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罪深い男の想像話  作者: 病み谷/好きな言葉は『贖罪』
《第一章》 怒る彼は全てを殺し尽くす
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本当のサリエル

「そんなこともあったなぁ……」


懐かしい記憶に、サリエルは口元を抑える。そんなこんな考えているうちに、ニグラネスは扉が開く寸前まで引っ張っていた。


中から漏れて来る魔力。安心感に満ちた暖かい魔力は少しずつサリエルに集まり初め、ニグラネスの残骸は徐々に消えていく。


もう半透明になって、力も弱まっている。扉を開けるには、サリエル自身の助力も必要なようだ。


「よいしょ。」


開けかけた扉の隙間に手を入れて持ち上げる。『天の鎖』で地面に着いた扉を引っ張りあげ、しなる音共に魔力が溢れはじめる。


サリエルはその魔力によって消えてゆくニグラネスの残骸に声をかける。


「あの日、私はあなたの友達になれて本当に嬉しかった。あなたと一緒に弓神を殺したよね。覚えてるかな。」


過去の栄光。今はもう出来ないその禁忌を笑い話にして、サリエルはニグラネスに別れを告げる。


「手伝ってくれてありがとう。人生の分かれ目も思い出したし、これで、高谷君と原野ちゃんを助けられるよ。」


サリエルがそう言って、透明になっていくニグラネスに笑顔を向ける。すると、ニグラネスの残骸はその手をサリエルの頬に添え、ゆっくりと撫でた。


「頑張れって、言ってるの?」


その動きの意図を察する。なんて優しいのだろうと、サリエルは目を瞑って涙を滲ませた。


「絶対、私勝つから。見守っててね。ニグラネス。」


その言葉を最後に、扉が大きく開いた。凄まじい光が、サリエルを包み込んだ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「せぃやぁ!!」


光の速度で踵を落としたライト。しかしそれはアテンの振るわれた軽い拳撃に押し返され、波動が空気をふるわせた。


「はぁあ!!」


その逆方向から回転し続けている右輪をネガが振り下ろしたが、刃が『陽剣』に受け止められ、回転が止まった右輪ごとネガが吹き飛ばされる。


破壊神とはいえ、ネガはまだ神の位を授かって間もない。アテンのようなベテラン神にはまだまだ及ばないようだ。


「ォォオルァッ!!!!」


その2人を完全に無視して、圧倒的物量でアテンを真上から推し潰そうと、高谷が雄叫びを上げながら拳を振り下ろした。


『陽剣』で受け止めたが、その力はアテンより先に地面を破壊し、陥没、ひび割れ、粉砕され、地面が爆裂する。


その勢いを『陽剣』で流し、回転して高谷の横っ腹に踵をねじ込んだ。


あばら骨が砕けて心臓を貫き内臓が潰れて血が胴体に着いた大口から大量に吐き出された。吐血はアテンの左半身を濡らした。


「死ね。」


その瞬間、血かは火が吹き出し、炸裂して大爆発を起こす。服に着いた血は簡単には取れないため、確実にダメージが入っただろうと高谷は判断した。


爆風で飛んだ高谷は空中で体を修復し、万全な状態で地面に降り立った。


爆煙の中、アテンにダメージが入っていると予想していた高谷は、服でさえ汚れていないアテンの姿に驚愕した。


「なにした?」

「簡単だ。服に着いた血を蒸発させた。外側からの攻撃なんぞ私の服を汚すことすら出来ないぞ。」


高谷の反応速度を超えた速さで、アテンは熱によって服に着いた血を蒸発。空気中に散布させて爆発威力を抑えた。


「ふん。」

「ふ………。」


説明を終えたアテンはそうそうに『陽剣』を振り下ろした。熱波が斬撃となり、空気と地を裂く光となる。


事前動作もなく高谷は斬撃範囲から身をずらし、アテンに飛びかかる。しかし高谷の攻撃があたる前にアテンの右腕が高谷の腹をぶち抜いて内側から燃やそうとしてくる。


完全な『不死』の状態では無いので、心臓は死守しなければならない。それを仲間もわかっているので、主戦力の高谷を守ろうと体を張る。


「『弱身冷夏』」


暖かくも冷たい氷がアテンを包み、アテンのステータスを微量にも下げる。それを察知したアテンは、術者のメシルに左手を伸ばして小さな太陽を放つ。


その速度は割と速く、片足のメシルなら躱せないと判断した。が、メシルは焦るどころか笑ってアテンを睨んでいた。


瞬間、アテンは右腕に標準を合わせられたスナイパーの存在に気がついた。が、既に弾丸はアテンの右腕の寸前まで迫っていた。


「確定演出!!その右腕を退かしてください!!」


遠くの岩の隙間からスコープを光らせるヒナがそう叫んだ。小さな太陽はエレジアが地面を隆起させて何とか防いだ。全員、その弾丸によって右腕が動き、高谷が自身で動こうと考えていた。


が、アテンはそう甘くなかった。


「ふんっ!!」

「がは………!?」


アテンは弾丸が当たるより先に天高くに高谷ごと飛び上がった。その場にいる誰が飛んでも間に合わないほどの高さに。


「なっ!?」

「く……はやく装填を……!!」


ヒナが次の弾丸をスナイパーに装填しようとする。それを見てアテンが右腕に魔力を集めた。


「燃えろ。」

「ぐ、ぁぁああぁぁああ!?」

「高谷さん!!」


内側から焦がされていく感覚は初めての高谷。流石に痛み軽減が発動していない中でそんな攻撃を受ければ痛みに悶えるのは当たり前だ。


その炎の速度は速く、ヒナの弾丸装填は間に合わない。空中に届く者も居ない。


マズイ。そう全員が思った瞬間だった。


天から落ちた輝く剣が、アテンの右腕を貫いたのは。


「なっ!?」

「………あ?」


右腕の意外な惨状にアテンが高谷から手を引き抜いた。再生しながら落ちていく高谷を、いつの間にか先回りにしていた誰かに受け止められた。


目を開けてみると、その人は輝きに満ちた美しい少女だった。自分より重いであろう高谷の体を羽を持つように軽く持ち上げ、地面にゆっくりと下ろした。


薄桃色の神に、頭の裏には神々しい金色の輪っかが羽のように広がって光が充ちている。翼も2本ではなく4本になり、そして高谷が見知っている姿よりも背が少し伸びていた。


「………サリエル。」

「うん。間に合ったみたいだね。高谷君。キューちゃんもお疲れ様。」

「キュゥイ!!」


地面に降ろされたキューは、ヒナの隠れている瓦礫の山まで駆けていった。


「本来の姿がそれなのか。」

「うん。元々がこれ。実力は遥かに上になったよ。」


自慢げに語るサリエル。その微笑ましい姿に、高谷は少し表情が和らいだ。


「あいつの腕を貫くぐらいまで強くなったんだ。いい戦力だよ。」

「うん。高谷君と原野ちゃんを守る。私と戦ってくれる?」

「もちろん。」


サリエルと高谷が同時にアテンに殺意を向ける。アテンも天使、回復技も持っているので貫かれた右腕も再生していた。


「いいだろう。裏切りの天使もようやく元に戻ったか。私も力の出しがいがあるというものだ。」


アテンの纏う魔力の量も増える。退治する2人は殺気で魔力を練る。


本当のサリエルの参戦により、この勝負、どちらに勝利が与えられるか、分からなくなってきていた。

名:サリエル 種族:天使 状態:正常

生命力:23000 魔力:31000 腕力:25000 脚力:21300

獄値:50150

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