーというものをご存知ですか?」
「ああ。知っている。言葉だけならな。」
「では、私が教えて差し上げましょう‼」
ルーネスは『金閣』を発動。金色の光がルーネスを包み込み、ステを底上げする。
「『緑結晶の連撃』‼」
「ふん。」
金色槍を掲げ、空中に無数の結晶の槍を出現。一斉にゼルギア目掛けて高速ではなった。
ゼルギアは、結晶の合間を瞬間移動で抜け周り、その連撃全てをくぐり向けて、鎧で固められた拳をルーネスの腹にねじ込む。
「くふ……」
「顔は狙わんでおこう。仮にも貴様は女だからな。」
「余計なお世話です‼」
地表から結晶の槍を出現させるが、すぐに感知されて後に瞬間移動される。
「ハァア‼」
「なるほど。感覚神経が鋭くなっているな。」
ゼルギアの出現とほぼ同時にルーネスが金色槍を突き出す。またもや瞬間移動で躱され、真上から青剣を振るう。
その襲来を、空中に結晶の縦を出現させて防ぎ、瞬間、その縦が変形し、青剣を取り込んで固定する。
そして、自ら作った結晶の盾を金色槍で突破ってゼルギアを狙う。しかし、やはり瞬間移動で躱されてしまう。
その移動先に思いっきり回転して勢いづけた金色槍の刃を叩きつける。腕の甲冑でガードしたゼルギアが吹き飛ばされる。
「反応速度が徐々に上がっている。我の瞬間移動に付いてこれるようになったようだな。流石は金だ。」
「無駄口を叩いていると、痛い目を見ますよ。」
「貴様ならあり得るな。もっとも、」
ゼルギアは結晶に取り込まれた青剣を魔力で引き寄せ、構える。充満した魔力を青剣に流し、切れ味と威力をあげる。
「その痛い目を見る前に終わらせればいいことだ。」
「言いますね。大した根性です。」
「ふん。義務から逃げ出した貧弱な女の精神とは格が違うからな。」
ゼルギアの言葉を聞いた瞬間に、ルーネスが今まで一番早い速度でゼルギアに金色槍を突き出す。余裕を持って躱され、苛つきに、珍しくルーネスが怒りの表情を浮かべながら、超高速でゼルギアが現れる場所に金色槍を振るう。
「『破壊の光』‼」
「『金傷天界翔』‼」
青白い光を放つ青剣と、金色の光を放つ金色槍が真正面からぶつかり合い、激しい衝波が生じ、互いに吹き飛ぶ。
ルーネスは住宅の壁に吸い込まれるように追突し、壁を破壊しながら家の中に転がる。
ゼルギアは地面に踏ん張り、抉りながら後に吹き飛ばされ、鍛冶場の石版の前で止まる。
「ふん。なかなかの威力だ。我には届かないがな。」
「く…は……。2閃闘士の名は伊達ではないようですね……。」
「当たり前だ。」
ゼルギアは石版によりかかりながら、よろよろ立ち上がるルーネスを見てため息をつきながら俯いて言う。
「しかし残念だ。これ程までに非力とは。以前の貴様の力はどうしたのだ。メサイア最強幹部のときの貴様は、こんな雑魚ではなかっただろう?少なくとも、『金閣』発動中の貴様は獄値2000をゆうに超えていただろう。だが、今はどうだ?『金閣』を発動しているにも関わらず、我を本気にさせることさえ叶わないほど、弱小ではないか。いったい、何が貴様をここまで落ちぶらせたのだ。年か?いや違う。そんなものでは無いはずだ。それに、貴様が失踪したのは3年前だ。その短時間、鍛錬をしていなかったとしてもここまで弱くはならないはずだ。では何だ?何が原因だ?」
「……………。」
嘲笑うように語りかけるゼルギアを無視して、ルーネスが金色槍を投げつける。
首を傾けて躱し、鍛冶場に突き刺さった金色槍を見てから、ゼルギアは話を続ける。
「確か……貴様らサンネルフ家には、ルーネスとは別にもう一人、出来損ないの双子の妹が居たはずだな。」
「ッ……」
「貴様らがどのような過去持ちか知らんが、今の貴様は弱すぎる。妹と関係しているのなら、貴様は妹に気を使い過ぎだ。」
「………………。」
「出来損ないなど放っておけ。貴様は、大きな可能性を秘めた戦士だったはずだ。これから降り注ぐ神のいたずらの厄災を避けるためのな。それが、たった一人のせいでそこまで落ちぶれるのか。」
「………………。」
「それが事実なのならば、我がサンネルフ家の出来損ないを………討ち滅ぼしてやr……。」
「『絶手』‼」
「話を遮るとは。礼儀がない小娘だ。」
ルーネスがゼルギアの言葉に心を切り刻まれそうになった瞬間、鍛冶場から帰還した原野が、『絶手』を発動。ゼルギアを狙うが瞬間移動により、すべてが空を切る。
「ルーネスさん‼」
「………原野様ですか……。」
傷だらけのルーネスを見て、原野が少し瞠目したあと、虚ろな顔で呼び返すルーネスに更に驚いて、持っていた回復薬を頭からかける。
「大丈夫⁉どうしてそんなに……。」
「いえ。大丈夫で御座います。お気になさらずに……。」
頭を抑えながら、ルーネスがふらついて答える。
「原野様、それは……」
「うん。快斗君の剣‼なんか異常に重いけど、これを取り戻せたから、あとはあいつから逃げるだけだよ‼」
「そうですね。快斗様たちに知らせに参りましょう‼」
「ほう。俺から逃げ切れるとでも?」
青剣を握りしめ、原野とルーネス、ゼルギアが睨み合う。
互いに沈黙の時間が続き、そして……
「『緑結晶の連撃』‼」
「『怪手乱殺』‼」
「チ………。」
原野とルーネスが範囲攻撃を放ち、その瞬間に踵を返して走り出す。ゼルギアは重なった範囲攻撃を躱し切ることができず、攻撃を流しながら、その面倒さに舌打ちをする。
「ハァ……ハァ……。」
「その刀を、快斗様に‼快斗様はまだエレジアと戦っているはずです‼」
「分かった‼」
原野は屋根に跳び上がり、エレジアと快斗が戦っていると思われる場所まで跳んでいく。
ルーネスはそのまま走り続け、『怒羅』の店を目指す。
「小娘は逃したようだ。しかし、貴様は逃さんぞ。金。」
「もう追いつきましたか。」
横から囁きかける声を聞きながら、ルーネスは苛つきを隠さず金色槍を振るう。高速で走り回る2つの閃光が、火花を散らしながら町中を走り抜ける。
槍を振り回し、剣を流して魔術を放ち、死角から放たれる攻撃を勘で防ぎ、負担がのしかかるが、それを無視して槍を振るう。
「ハァアア‼」
「ふ……。」
そうして走り回ることを続け、高谷がセルティアを気絶させた場所まで移動してきた。
「ふむ。ここに我を誘導した理由を言え。」
「ついたときの第一声がそれですか……。」
一瞬で目論見を見抜かれて、苛つきながらも、ルーネスは魔力を練り続け、体内を魔力で充満させていく。
周りの空気が金色の魔力で染まり、次第に大気が震え始める。
「何をする気が知らんが、どんなに強く早い攻撃を放ったところで、我を貫くなど不可能だ。」
ゼルギアは腕を組みながら、上から目線でルーネスに言い放つ。ルーネスは魔力を練り終えると、静かに笑いながら語りだす。
「あなたは、自分から半径1m以内ならどこでも移動可能なのですよね?」
「それがどうした。」
「いえ。それにしても、その能力は本当に厄介ですね。動き続けられては、こちらの攻撃を当てることすら叶いません。」
「ふん。当たり前だ。我に攻撃を当てられるものなどほぼいない。我には絶対に攻撃は当たらん。」
「ええ。そうですね。それが密閉された空間でなければですが。」
「………なんd…」
「『緑結晶の円状型空間』。」
ルーネスが金色槍を地面に深々と突き刺し、魔力を流す。すると、
「⁉」
クレーターの縁に沿って、緑色の分厚い壁が出現し、ルーネス達を囲って出口のない円状型空間を作り出した。
「………貴様、まさか……」
「ハァア‼」
ルーネスは地面に突き刺さった金色槍を引き抜き、残ったありったけの魔力を注ぎ込む。金色槍が今までに無いほど強く輝き出し、大気が大いに震え、ゼルギアの顔に焦りが生じる。
「チィ……面倒なことをしてくれたもんだな金。」
「どこまでも面倒な性格のあなたには言われたくありません。」
ルーネスは上へと跳び上がると金色槍を高々と掲げて、ゼルギアを狙う。金色槍が金色の炎を纏い始め、やがて、矢のように鋭くなる。
「あなたの能力は、1m以内のどこにでも瞬間移動ができると言うもの。しかし、そのどこでも、と言うのは、壁があっては通用しない。つまり、あなたの能力は、密閉状態になると意味をなさない。」
「く………」
ルーネスの解説が図星だったため、ゼルギアは表情を歪めて睨む。
「貴様ぁ……」
「散々暴言を吐いておいて、自分が対象になると苛つくのですか?哀れですね。」
苛つくゼルギアを嗜めて、ルーネスは笑いながら、金色槍を引き、そして、
「『金色森羅の万象炎』」
そう小さくつぶやいて槍を投げた。今までの攻撃とは比べ物にならないほどの速度でゼルギアに迫ったそれは、ゼルギアの青剣とぶつかった瞬間に大きな爆炎を上げて大爆発した。
『緑結晶の円状型空間』を破壊して、金色の爆炎が、キノコ雲を作って大気に溶けていった。
そして、その中心地で、自分の攻撃を受けた火傷だらけのルーネスと、傷を負いながらも、仁王立ちしているゼルギアが睨み合っていた。
「内心では焦ったが……所詮は弱小魔人。我を倒すには火力不足だったようだな。」
「う……」
瞬間移動で前まで詰め寄られ、腹に剣の柄を叩き込まれ、くの字に曲がって、ルーネスが倒れる。口からは血が溢れる。
「金よ。貴様はここで終わりだ。我の剣で首を斬られるか、そのまま苦しんで死ぬか。どちらを選ぶ。」
ゼルギアが青剣をルーネスの首筋に突きつけて聞く。
ルーネスは血を吐きながら苦しみ、ゆっくりと体を起こすと、最期の慈悲とばかりにゼルギアが選択肢を言い放つ。それを聞いたルーネスは……
笑った。
「何がおかしい?」
「いえ。何でもありません。ごほ……。私は……」
ルーネスが下した決断は……
「どちらも選びません。」
「………そうか。」
その言葉を聞いた途端、ゼルギアが回転にして、高速でルーネスの首を刎ねようとした。しかし、
「グルァ‼」
「何⁉」
その刃と首筋の間に、薄い刃の剣が割り込み、斬撃を防いだ。そして、そのままゼルギアを吹き飛ばす。
「ルーネスさん‼」
「原野……様…。」
駆け寄った原野が回復薬をルーネスにかける。少しずつ火傷が治癒されていき、回復していく。
「グルルルルルル。」
「なんだ?貴様は。」
「………あれは」
「高谷君‼任せたよ‼」
「グルルルァァッ‼」
「チ……凡夫が。」
『不死』となった魔神の駒、高谷が、ゼルギアと相対する。
「快斗様は……」
「今、エレジアって人と闘ってる。』それより、ルーネスさんは一旦戻るよ‼」
「ええ。……わかり……ました。」
原野が援助しながらルーネスを立ち上がらせ、二人は『怒羅』の店に向かう。
「高谷君‼死なないでね‼」
原野が振り向いてゼルギアと睨み合う高谷に叫ぶ。その声を聞いて、高谷は振り向いて、
「ッタリ、マエダァァァ‼グルァァ‼」
「雑魚が。図に乗るなぁ‼」
2閃闘士、ゼルギア・ヘルロンドと、『不死』となった魔神の駒、高谷の戦いが始まる。
ルーネスは目を瞑りながら、ゼルギアに言われたことを思い返して、思考に浸るのであった。
戦闘シーン書くのがムズい……。