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罪深い男の想像話  作者: 病み谷/好きな言葉は『贖罪』
《第一章》 怒る彼は全てを殺し尽くす
211/369

ここから………

「あ……?」


『怨念砲』発射に大興奮だったヴィクティムが、時が止まったかのように動きを止めた。轟轟と鳴り響いていた巨大装置も動きを止め、エレスト王国に静寂が訪れた。


「は………!!」


ルーネス達にかけられていた術が解け、体が自由に動かせるようになった。


ルーネスは外を見つめて動かないヴィクティムを見て、快斗の作戦が成功したことを悟った。これから起こることは、ルーネスは見たくなかったので目をそらす。


ルージュに目を合わせてみせると、ルージュは首を振ってヴィクティムに視線を向けた。どうやら彼の末路を見届けるらしい。キューはルーネスの膝の上で蹲っている。


「なんで『怨念砲』が消えているんだ!!クソ!!どうゆうことなんだよ………あれを打ち消せる人間がいたのか!?あの魔術少女に27倍してもらってそれでも打ち消した?意味がわからない!!」


地団駄をふんで装置を叩くヴィクティム。鋼鉄で作られた装置はその程度の刺激ならビクともしないはずだった。それがわかっていて、ヴィクティムは装置に八つ当たりをした。


だから、装置に大きな音がしてヒビが入る様子は、ヴィクティムの予想外だった。


「な………」


ヴィクティムが与えた刺激をトリガーに、装置は大きなヒビをいくつも走らせ、やがて崩壊した。


エレストに付属されたような巨大装置は瓦礫のように崩れ落ち、地面へと砂埃を立てながら落下した。


「はぁあああ!?!?なんで壊れるんだよォ!!」


全く状況が読めていないヴィクティムは癇癪を起こして怒りを表明する。


が、直ぐにその動きも止まった。


「あ、が………?」


この世界の真理を知らないヴィクティムには分からなかっただろう。何故装置が壊れたか。塵になりつつある装置には、どんな力が働いてそうなったのかも。


それは、今から嫌という程に体験することになる。反動は『怨念』も含んで装置を破壊した。行き先の亡くなった反動は、次の破壊先を見つける。


ヴィクティムは今、死が確定した。


「ああああああああぁぁぁ!!!!!!!!ぐ、ぐぐぐぅぅうううぁあああ!?!?!?」


左半身が膨れ上がり、内側から破裂する。血が撒き散らされ、ヴィクティムは地面に無様に転がり落ちる。


まだ止まらない。左足が灰となって崩れ落ち、右足は爛れて腫れて、ついには破裂する。全身が内側からぐちゃぐちゃに矯正させられて、ヴィクティムは痛みに悶える。


「なに、が………」


風船が破裂するような音が響き、ヴィクティムの下半身は弾け飛んだ。内臓が中を舞い、そこらじゅうを血染めにしてヴィクティムは動かなくなった。


それからしばらくルーネスとルージュはヴィクティムを見張っていたが、あれだけの致命傷を受け動きもしないので、死亡したと判断した。


「ふぅ………なんとかなりましたね。」

「えぇ。快斗様がして下さったようです。」

「はぁぁ……どうなることかと思いました………。」

「捕らえられた時などは特にそうでしたね。」


流石にルーネスも死を覚悟するほどにこちらはギリギリだった。快斗は無事に間に合ったようでよかった。反動を活かして殺すなど、到底思いつきもしないが、快斗の『真剣』あったが故にできた技であった。


ノーリスクでハイリターン。快斗の『真剣』は1日に1回きりだとしても十分に強力なものだった。いい恩恵をさずかったものだ。


「では、皆様を解放しましょう。きっと不安に思われておられるはずです。」

「はい。姉上。」

「キュイ。」


ルーネスの膝から飛び降りたキューが動かないヴィクティムの手の上に乗っかって飛び跳ねる。


「キュイキュイ!!」

「これを?」

「キュイ!!」


キューはヴィクティムの手首をルーネスに持たせた。ルーネスは嫌そうだったのでルージュが代わりに持ったが、それは後々でとても役に立った。


「なるほど。こういうことでしたか。」


鍵穴が見当たらず、どう閉めているのか不思議だった牢屋達は、ヴィクティムの指紋認証で簡単に開けることが出来た。キューは快斗にその可能性があると聞いていたので事前に調べていた。


タッチパネルがあったのでそう判断したが、これがパスワード系なら詰んでいた。


「女王様!!」


捕まっていた兵士達や国民は、ルーネスに泣きついて無事に助かったことに歓喜している。そんな流れでルーネスは全ての国民達を助け出すことに成功。城に残った魔道兵の残党はルージュ率いる『侵略者インベーダー』達が一掃した。


「皆様ご無事で何よりです。」


浮き上がったままのエレストにはまだまだ魔道兵が残っているが、幹部的存在を1人消せたのは大きな進歩であるだろう。


「上手く行きましたよ。快斗様。」

『おおマジ!?やっぱりそっちに行くんだな!!』


ルージュが無線でそう知らせると、無線の先の快斗は大いに喜んでいるようだった。


数秒間互いの状況を説明しあい、一旦無線を着ることになった。


『こっちはまだ残ってるからな。そっちは国民とか、キューと協力して守ってくれ。キューには俺の魔術を入れてある。魔道兵がめっちゃ攻めてきたら纏めて葬ってくれ。』

「了解しました。」

『じゃあな。』


無線が切れ、ルージュはもう不要となった無線を放り捨てた。一旦切ると言っても、繋げれば既に事は済んでいるだろう。無線で聞くよりも、実際に聞くべきことであると思ってルージュは無線を捨てた。


「この戦争は……勝てそうですね。まだ分かりませんが。」


ルージュは希望の眼差しで快斗のいる方向を眺めた。きっと快斗や他の実力者が、敵を殲滅してくれるだろう。そう考えて腰を下ろした。


だが、現実はそう甘くはない。快斗の運もここで尽きることとなるだろう。


真の絶望はここから始まった。

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