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罪深い男の想像話  作者: 病み谷/好きな言葉は『贖罪』
《第一章》 怒る彼は全てを殺し尽くす
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目が覚めて

襲ってくる大量の毛虫。血まみれの目玉達。

肥大化した赤ん坊。腕が腹について呻き声を上げている産婦。


それら全てを、どこからともなく現れた剣達が撃ち抜いて壊す。


笑い声をあげる花。歩き回る下半身。口だらけの男。双頭を持つカマキリ。黒色のG。


天から降り注いだ剣達が、全てを穿ち壊す。


足が生えたサメ。内臓むき出しの巨大蛙。

首のない女。降り注ぐ生首。這う腕。真っ赤なナメクジ。顔が半分裂けて寄生虫が姿を現した中学生。


地面から飛び出した剣達に全て斬り刻まれた。


「はっ………」

「そなた、毎日こんな夢を見ているのか?」


恐怖に彩られた表情で目を覚ました高谷の上から、眠っけを含んだ声がかけられる。不思議と落ち着くその声音に高谷が視線をあげると、ゴミを見るような目で見下ろしているヴィオラが、高谷の額に指を突きつけていた。


「そなたの夢に邪気が入りすぎて十分に眠れんかった。歌声はよかったんだがな。」

「は、はぁ………ごめん。」

「まぁよい。だが、あの夢は気味が悪いものだったな。」

「毎日見てる訳じゃなくて、今日初めて見たんだけど……」

「はぁ………ほれ。」


ヴィオラはベッドの近くの小さなタンスを開けると、中から取り出した、小さな剣の形をした宝石が着いているペンダントを高谷に手渡した。


「これは?」

「余の魔力が篭っている。これを付けておけば、数ヶ月は持つだろう。」

「え?昨日渡してよ。これ。」

「最近寝つきが悪くてな。よく眠れるきっかけが欲しかったのだ。」

「エーエスエムアール扱いなの?俺。」

「エレストで買った『録音機』が役に立ったな。」

「俺の声使い回しなの?それ盗聴じゃない?」


首にペンダントをつけた高谷が、ベッドからおりて自分の部屋に向かう。ヴィオラもそれに続いて部屋を出た。


「余は朝食に向かう。お前も後で来るがいい。」

「えーっと、なんで?」

「む?飯は大勢の方が美味く感じるぞ。」

「…………へあ?」


会って早々剣を飛ばして殺してきた人物が何を言うのかと高谷は驚愕に開いた口が塞がらない。


ヴィオラは怪訝な顔をして、


「なんだ。」

「意外なんだよ。君がそんな事言うなんてさ。」

「?余が非情な皇帝だとでも?人は見た目で判断するものでは無いぞ。」

「いや、見た目じゃなくて、俺を襲ってきた過去から考えた事なんだけど。て、行っちゃった。」


高谷の言葉を無視して進んでいくヴィオラ。凄まじい速度で宙を舞うヴィオラを見て溜息を着いた高谷。


そして、目を見開いて、


「久しく、溜息なんてしてなかった気がするなぁ………楽になるや。」


溜息をつくことはストレス発散にいい。という事を快斗に教えられてから、高谷は意識的に溜息を着くようにしていたのだが、最近はその事を忘れて走り回っていた。


「はぁ………」


深い深い溜息を着いて、それから大きく息を吸った高谷。廊下の巨大窓から差し込む日差しに眩しさを感じ、ゆっくりと彼は部屋に戻っていく。


途中、寝癖でボサボサの髪のライトに会った。


「………大丈夫?」

「何がですか?」

「髪の毛。」

「あぁ。僕寝相悪くて。」

「ソフトクリームみたいになってるよ。金箔まぶしたやつ。」

「水で直してきますね。あ、あと皇帝は来客と食事を共にすることが多いので………」

「あぁ。さっき朝食来いって言われたよ。着替えないと。また後で。」

「はい。それでは。」


扉を閉めて別れた2人。ヴィオラの寝室から高谷の部屋までは意外と距離があった。


「よし。」


部屋に戻って顔を洗い、用意された歯ブラシで歯を磨きながら服を着替え、窓を開けて日を浴びてから高谷は扉から外へ踏み出した。


何故か胸の奥深くで、かつてないほどの歓喜を感じながら、朝食の会場へライトと向かっていった。

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