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罪深い男の想像話  作者: 病み谷/好きな言葉は『贖罪』
《第一章》 怒る彼は全てを殺し尽くす
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訓練&謎

「あ、がァあ……あぁあ!!!!」


真っ白な閃光が支配する世界で、苦しげな声が響き渡る。大量の電磁波が溢れ出し、身を焼かれる少年の体に浸透していく。


「あ……はぁ……げほ……」

「やめぃ。」


凛とした声が響くと、閃光が消え去り、煙を上げながらライトが地面にうつ伏せに倒れた。


雷の魔術を放ち続ける忍達に辞めるように命じた零亡はため息をついて、


「この程度なのか。ライトよ。」

「あ、あぁ……」

「弱い。貧弱で軟弱で。それでも鬼人と名乗れるか。女帝、零亡の息子と、名乗れるか。」

「ご、ごめんな……さい……。」

「謝罪は求めておらん。次じゃ。立て。軟弱者。」

「く………」


感覚が無くなりつつある体を必死に起き上がらせ、血の滲むような訓練を再開する。


逃げ出すことは出来ない。ライトの足首と手首に付けられた枷に描かれた紋章が、ライトを60重塔に固定しているのだ。


何度も外そうと試みたが、握りつぶすことも、破壊することも出来なかった。


「結果。結果と実力が欲しいのじゃ。お前の軟弱な部分を打ち砕き、厄災に打ち勝てるような鬼人に育てなければならんのじゃ。」

「はぁ………はぁ………」

「さぁ、始めろ。再開じゃ!!」


零亡が扇子を掲げ、大きな声で宣言する。それに応えて、忍達は再び閃光を放つ。


「あ、ああぁぁああぁああ!!!!」


ライトが全身から雷を放ち、その閃光を受け止める。元からこれは、全方位からの攻撃を弾く訓練だ。失敗すれば、全身に火傷を作る羽目になる。


「『轟雷』ィ!!!!」


ライトは血を吐く勢いで雷を放ち続ける。ズタボロの体を酷使して。


ここまでするのは、姉に寂しい顔をさせないため。泣かせたくないのだ。傷だらけで地面に倒れる自分を見て泣く姉を、想像したくないし、見たくもない。


その考えを持ちながら雷を纏うこと自体が、零亡の思惑通りで、既に思考が操られている事実に、零亡は口元を歪めるのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ふんふ~ん♪」

「天野。」

「わーってるよ。真面目にやってる。浮かれてなんかねぇよ。」

「なら、いい。」


癖の鼻歌を歌った快斗に、ヒバリが厳しい目を向ける。だが、快斗もそれは仕方の無いことだと感じている。左の壁伝いに進み始めてから既に二時間。周りの景色は変化なく、何処までも同じ石壁が続けば、出られるかと不安になるだろうが………


ヒバリの場合、単に弟が心配なのだ。異空間に飛ばされて尚、自身以外へと心配を向けられるヒバリに感心する快斗。


「にしても、随分と長ぇ道だな。なんだか同じ所を何度も回ってる気がするぜ。」

「同感だ。床の傷の数。壁の凹みの数。端に落ちている石屑。全ての物が、一定の時間ごとに同じ数現れる。」

「そんな細かく見てんのか。……いや、それぐらい見ねぇと抜け出せねぇな。」


両手で自身の頬を勢いよく叩いて、快斗は周りに目を配る。傷、凹み、石屑。空気の流れや石に響く振動。全てを記憶していく。


「と、またここか。やっぱりグルグル回ってんのかな。」

「………どうだろうか。」


快斗は嫌気がさしたように、開けた空間の中に飛び込む。そこは円柱をくり抜いたような空間で、地面には不思議な手の形の手が書かれている。


そして、何より特徴的なのが、


「すんすん。今回は……何かの花の匂いだな。」

「ああ。リムスレムの香りだ。」


部屋ごとに変わる花の匂いだ。その香りは、鼻が良くなければ嗅ぎ取れない、薄いものだ。


「ヒバリはよくこの花の種類がわかるな。」

「昔、母に教えこまれた。花は知っておいて損は無いとな。花言葉も。」

「ふーん。因みにこの花の花言葉は?」

「『悪魔の血』だ。」

「不吉っ!?」


思わぬ言葉に、快斗が飛び跳ねて驚いた。


「なんかやな予感。」

「ただの花言葉だぞ。それに、今までの花の花言葉も全て、これに準ずるものだったぞ。」

「例えば?」

「前回のスタリークの花言葉は、『魔の滅亡』。前々回のリリースメスの花言葉は『反逆者の死』だ。」

「なんか、考えたらそれ全部悪魔に当てはまるよな……怖くなってきた……。」

「とにかく急ぐぞ。先に出口があるかもしれん。」


ヒバリが通路に向かって歩いていく。快斗はついて行こうとして足元に描かれた手を見つめて思う。


「なんか見た事ある気がするんだよなぁ…………」


左手は親指に他の4本の指がくっついて筒状になっており、右手の人差し指が左手の親指に着いている。


それが何を意味するのか、あと少しで思い出せそうなのだが、


「なんだっけな………くそ、俺としたことが……全く思い出せねぇ……。」

「早く行くぞ!!天野!!」

「あー分かった分かった。行く行く。」


それを思い出す前に、快斗はヒバリに連れられて先へ進んでいく。


もう隠す気がないのか、ヒバリの足取りは焦るほどに速くなっていく。


快斗の頭にはずっとあの手の形が残るが、それを思い出す前に、快斗はまた新たな謎に直面することになるのだった。

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