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罪深い男の想像話  作者: 病み谷/好きな言葉は『贖罪』
《第一章》 怒る彼は全てを殺し尽くす
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別れた2人

「はぁ………なんだここ。」


快斗は手を両目の上に翳して、空高くそびえ立つ茨の壁を見上げていた。


所々に美しい赤い花を携えた茨の壁は、枝が見えないなるほどに棘で埋め尽くされ、棘は刃のように鋭く切れ味がいい。


先程快斗は壁に手を当ててみたが、手は壁に触れただけで豆腐のように簡単に傷をつけられ、ならばと草薙剣で思い切り斬り裂いてみれば、茨はすぐさま再生した。


そして、快斗の草薙剣を持っていた方の手に、剣に斬られたかのような傷が出来上がった。それは、快斗が茨に放った斬撃が


現在、茨に触れ、茨に跳ね返された斬撃で傷ついた手を魔力でゆっくりと治癒しながら、快斗は脱出方法を考えていた。


とりあえず今成したいことは、いなくなってしまったヒバリと合流して、迷路のように続く茨に囲まれた道を脱出したい。


が、快斗は腕を回復させている間に、もう一つ厄介なことを発見する。それは、


「魔力が使いづらい………」


魔力は茨に吸われているようで、体全体に纏わせるだけで、大魔術を使うほど魔力を消費する。


しかも使う魔力の量が多ければ多いほど吸われる魔力量も激増するようで、『死歿刀』や『ヘルズファイア』は使用できない。


そして更に厄介な事に『怨力』さえも吸われてしまうのだ。つまり、エネルギー系は何でも吸われてしまうのだ。


「なんつー場所だ。あの野郎……帰ったらどつき回してやるからな………」


暁の笑う顔を思い浮かべて憤慨する快斗は、回復した腕を振り回して肩を慣らすと、壁とは反対の道の方へ振り返る。


「左か右に沿って進むってのが定石だが、ここで通じるのか?てか、これに終わりがあるかどうかすら怪しいんだが………」


先が不安しかない快斗だが、ここで進まずにいたとして意味もない。


腕から血が滴らないことを確認して、快斗は左の壁に沿って進み始めたのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ちィ………」


快斗が壁を見上げていた頃、ヒバリは舌打ちをして同じように茨の壁を見上げていた。ヒバリの左手には風龍剣が握りしめられており、手と風龍剣は血で真っ赤に染っている。


「マズイな……傷を治す手段がないぞ。」


存外深い腕の傷口を眺めて、ヒバリは嘆息混じりにそう呟いた。


脳内には、自分と同じように壁を斬り裂いて腕から血を流し、当たり前のように傷を魔力で治していく快斗を想像して、妬んだ。


「天野だけ、治癒能力があるなんてズルくないか………」


珍しく本音を出すことが最近多いヒバリ。快斗に回復の手段がある事に不平等性を感じているようだが、ヒバリにもきちんと自己再生能力は備わっている。


ヒバリの現在の種族は悪魔。微量に残る『魔人因子』を解放すれば、その魔力で回復することも出来るが、ヒバリはそのことを今現在忘れている。


「仕方がない。」


ヒバリは右手の袖を二の腕のところで斬り裂くと、その服の破片を傷口より心臓よりのところにに巻き付けて強く縛った。


「これでいいとは思わないが、天野に会えれば………どうにかなるだろう。うむ。行くか。」


秀才に見えるヒバリは、実は頭が悪いのかもしれない。そんな新事実が垣間見える呟きを続けながら、ヒバリは右の壁に沿って歩き始めた。

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