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罪深い男の想像話  作者: 病み谷/好きな言葉は『贖罪』
《第一章》 怒る彼は全てを殺し尽くす
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破壊神参上!!

「『火炎陣・激炎』!!」


針のように刺々しい炎が地面を埋めつくし、巨大な『ヒト』を何本もの針で串刺しにした。


「『氷結陣・氷柱』!!」


燃やされて呻く『ヒト』に、容赦なく天空から氷柱の雨が降り注ぐ。寒暖差に細胞が破壊され、『ヒト』に大きなダメージを追わせる。


「『暴風陣・迅風』!!」


最後のダメ押し。真横に振られた刀に沿って、鋭利な風わの刃が『ヒト』を真っ二つに切り裂いた。生命を維持できなくなった『ヒト』は断末魔をあげ、ゆっくりと倒れて死んだ。


と、見せかけて、『ヒト』は最後に1つ反撃しようと鋭い触手を暁に突き出した。


「GLLLLL!!!!!!」


その素早い攻撃を見切った獅子丸が、真っ白な触手に噛み付いた。それから首をブルブルと振るって、引きちぎった。


そして、鋭い爪が生えた巨大な足で、『ヒト』の頭部のようなも頃を踏み潰した。


「よくやったでござるよ獅子丸!!」

「ゥバウ!!」


獅子丸は暁が飛んで喜ぶのを見て戦闘が終了したと判断して元の姿に戻った。暁の肩に飛び乗り、頬ずりをして甘え始める。


「うむ。お手柄お手柄。獅子丸は強いでござるなぁ。」


暁もそれに応えるように獅子丸を撫で回す。この状態の獅子丸はとても小さく、暁の両手のひらで簡単に持つことが出来る。


「さて、では悪魔に加勢に……」


そう言って獅子丸を頭の上に乗せ、快斗の加勢に駆け出そうとした時、ふと、背中に強い寒気を感じた。


「ひ………」


あの暁が小さく悲鳴をあげ、その気配がする方向を振り返った。その方向に何があるのか、頭の悪い暁には分からなかったが、その気配は、昔どこかで感じたことがある気がした。


トラウマという形で、脳内に刻みこまれたその気配に、久しぶりに暁が怯えた。


しかし、すぐに頭を振って、その気配のことを忘れる。それが存在することなど有り得ないと。


そう自分に言い聞かせて、暁は快斗の加勢に向かうために走り出す。だがやはり、頭の隅にはその気配のことが引っかかっていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


殴った感触が変わったのは、戦い始めて10分が経過した時だった。


「あ?」


ヴァイスの頬を殴った時、今までは骨が軋む感触が伝わってきていたというのに、たった今殴った感触は、硬い岩を殴っている感覚に似ていた。


そしてそれは、快斗が突き出した拳による効果が薄れたことを意味している。そして、快斗はすぐに腕でガードした。また何か、ヴァイスを強化するようなことが起こってしまったのではないかと。だからゆっくりとこちらに顔を向けてくるヴァイスを警戒した。


しかし、その表情は快斗の思っていたものとは違った。振り返ったヴァイスの表情は、怒りに満ちたものでも、悲しみにくれたものでもなく、つまらないものを見るような、平凡な表情だった。


だというのに、いつの間にか快斗の顔面にぶち込まれていた拳の威力は、先程までには比べられないほどに強かった。


「ぶっは……」


鼻が潰れそうな痛みを感じながら、快斗は吹き飛んでいく。地面と平行に飛ぶ快斗にヴァイスが追いつき、今度は快斗の腹に拳をねじ込んだ。


「かっは……」


快斗は空気の抜けたような悲鳴をあげ、ひび割れる地面に陥没する。口から溜まりに溜まった血塊を吐き出し、骨がボキボキと鳴く音を聞いた。


ヴァイスはさらに拳を振り上げたが、飛んできた巨大な『炎玉』を避けるためにその場から飛び退いた。


『悪魔、無事!?』

「あぁ………多分、な………」


戦場の3分の1程度の地面が、ヴァイスが快斗を地面にたたきつけたことによる衝撃でひび割れた。その威力に驚きつつも、ベリランダはそれに耐えて生きている快斗の方を心配する。


『死なないでよね、アタッカーはあんたなんだから!!』

「あ、あぁ。ごっほ……」


滝のように流れる血を吐き出し、快斗は自分のでは無い血を飲んだ。ベリランダから貰った、高谷の血だ。


「あーすげ。これマジでそこらの回復薬よりも効果あるな。」

『ほらよそ見しない!!次来るわよ!!さっきよりもなんだか強くなってる!!』

「わーってるよ!!」


もう高谷の血のストックはない。どうにかして負傷を防ぎつつ、ヴァイスを殺す方法を探る。


しかしそんなことをしていられるほどの余裕があるのかといわれればないと言わざるを得ない。なんせ、ヴァイスの動く速度とその威力に、快斗が全く追いつけないのだ。それは、ベリランダもまた同じ。


『どうなってるのよ!!』

「わっかんねぇよ!!」


必死に草薙剣を振り回し、ヴァイスを切りさこうとするが、刃を振るえば既にそこには姿がなく、いつの間にか頭上や背後などの死角に回れて攻撃されてしまう。


それになんだか不思議なのは、ヴァイスに攻撃される度に、体の奥底でなにかが疼くような感覚がある事だ。


「クソが………なんだってんだよ!!」


快斗も長い足を空気が切れるほどの速度で振るうが、真正面からヴァイスと対峙すると脛が砕けそうな程に痛む。


快斗は苛立ちはしているが、それでも冷静にヴァイスの動きを分析しながら戦っているつもりだ。しかし、ヴァイスの動きが快斗の予想を超えすぎて対処が追いつかない。


修行を終えて早々にこんな強敵に当たってしまっては出鼻をくじかれた気分だ。


『悪魔後ろ!!』

「クソ………っ!!」


快斗を狙うヴァイスの視線は快斗の顔面を捉えている。思考力が低下しているヴァイスはフェイントなどせずに見たものをそのまま狙ってくるだろう。


拳を握りしめ、快斗はヴァイスが次に飛んでくるであろう場所にそれを突き出した。案の定、ヴァイスはその場所に向かって飛んできた。当たったと快斗が確信した時、


「あ!?」


蛇のように動いたヴァイスが快斗の攻撃を難なく交わし、地面を這うように移動してきたヴァイスの蹴りがもろに快斗の顔面に叩きつけられ、威力を殺し切れずに快斗は回転して地面に頭を強打する。


痛みに視界がキラキラと点滅した快斗。それを合図かのように、快斗の世界は時が止まった。


『い……ぞ…………て……いる……う……な。』


その瞬間に、快斗の脳内にノイズと共に誰かの声が聞こえた。嫌な感覚だった。奥底から気持ちの悪いものがモゾモゾと這い上がって来るかのような、吐き気を催す気分だった。


それは心臓部からゆっくりと喉に向かって昇っていき、そしてその動きを止めた。


『ほ……の…………きの……か。な……おれ………くは………いな。』


ノイズが響き渡り、キーンと耳鳴りがして、快斗の世界の時間が、動き出す。


戻った時には、快斗は空中に投げ出されていた。意味がわからずに混乱していると、真下のヴァイスから強烈なパンチを食らった。すぐさま腕でガードしたが、それさえも突破するほどの威力だった。


吹き飛び、されど休憩など許さないとばかりにヴァイスが快斗を追い詰める。


『頑張って生きて!!私も今から行く!!』


ベリランダが地面から起き上がり、快斗の方へ飛んでいこうとした。瞬間、


「動くな。」


ヴァイスが短く、ベリランダに振り返ってそう呟いた。特に魔術の気配もないただの忠告。その言葉に、ベリランダの身体中の本能が警戒音を鳴らして反応しなくなった。


『嘘………動けない………』


ベリランダが絶望している間に、快斗は必死に抵抗するが、やはり力量が歴然としているのか、快斗は耐えきれない。


「げっほ………」


血塊を吐き出し、もう足りなくなった血を求めるように地面に跪く。


ヴァイスはゆっくりと快斗に歩み寄り、その手を快斗の頭にかざした。


「お前は、そのからだを持つ資格などない。」

「何言ってんだよ……」

「お前に生きる価値などない。」

「残念ながらあるんだよ……」

「『天野快斗』に、意味なんてない!!」

「知るかっての。んなもん。」


ヴァイスが拳を振り上げた。殺気が一段と濃くなった。快斗はどうするかと思案する。走馬灯のように遅くなった世界で。


そして目を閉じた。諦めた訳では無いが、なんとなく眠く感じてしまったからだ。自身を一喝して目を覚ますが、どうやっても瞼が下がっていくばかりなのだ。


「あぁ………これって、まじやべぇやつじゃね。」


そんな言葉しか出てこない快斗。拳は目の前。避けるのは絶対不可。


「どうしようかな……」


もう選択肢などないのに、快斗は悩むような仕草を見せながら、顔面に近づいてくる拳を眺めていた。


そして、それがピンク色の魔力刃に貫かれたのも。


「………あ?」


快斗は痛がって快斗から距離をとったヴァイスを見たあと、ベリランダの方を振り返った。しかし、そこには驚きの表情のままのベリランダしかいない。


つまり今の魔力刃はベリランダのものではない。なら誰のものか、それは天空から響いた声で快斗はすぐに分かった。


「何をしているのだガキ。死にかけでは無いか。鬼神様が我に伝えなければ、今頃お前は地獄だ。」

「おっ、せぇぇ………」


桃色の長髪を揺らし、両手首には金色の腕輪を通した、豊満な胸を持つ女性。女性は地面に降り立つと、快斗を持ち上げて小さな岩の前に座らせた。


「今まで何してたんだよ………ネガ……。」

「面倒だったのだ。いつだってガキは割と上手くやっていたからな。だが今回は違う。魔神様も鬼神様も、あやつは危険と判断した。故に我が来た。」


女性、破壊神ネガが、やっとこさやる気を出して地上に降り立った。あまりに突拍子のない登場に、ベリランダを含め周りの兵士達は混乱している。


だが混乱している場合ではない。ヴァイスは今にでも快斗を殺す勢いだ。その視線を遮るように立ちはだかるネガ。ヴァイスとネガの視線が交差する。


「人間如きが幾年生をこじらせたのか。そしてそれが何を生み出したのか、見ものだな。」


面白げに腕組みをしたネガはそう言って笑い、腕輪を手首から外す。


「寝ているのだなガキ。ここからは我が奴の相手をしよう。」


ネガは瀕死の快斗に振り返り、優しくな微笑んで言った。


「お疲れ様だ。」


その言葉を最後に、ここで快斗は気絶した。

名:ヴァイス 種族:不明 状態:共感覚Ⅲ

生命力:20000 魔力:20000 腕力:24000 脚力:25500 知力:650

獄値:45075

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