セルティア・フロスト
高「どうも、高谷です。今日は風が強いですね。では、俺の獄値を公表しましょう。」
名:高谷?? 種族:魔人 状態:正常
生命力:800 腕力:550 脚力:580 魔力:650
知力:600 獄値:1590
「ううぅ……これ、難しいな。」
王の間の前の壁に隠れながら、原野は片目を瞑って自身の能力をフル活用していた。
『死者の怨念』。その汚れた魔力を、彼女は腕と化して王の間の中のエレメンタルストーンを盗ろうとしていた。
今は、原野一人しかいない。高谷は、窓の外へ行ったっきり、帰って来ない。
「作戦だけちゃちゃっと伝えて、どっか行っちゃうなんて。でも、信じるしかないんだよね。」
原野は自身に活を入れて、高谷から借りた『血眼』を動かして、エレメンタルストーンを視界に捉える。
「………よし。」
それから、前にいる兵士二人に気づかれないように、地面から『死者の怨念』を発動。紫色の白身がかった腕が、エレメンタルストーンを掴んだ。
そっと持ち上げ、音をたてないように引き戻す。そして、台座から少しずつ離れて『血眼』を動かし、王の間の椅子の後ろ、夜風が吹き込んでくる全開の窓に向かって、その石を投げようとした。と、そのとき、
「わ⁉」
原野の隠れている方向とは逆の方向からいきなり、「王よー‼」という声が響いた。その声に驚いた原野は小さな悲鳴を上げて、『死者の怨念』へ向けていた意識が散らかった。そのため、
(あーー‼)
見事に『死者の怨念』からエレメンタルストーンがずり落ち、その音を聞いた兵士の一人が見下す姿勢で、腕を組んだまま、じっと『死者の怨念』を見下ろしているのが、『血眼』に写った。
(もう、やけくそー‼)
原野は集中力をガンアゲして、エレメンタルストーンをガシッと掴んだ。それと同時に、兵士が剣、細剣を引き抜いて、『死者の怨念』を斬り裂こうと、刃を振るう。
斬り裂かれる寸前で、原野は空いている窓に向かって投げた。兵士は『死者の怨念』を斬り裂いたあと、投げられたのがエレメンタルストーンと思い、ギリギリ視認できるほどの速度で、窓の外へ跳んだ。
そして、もう少しで掴むことができるというところで、
「させるかぁ‼」
「ッ⁉」
真上から、昼間に買った剣を振りかぶりながら、高谷が飛び降りてきた。
振るわれた刃を、体を捻って躱し、そのまま回転して細剣を横から叩きつける。
ギリギリで高谷が体と刃の間に剣を滑り込ませ、投げられた物をキャッチしたまま、横へ吹き飛ばされて行った。
兵士は高谷を追うべく、城の壁を蹴って高谷を追う。
「ぐはっ‼」
地面へ勢いよく背中から着地した高谷は、衝撃で内蔵が揺さぶられるのを感じながら、次に迫る追撃に備えるために立ち上がって剣を構える。
空中から凄まじい勢いで兵士が迫り、高谷が構えている剣へ勢いよく細剣を叩き込んだ。
ギンと音がして、剣と剣がぶつかり合い、火花が散る。そして、押される勢いに負けて高谷が弾き飛ばされる。耐えようと踏ん張るも、あまりにも強いの勢いには勝てず、地面を転がる。
「クソッ‼『血晶』‼」
立ち上がった高谷に追撃を入れようと、またもや迫る兵士の攻撃を防ぐだめ、高谷が手首から流れる血を使って壁を作る。
しかし、
「そんなもので私の攻撃を防げるとでも?」
「なっ⁉」
その防壁は、兵士の細剣に安安と破られ、高谷の頬をかすめて血を流す。
「やっぱり、あんたは普通の兵士じゃないみたいだ。」
「当たり前ですわ。私はセシンドグロス王国の2閃闘士が一人、セルティア・フロストですわ。」
「ほー。めちゃめちゃ強い人じゃないすか。」
「貴方は、この世界の者と顔付きが少々異なるように見えます。もしや、転生者ではないですか?」
「そうだよ。俺は転生者。『侵略者』の隊員の高谷だ。」
「ご丁寧な自己紹介に感謝いたしますわ。」
両者、お互いに剣で押し返し、二人の距離が開く。セルティアは片手で剣を構え、姿勢をビッと正して、魔力を高める。
高谷は、テニスとか前のように前屈みになり、いつでも動ける大勢へと移る。
「『氷飛沫』」
セルティアがそう呟くと、足元から小さな氷の粒が連なって出現し、組合わさり、2つの塊が出来上がる。それが徐々に形を成し、やがて、巨大な腕となった。
「『白熊の腕』」
鋭い爪が備わった大腕は、セルティアが呟くと同時に高谷へ殺到する。距離を取りつつ回避をして、セルティアから距離を離す。しかし、
「逃しませんわ。」
セルティアが走ると、それに合わせて腕が移動し始め、あっという間に追いつかれてしまう。
「『吹雪』‼」
「な⁉」
セルティアが細剣を振るう。すると、何処からか白銀の爆風が高谷にのしかかり、首筋や、手首足首を凍らせていく。
「くそ‼」
足が動かなくなり、火炎魔術で溶かそうとするも、その魔術でさえも掻き消されてしまい、意味がない。固有能力を使うにしても、体に氷の層ができ始めているので、傷をつけることが叶わない。
「ハァ……ハァ……。くそが……。ぐっ⁉」
「やっと捕まえましたわ。」
走る速度が落ち始め、唯一出来ていた頬の傷も凍らされてしまい、成す術がなくなった瞬間、後ろから勢いよく大腕で掴まれ、身動きが取れなくなる。
しかも、大腕にも凍らせる効果があり、積まれたせいで、ガッチリと腕の中に固定されてしまった。
「ぐぅ……く……」
「壊す事など不可能ですわ。さて、貴方が奪っていったエレメンタルストーンを返してもらいましょう。」
「チクショウ‼」
セルティアが高谷が握っている左手の部分だけに穴を開け、かじかんで力が入らない左手をゆっくりと開けて、中身を取る。
高谷の考えた単純な作戦は、セルティアの予想外の強さによって打ち砕かれた。と、思われたが、
「?なんですか?これは。」
高谷が握っていた物、それは、原野が思いっきり投げた、『血眼』だつた。
「残念。俺はダミーだ。本命はあっち。原野と本体の俺だ‼」
「なっ⁉」
「今から向かおうってのか?そうは行くか‼」
高谷の言葉に驚愕したセルティアは、踵を返して城に戻ろうとしたが、突如、『血眼』が液体上に壊れ、それが糸となり、セルティアを縛り付ける。
「こんなもので、私を拘束しようとでも‼」
セルティアは、固有能力『氷の相愛者』を使い、血の糸を凍らせていく。しかし、
「言ったでしょ。あっちには本体がいる。てことは、俺は血でできた分身体。あんたを留めるには十分な量だ‼」
高谷の体の中で熱が発生。徐々に内側から体を溶かし、自らを液体状の血に変え、そのすべてがセルティアを再び拘束した。先程よりも太い縄で、強く締め付ける。
「私の能力の前に、貴方の能力など非力ですわ‼」
セルティアは再び、血の拘束を、固有能力によって脱出しようと試みた。が、
「な……。熱い?嘘……まさか、拘束するのではなくて………」
「『炸裂する流血』‼」
「まず……‼」
何処からか響いた高谷の声に合わせて、血の拘束が熱を発し始め、赤黄色い炎を発しながら細胞が炸裂。それがいくつも連続で起こり、大爆発となり、セルティアを至近距離から爆撃した。
空き家をいくつか巻き込んで、快斗の『魔技・巨獣の咆哮』ほどでは無いが、小さいとも言えないクレーターが出来上がり、その真ん中には、煙を出しながら体を震わせて気絶しているセルティアが寝転んでいた。
原「皆さんこんにちわ、原野です。今日は、作者さんが犬の散歩行こうとしたら風が強すぎて萎えたらしいです。そんなことは置いておいて、私の獄値です。よかったらご覧ください。え?弱いとか言わないでよ‼」
名:原野花凛 種族:魔人 状態:正常
生命力:600 腕力:520 脚力:510 魔力:600
知力:590 獄値:1410