新たな世界
光がやんでいく。視界が晴れていく。暖かい光が晴れると同時に、少女は目を開ける。そして、少女は目を見開いた。
そこには先程までいなかった、長い白髪を持つ女性がいた。
少女は一瞬脅えて後退りした。が、直ぐにその人間に近寄っていった。
それは何故か。
その白髪を持つ女性が、この世の終わりかのように咽び泣いていたからだ。
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光に包まれる。暖かい光に。どんどん色が甦っていく世界に目を開けて、そして直ぐに視界が歪む。目から水滴が流れ落ちる。
それは涙。頬をつたる、暖かい涙。空のように真っ青な瞳は悲しみにくれ、どこを見据えるでもなく地面を直視する。
流れ落ちないように手で擦るのに、それは止まることなく溢れ続ける。鋭い爪の生えた両手が、涙でびしょびしょになる。
「大、丈夫………?」
そんな泣いてばかりの者に、耳にすっと入り込んでくる澄んだ声がかけられた。衝撃に顔を上げる。その目に映ったのは小さな少女。
初めて見た時、その子をみすぼらしくも可愛らしいと思った。くりくりとした緑色の瞳。握りしめられた小さな拳は震えている。
その拳とは反対の手。その手は頭の上に置かれていて、慰めるように撫でてくれている。
「泣か、ない、で…………」
優しい言葉。心を包み込むような、安心出来る言葉。
「ん………」
少女は涙を流したままの女性に抱きついて、全身を温めるようにくっつく。
許されたような気がして、縋るように女性は少女に顔を埋めて泣きじゃくる。
そして口を開いた。大量の血と共に、悲しみにくれた、小さなかすれ声を。
「ごめん、なさい…………」
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「さぁて、今度はどこにぃい~♪」
独特な音程で話す男が、眼前で様々なことを映し出す巨大なスクリーンの前で腰を振りながらボタンを弄っている。
「おぉっとぉ?これはこれは………不思議な周波だなぁ⤴」
そのスクリーンに見覚えのないものが写ったので、男は体をくねくねさせながら振り返る。そこには1人の背の低い女性が膝まづいている。
「じゃあじゃあ、君はこの世界に行ってみようか。」
「………私は何をすれば?」
「とりあえず、この世界でノルマ分の力を集めて?そしたらわっちらが頑張って回収してあげ~るから♪」
「はぁ………」
嘆息する女性は、その不可思議な動き特徴の男を無視するように背を向けて、その場を後にする。
「頑張ってぇ~~!!」
「面倒くさいなぁ。」
背中にかけられるその煩わしい声に表情を歪めながら、その背の低い女性はその『世界』から、別の『世界』へと飛んで行ったのだった。