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罪深い男の想像話  作者: 病み谷/好きな言葉は『贖罪』
《第一章》 怒る彼は全てを殺し尽くす
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疑問?

異様な魔力の気配に、事務作業に疲れ果てて寝ていたベリランダが飛び起きた。


「な、なに………?」


背筋が凍るような、恐怖を感じさせる魔力。ベリランダであっても、それは体の奥底から彼女を震え上がらせるほど邪悪なものだった。


そして、そのすぐ後に急激に体調が悪化する。


「あ、がが………」


腹痛、目眩、倦怠感、頭痛、吐き気、発熱。ありとあらゆる症状が現れ、ベリランダは咳き込んで壁に寄りかかる。


「な、なんなの………」

「キュイキュイ!!」

「?」


いきなり現れた症状の原因を探ろうとした時、背後から声が聞こえた。振り返ると、そこには荒い息をするキューがいた。


「キューちゃん………どうしたの………?」

「キューイ!!」


キューは1度体をそらすと、反動で体を前のめりに押し倒した。すると、それと同時に中に入っていた人間が雪崩込むように飛び出してきた。


「うわぁ!?」


驚いて声を上げるベリランダ。そして瞬時に、その人間達、ヒバリ達の容態を確認した。


「同じ症状……げほ………」


ヒバリ達を川の字に並べ、一人ひとり症状を確認したが、全員全く同じ症状だった。


「なんで、こんなことに………」


ベリランダは原因を考え、そして、この人々が外から来た理由を思い返す。


それは、ベリランダが寝付くほんの数秒前、エレスト内に突如として強大な魔力が出現した。が、その魔力の気配が快斗のものであると、ベリランダは瞬時にわかったのだ。


それに反応して駆け出していく人々の気配も察知していた。魔力の正体が快斗なら問題ないだろうと、ベリランダは眠ったのだ。


が、こんなことになってしまった。現在遠くで反応している魔力は3つ存在し、1つは快斗のもの、もう1つは後から快斗達に合流したという破壊神のネガの魔力。


しかし、最後の1つに覚えがない。感じたことの無いほどのおぞましい気配だった。そして、未だここにいない仲間の1人、こういった状況で1番頼りにされるのは、


「回復薬の、高谷って人………!!」


無限に再生する体を持つ彼がおらず、しかも快斗と共に神を殺しに行ったと聞いた。ならば共に戻ってくるのは予想が着く。


そして今、どこを探っても彼の魔力はない。


「これの正体は、彼だと言うの………?」


少々信じられないが、ベリランダは敵を高谷と仮定して考えを進める。


何故、このような症状が皆に現れたのか。城の中を歩き回るメイドや役人はいつも通りだったのだ。


「ベリランダ様ー!!」

「ッ、何………?」

「なんだか分かりませんが、兵士様達の容態が急に悪くなって………何人も倒れた人々が運ばれてきてます!!」

「なん、ですって………」


確かにこの国の中にベリランダ達と同じ症状を持つ者がいるようだった。ベリランダは頭の中を整理して、高谷がこの症状を発生させる原理を考える。


悪い症状というものは、体になんらかの異常がある時に現れるもの。高谷の血を操る能力を踏まえて考えると、体内に何かを仕込まれた可能性が高い。


なら何を仕込まれたのか、それはベリランダの役人への質問で答えがわかった。


「体調を崩している人達の、共通点は………?」

「きょ、共通点ですか?」

「早く答えて!!」

「は、はい!!体調を崩された方々はほとんどの人々が兵士や戦士、冒険者の役職に就いている方で、特に、太陽神討伐に加わった人々が多いようです!!」

「………なるほど、ね。」


ベリランダの憶測は正しかったようだ。その答えを聞いて、ベリランダはこの症状の原因が、高谷の血であることを見抜いた。


「全員に治癒魔術をかけて。」

「既に行いましたが、容態は回復せず………」

「しなくてもいいからやるのよ!!体が少しでも楽になるのなら………それにこしたことはないんだから。」

「り、了解しました!!」


役人はそそくさと扉を閉めて駆け出していった。治癒魔術で治せないとは、なんとも面倒なことをしてくれたなとベリランダは歯噛みする。


「………どういうことなのよ、全く………」


皆を瞬時に回復させる血を配布していた高谷。人々を癒す彼を、ベリランダはある種尊敬していたのだが、それはこうして皆を体内から追い込むための布石だったとは、流石のベリランダでも分からない。


「………ダメね、今からやっても遅いわ。」


ベリランダは魔力を自身の血に流し込み、体内から異物を除去しようとしたが、確認したところ、高谷の血は体内に取り込まれ、あらゆる細胞から体の隅々にまで浸透している。


それこそ、眼球や脊髄、脳にまでも侵食していた。


「おぞましい、わね………」


確認したベリランダも、少し後悔してしまうくらい恐ろしかった。もしかしたら、ベリランダが考えていることも脳に浸透した高谷の血から読み取られてしまうかもしれない。


「気持ち悪い………」


吐き気と高谷の行いの外道さの両方にそう文句を言って、ベリランダはこの部屋にいる人と自分に回復魔術をかける。


普段なら大病も大怪我も僅か数秒で治せるベリランダの回復魔術も、高谷の血の前には無力だった。


「何が目的なの………?」


たった今戦っていると思われる快斗と高谷。それに参加せずに遠くで別のことをしているネガ。何故このような状況になったのか、ベリランダにはさっぱり分からない。


だが、世界の英雄となった快斗とここまで本気で戦っている時点で、なにか大きなことをしでかしているのは分かる。


仮に、これが世界征服だったとしよう。戦う能力を持つ人々をこうして無力化させるというのは、ベリランダからみても確かに上手い戦略だった。


特に強くて前線に出ていた人々は傷つきやすく、血を大量に飲んでいた。体を治すために。


ベリランダはあまり血を飲んだことがないため影響は少ないと推測した。ベリランダよりも、何度も何度も血を飲んでいるライトやヒバリは症状が重い。


「やっぱり、量、なのね……」


未だ目が覚めないこの前衛陣はやはり重症。ここはベリランダがなんとか食い止めなければならないが、


「ぐ………」


ベリランダもそう長くは持ちはしないだろう。これは苦しい持久戦だ。


「早く……天野……って、あれ?」


ベリランダはここで、ふとした疑問を思い浮かべた。誰よりも高谷と仲が良くて、1番彼の血を飲んでいるであろう人間がいたのだ。


「なんで、天野は………あんなに動けるの………?」


今感知するのもギリギリな動向の彼を思い浮かべて、解のない疑問を抱いた。

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