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罪深い男の想像話  作者: 病み谷/好きな言葉は『贖罪』
《第一章》 怒る彼は全てを殺し尽くす
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『魔剣・デュランダル』

「おおぉぉおお!!」

「ちょこまか動くな愚物めが。」


雄叫びを上げ、赤青の両手剣を振り回すヴィレス。飛んでくる剣の数は底知れず、そこら中に弾かれた剣の残骸が散らばっている。


そしてその剣の残骸は時間が経つと修復を始め、再びヴィレスを追尾して飛んでくる。


壊しても避けても、数は増える一方なのだ。だが、圧倒的にヴィレスが不利だという訳では無い。それはヴィレスの固有能力ゆえだ。


「オラオラオラァ!!どんどん俺は強くなるぞぉ!!」

「黙れ。」


ヴィレスの固有能力は『負けず嫌い』。ヴィレスに確実に殺意が向けられた攻撃を受ける、捌く、流す、避ける度に全てのステータスが7パーセント事に伸びていく。ただし、10分攻撃を受けないと上がったステータスが全て消えてしまうが、


「こんな状況だからそんなこと有り得ねぇよなァ!!」

「腐れ外道め。」


剣の波が押し寄せる。血を求めてうねる蛇のように剣が連なったそれを、ヴィレスは連続斬撃で打ち消し続ける。


「おおおおおお!!」

「さっさと死ね。」


剣の猛攻が終わったかと思えば地面に亀裂がはいり、足場が崩れて体勢を乱され、亀裂の隙間から飛び出した剣がヴィレスを狙う。


目の前から飛び出した轟速の剣。それは囮だ。死角からの剣がヴィレスを穿とうと迫る。


が、予想していたのか、はたまた勘だったのか、ヴィレスは両方を弾いてヴィオラに剣を投げつけた。


それを余裕で弾いたヴィオラは剣の雨を降らす。同時に回転した剣達も横から迫る。上と横。逃げ場はない。ならば作るのみだ。


「『流星輝翔斬波』ァ!!」


青の魔力と赤の魔力がそれぞれの剣に付与され、切れ味だけでなく威力も上がり、一振で三本の剣をお釈迦にした。


「そぉらァ!!」


上げて斬って落として避けて弾いて壊して殴って蹴って穿つ。その度にヴィレスは強くなり、少しずつ手に負えなくなってくる。


「なぁ剣王!!お前が負けたら俺の眷属になれぇ!!」

「負けることの無い相手に負けろなど無理な話だ。」

「その余裕面をぶった切ってやるさ!!」


ヴィレスが飛び上がる。真っ向、影、死角から刃が飛び交う。それら全ての起動を察知して躱し、更に足場にして更にヴィオラに近づいていく。


「動くな畜生。」

「んがっ!?」


後一歩のところで、目を逸らさせられた。ヴィレスが躱した剣達が一定の角度を保ち、太陽の光を反射させて収縮。集中した太陽光は鉄をも溶かすレーザーとなる。


約600本の剣から反射した光の行き着いた先はヴィレスの左目。蒸発音とともに視界が消失した。


「なん………」

「『鉄の処女(アイアンメイデン)』」


左目の痛みに一瞬怯んだヴィレス。剣がヴィレスを捉え、一斉に収縮する。逃げ場がない。


「グルるるぅアアァァ!!」


舌を噛みちぎる勢いで叫ぶヴィレス。殺気が向き散らされ、ヴィオラでさえ少し怯んだほどだ。


「『殺滅迴裂破』ァ!!」


青と赤の剣を開き、そのままで空中を踏んで回転する。向かってきた剣を全てを一挙に吹き飛ばし、そのせいで更に力をあげる。


しかしこの固有能力の面白いところは、能力増強だけでなく、回復にも使えるというところだ。


「いってぇ、が、効かねぇ。」


健全に動く左目をぱちぱちと瞬きさせ、ヴィレスは楽しげに笑う。ダメージを受けると回復するという矛盾。一生戦闘が終わる気がしない。


(ジリ貧か……)


ちょびちょび削っても意味が無い。つまりは、一撃でしとめなければならないということだ。


「面倒な奴だ。」

「大抵の敵はそう言って死んでくんだ。だが安心しな。お前は俺の眷属になるんだ。」

「畜生が何を言う。」

「強情な女を踏みつけるのが好きでな。」


SとSも相性がいい。


「性欲処理道具になれ!!」

「これまで会ってきた中で、貴様は1番の愚か者だ。」


口調は穏やかであるが、その表情と殺気故に心情が穏やかである事ないはずだ。だがそれもそうだろう。自分の体を舐めるように眺められていい気分の女性など存在しないはずだ。ましてや知りもしないクソ野郎になんて真っ平御免だろう。


ヴィオラは怒りを糧に、腰に付けられた1本の剣に手をかける決心をつける。


未だ誰もヴィオラがその剣を使ったところを誰も見た事がない。その剣は謎に包まれていた。真っ白な鞘に真っ黒な柄が覗いている。


彼女は1度、臣下にその剣について聞かれたことがあった。その剣はなんと言うのかと。彼女はこう答えた。


『魔剣・デュランダル』


「よく見ておけ愚物。これが、お前の命を切り裂く一太刀となる我が魔剣、デュランダルだ。」


ヴィオラがデュランダルの柄に手をかけた。その重量は凄まじく、ヴィオラ以外にこの剣をぬけたものはいない。ヴィオラでさえ、滅多なことがなければ扱わない。


それほど強大で、尚且つ扱いが難しいのだ。だが、ヴィオラなら使いこなせる。なんせ、デュランダルはヴィオラをつがいに選んだのだから。


「ふん。」


鞘から抜き取られた刃は2本に割れており、金色の輝きを放っている。輝きが強すぎて、剣身がぼんやりとしか見えない。強すぎるその輝きは、ヴィレスを焼き焦がすかのように増大し、当たりを照らす。


「我が腕。我が体。我が心。我が意思。この剣は余自身だ。余の思う通りに動き、余の思うように全てを改変させる。」


ヴィオラの選んだものは、その強い光に癒され、逆に敵と認定されていた場合は徐々にダメージが与えられる。


「あの小娘ほど大きな魔術を放つつもりはなかったが……致し方ない。」

「大技は放てないって話だったが?」

「それは小娘ほどの速度でという話だ。充填には時間がかかる。その間に余を倒せば、貴様の勝ちであるぞ?」

「おぉ、なら………」


ヴィレスが飛び上がる。


「死ねぇ!!」

「ふん。」


剣が叩きつけられ、ヴィレスが吹き飛んだ。地面を抉りながら土煙を上げる。


「動けないとかじゃねぇのかよ……」

「たわけ。そこまで余は甘くない。」


デュランダルをヴィレスに向け、ヴィオラはニヤリと不敵に笑う。


「さぁ、してみせよ愚物。お前の価値はここで変わる。」

「やってやるよ、剣女ァ!!」


再びぶつかる2人。その姿は高速で、デュランダルの光も相まって周りの兵士達からはその戦闘が全く見えなかった。

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