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罪深い男の想像話  作者: 病み谷/好きな言葉は『贖罪』
《第一章》 怒る彼は全てを殺し尽くす
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あんたあいつか

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ!!」


荒い息を吐き、戦場の中を矮躯が駆け抜ける。


「ひぃ!?」


そのすぐ後ろを、金色の鎖が凄まじい速度と威力で地面を抉った。黒いバンダナの様な物で目を隠した天使が鎖で矮躯を狙い続ける。


「あぁもう!!いい加減に起きてくださいよぉ!!サリエルさん!!」


泣き叫びながらヒナが弓矢を構える。本当はサリエルに弓矢など向けたくは無いのだが、こんな状況では致し方ない。


狙うはサリエルのつけているバンダナ。あれがサリエルの神経かなにかに作用しているとヒナは考えている。薄いその布だけを撃ち抜いて壊すには、相当な集中力を要する。


正面から打ってしまっては、サリエルの眉間を撃ち抜いてしまう。なのでその布だけが壊れるように真横から弓矢を掠らせる必要があるのだ。


そもそも眉間さえ打ち抜けるのか既に危ういというのに、バンダナだけを消し去るなんて出来るのかと、ヒナは嘆く。


「うわぁああ!!絶対無理ですよぅ!!」


弓矢を打ち続ける。次元をねじ曲げ、元に戻る反動で弓矢の軌道を変えたり威力を上げたりとテンプレを繰り返してみせるが、容易く鎖で叩き落とされてしまう。


自分から任せてとか言っておいてこのザマ。暁の戦闘からサリエルを外せたところまでは良かったのだが、今となっては後悔でしかないのかもしれない。


だがそう言ってる場合でもない。ヒナは違くとも、サリエルの方はこちらを殺す気満々なのだ。


本気でやり合わなければ速攻でこちらが負ける。これは訓練や遊びではなく本当の殺し合いなのだ。ヒナもそれくらいは弁えている。


それに、渡したいものだってあるのだ。絶対に元に戻して、その胸にそれを叩きつけてやる。


「いいですよもう!!戦術は私のやりたいようにやって見ます!!」


ヒナは決心して、弓矢に手をかける。その矛先がどこを向いているのか。サリエルはその狙いを見抜くことは出来るのだろうか。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「~~~♪~~~♪」

「あの、そんなに大声で歌っていると………」

「あ、そっか。」


暗い城内を悠々と歩く快斗。その後ろには快斗が助け出したルージュがくっついている。


「内側から本陣を潰すのですね?」

「まぁ、そうだな。あいつらは攻める側だから、攻められることはあまり考慮してねぇだろうよ。それに助けたい人もいるしな。」


快斗は腕を回して気合を入れる。元々ルージュを助けるつもりは無かったのだが、声が聞こえたもんで、つい助け出してしまった。


本当は別行動させて敵を邪魔しまくろうとしていたのだが、配置されている魔道兵がなかなか強く、ルージュでは太刀打ちが出来ないので仕方なく一緒にいるのだ。


敵の目的地はここからかなり離れているし、ここの警備は薄いものだと思っていたのだが、一般魔道兵とは違った形の魔道兵団がそこらかしこに設置されていた。


「魔法陣を壊したのがミスだったか?でもあれ壊してないと内側から破綻するよなぁ。」


魔法陣を壊したことで侵入者がいるということは容易に想像が着く。一応あまり使い手のいない『怨念』で破壊したのだが、これだけ対策されるとあまり意味が無い。


今の快斗からすれば一太刀出来る程なので問題は無いが、ルージュを守りながらルーネスを助け出せるのかという問題がある。


幸い、ルージュが自身の能力を正しく理解しており、戦闘の邪魔になると判断した場合は、快斗が言うよりも早く避難している。優秀だ。


「ルーネスさんはどこにいっかなぁ。ルージュ分かんない?」

「いえ、さすがにそれは………」

「だよなぁ。」


ルージュを探し迷うことを続けて既に1時間。崩れた城内は、快斗が覚えた道順では無くなっているため、どこを見ていないとか、どこがまだ残っているのかとかが分からない。


「だりぃマジで。ここにいたりしねーかな。」


そう言って、まだ開けていなかったドアを当てずっぽうで開ける。


「お?」


中は思ったよりも広く、その空間を埋め尽くすほど大量のケージのような物が置かれていた。


黒いケージの中、そこには何人もの人間が閉じ込められていた。中身は女性や子供ばかり。男性は1人も見当たらなかった。


「殺す用に取っておいてあるのか。」


快斗は首をかしげ、ケージに近づいて牢に触れる。すると電撃が走ったかのように弾かれ、ケージを力づくでは開けられないことが分かった。


「う……そこに、誰かいるんですか………?」

「?」


と、快斗の手が弾かれた音で目覚めた1人の女性が起き上がった。快斗がそちらを向くと、なんだか無性に懐かしみを感じた。


「ッ、あなたは……!!」


女性は快斗を見て嫌そうな顔をした。不思議と怒りが少し湧いてきて、そして久しぶりに友人に会ったかのような感覚。快斗は少し悩み、そして気がついた。


「あ、あんたあれか。俺を悪魔だっつって、セルス街から追い出したギルドの奴だろ。」


女性は頷く。妙に嫌われていると思ったらそういう事かと快斗は納得した。そして途端に面白くなった。


「なんでこのエレストであんたが捕まってるんだよ。」

「あ、あなたが街を破壊したせいで!!最後までとどめを刺すように指示をしなかったとかで私はクビになったんです!!仕方がないから仕事を探しにこのエレストにきて、仕事も見つかり彼氏をできたというのに……急にこんなことって………。」

「ははっ。お前も大変なんだな。」


快斗は女性の与太話を鼻で笑ったあと、背を向けて歩き出す。


「あ、ちょ、助けてくださいよ!!」

「あぁ。でもまだ無理だ。あんたは足でまといにしかならねぇし、ここのボスを潰してから、ちゃんと全員助け出してやるからさ。」


快斗は振り返り、なんだか泣きそうな女性に笑ってこう言った。


「まぁ、恨んで待っててくれよ。」


ドアを爽快に開け、快斗とルージュは女性の前から姿を消したのだった。

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