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罪深い男の想像話  作者: 病み谷/好きな言葉は『贖罪』
《第一章》 怒る彼は全てを殺し尽くす
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「ッ!!」

「ふ………」


羅刹が鉤爪を振りかざし、暁がそれを受け止める。2人の体には簡単に耐えきれる衝撃だったが、地面は砕けた。


羅刹の体重が乗っていた攻撃。それはダメージを与えると同時に、暁を押さえつけて動かさないようにする狙いもあった。


が、そんなのは暁には関係ない。


時間をとめてしまえば、のしかかる力も無に等しい。どれだけ強い攻撃も、当たらなければ意味が無い。


「せい。」


軽く振るわれた斬撃。それに続いて残りの4本の刀も振り下ろされた。それぞれの刃が羅刹の腕や足に直撃した。が、『絶斬剣』を持ってしても、斬れるか斬れないかは五分五分だ。


羅刹の本気の『無敵』は、絶対に斬れるという能力も打ち消す時がある。


どんなダメージも無効化する『無敵』と、どんな物も必ず斬る『絶斬剣』。2つの能力がぶつかって矛盾が生じる。


そして、本気の羅刹は、これでは止まらない。


「ッーー!!!!」


声のない叫びが響き、時が止まった世界の中で、羅刹の体が震えた。暁は攻撃を止めることなく、鬼丸国綱を振るう。


幾千の斬撃が時をとめた世界だというのに容赦ない速度で叩きつけられる。


が、それが衝撃となっているのか、徐々に羅刹の体が動き出し、そして遂に羅刹は止まった時を克服する。


「ッッ!!」

「む!!」


ガラスが砕けるような音と共に、時を止めるという概念が破壊された。時が止まれば暁以外は動けないという絶対的な概念の中で羅刹が動くことで、時は無理矢理動き出す。


概念に逆らって動くという行為は体に莫大な不可がかかる。しかし羅刹は『無敵』。その不可でさえも、羅刹のその力で無効化された。


「やはり、貴殿は強い!!」

「ッーー!!」


羅刹が大きく踏み出し、大きな拳を振り下ろす。その中心に、暁の小さな拳が真正面から打ち返される。


『怪力剣』によって力が上がり、『五神剣』によって何倍にも増やされる。今の暁の拳なら山なんて簡単に吹き飛ばせるだろう。


打ち返された羅刹はとまることなく、連撃をかます。


暁は全身に『怪力剣』を発動し、その連撃を正面から穿つ。


衝撃が辺りの石や瓦礫を吹き飛ばし、その勢いは何人も近づくことは出来ない。そもそも動きが速くて見えないのだから、本能的に近づいては行けないと分かる。


何度も何度も強い打撃がぶつかり合い、最後には衝撃が爆発して双方吹き飛んだ。


ステータスが3125倍になった暁の拳は血まみれだった。それほど強くなっても、概念すら乗り越える羅刹の本気の攻撃では暁の拳は肉が破裂してしまうようだ。


対して羅刹にはダメージがない。『絶斬剣』を使わなければ、羅刹にはダメージを与えることは出来ない。


『絶斬剣』ですら確実に斬れる訳では無いのだ。常に発動させておく必要がありそうだ。


「やはりこれは……死に際の戦いでござるなぁ!!」


『全能剣』は強すぎる力ゆえ、処理する脳には多大な負担がかかる。鼻血を流す暁は、それほどまでに必死に戦わなければならないこの瞬間を楽しんで笑っていた。


「攻略は出来るでござる。あとは、拙者が落ちるか、貴殿が斬られて死ぬか………」


暁は髪を結び直し、上の服を脱いだ。小さな胸に巻かれたさらしと、傷がいくつかついた体が露出した。極限まで重りを減らし、体を軽くする。


「今度こそ、本当の本気でござるよ。必ず、貴殿を斬る。」


今までの叫び声とは違い、本当の殺気が放たれる。羅刹ののしかかる殺気とは違い、静かに首を切るような、静かで鋭い殺気。


羅刹もヴィオラも震撼して、暁に恐怖する。完全な脅威。羅刹も過去の戦いを思い出しそうになる。


ふと、羅刹は少し目を見開いた。


かつて仲間だった、誰よりも足が早かったある少年と、暁が重なって同じに見えた。


その瞬間に、何故か胸が熱くなる。羅刹が自分の生きてきた中で、1番の戦いだったあの時を思い出して、暁を本気で殺すつもりになる。


「………殺。」


静かな言葉。羅刹が初めて発した言葉。それは、暁が地面を蹴るタイミングとほぼ同時だった。

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