始まり
「ハハハ………笑ってしまうな、本当に。」
「…………。」
黒い服を纏った白髪の少年は、左右の色違いの瞳を彷徨わせ、何も無い虚空を掴もうとする。
「お前は強い。俺では………勝てない……。」
少年が見る先に、語り相手はいない。いるのは後ろだ。だが少年は最早それに気づくことすら出来ないほどに弱りきっていた。
「俺では勝てない。だから………」
語られている側の人物は、その少年がこちらを向く前に刃を振り下ろそうとした。決してないと思っていたその出来事が起こる前に。
「ふ………」
少年は笑い、そして、勢いよく後ろで剣を振り上げた人物に顔を向けた。ローブを纏い、顔が見えないその人物は、振り向かれた事に驚きもせず、ただ固まった。
「託す………俺じゃない誰かに……!!」
少年はローブを纏った人物の胸元を掴み、引き寄せ、宣言する。
「お前を……神を……殺させる!!」
遥か頭上では光の炸裂が起こり、無重力空間で掴み合う2人を飲み込んでいく。少年は蒸発し、ローブの人物はそのまま消えてゆく少年を見つめている。そして、少年の意識が飛ぶ寸前、ローブの人物は笑い、そして嘯いた。
「やれるものならやってみろよ。悪魔。」
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神は最高峰の存在で、最も強く美しい存在と表されることが多い。
だがこの話では、神は孤高の存在という訳でも、慈悲深いという訳でもない。信仰される神もいれば、忌み嫌われ恨まれる神もいる。
そして、他の神から最も厄介と言われている神達が、ある世界を支配及び管理をしている。
魔神、狂神、鬼神、竜神、聖神、邪神。6つの神は、絶えず争いを続けていた。
それに、それが人間の規模のものなら困りはしないが、この者たちは神。ただの口論でも星の環境がひっくり返るほどのエネルギーが生まれる。
神たちからすれば遊び程度の行動でも、この星に生活している者たちからすれば、大災害なのである。
そしてまた、この四神が一つのゲームを思いつく。ゲームの内容は、鬼神と魔神で一組。邪神と狂神で一組となり、それぞれ7人の戦士を勧誘し、戦わせる。そして勝った方の戦士たちは、一人ずつ、それぞれの願いを叶えてやる。
願いを叶えさせるのが神にとってなにになるのかというと、神の強さは、大方自分での修行、鍛錬によって強まっていくが、一番神の強さに影響するのは、信仰なのである。
この神たちは、願いを叶えてやることにより生まれる信仰を期待してこのゲームを始めたのだ。信仰を得ることができれば力は増し、それぞれのいらない神を殺すことができる。そういう物である。
このゲームでは、それぞれ一人ずつ、手下の神を戦士の中に加えることができる。つまり戦うのは、一チーム合計8人。全部で16人である。
そして、竜神と聖神が監督になり、
それぞれの思惑と共に、ゲームが開始された。
邪神、狂神は、自分の手下の神を進撃させ、仲間を探させ始めた。が、鬼神、魔神にはある考えがあった。
それは、魔神の所持する器に最適な魂を探し出し、戦わせること。
魔神は早速魂を探した。そして、僅か数分でその魂を発見する。
魔神は、不幸にも自分に選ばれた魂を嘲笑いながら、その魂を呼び出すのだった。
「さぁ、彼は絶望しか残らない世界に、どう生きていくのだろう?」
魔神は1人、自身の悲願のための第一歩を踏み出すのだった。