9.諦めるボク、信じないエミィ、吹き飛ぶ変態
勉強勉強勉強勉強ヴぇん凶、弁筺、い、一体そこまで勉強して何になるんだ!
英語なんて翻訳機ありゃ良いじゃないか! 数学なんて電卓使えば良いじゃないか! 理科!? そんなもん必要あるのか!? それに適材適所って言葉知ってっか!?
by勉強嫌いの終わってる奴。
3/16大幅改訂。……ネタがなくなったよ。
「……エミィ、出来れば、ボクはキミと違って戦闘民族でも何でもないから、戦闘に参加なんてしたく無いんだけど」
そうして、何故か何処からかエミィが持ってきた簡素なつくりをした、魔法の杖のような物を両手で持たされて、ボクの身長を超える大きさの大剣を構えている漢二人と対面させられているのである。……何だこれ、これをまさかチュートリアルとかほざくような奴じゃないよねエミィは。
例え、ボクを助けるために、一番初めにボクへと物理的な方法で攻撃をしてきたエミィだろうと。
例え、ボクを助けるために、敵味方傍観者を考えずに、何某の攻撃を行ったエミィだろうと。
例え、ボクを助けるため……なのかは疑わしいけれど、ボクを押し倒した張本人の癖に、ボクを叱責してきたエミィだとしても、流石にそんなふざけた事は言わないでしょう。……言わないでね?
「頑張れ! 実戦こそ最大の訓練だよ!」
……い、言った、ね。
そんな、最悪の事態に、異常な位にボクは心の中で表情筋を引きつらせる。……と言うか、きっと、現実的にも今ボクは、引き攣った笑みを浮かべながら、力強く、エミィに渡された簡素な杖を、怒りのままに握りしめる。
……出来る事ならば、この杖で、エミィを叩き落としたい。
「まあ、大丈夫だよ! 最悪、システム的な介入を行うからさ! だからこれいわゆる、勝ち戦とか言う奴だよ!」
効率厨なのか、それとも率先的に、自主的に、主体的に、雰囲気ジェノサイドを行っているのか、ボクには全く分からなかったが、とりあえずこいつといると、雰囲気に飲み込まれる、と言う事が絶対になくなる、と言う事だけは理解した。
……ボクは、雰囲気を楽しみたいタイプの人間だから、さ。チュートリアルが終わったら、さっさと保健所に引き取ってもらおう。「迷子の妖精さんです」とか言って。保健所あるか知らないけど。
「……メタ――、何でもないや」
言った所でどうしようもない。それどころか悪化する可能性が高い。と言う推測から、その言葉を躊躇ったボクだったが、それ以前に絶対的安全を保障されていても、剣を振るわれる、とか言う中世の人間、言って二次大戦に参戦した人間でなければ経験しないことをされて、恐怖しないわけが無いのだ。
もっと、向こうの人間がメルヘンチックな人ならば良かったのならば、体格が大きく、更に言えば堀が深くて色黒い。……真っ白で、ちっこくて、そんなボクとは、正反対だぁ。
「じゃあ、妖精の力を借りる妖精使いの戦闘方法を教えるね!」
そうして、内心で、恐怖しているボクに対して、意気揚々と話していやがるエミィに対して殺意を覚えながらも、殺されたくないし、エミィなんぞに、システム的介入などをされたくもないので、出来得る限り真面目に聞く事にした。
この時点でもボクは負けている気がするのだが、これ以上はこいつなんぞに助けてもらいたくはない。
「ただ一つ! 妖精と心を合わせる事だね!」
その言葉を聞き、つまりボクはこのゲームで戦闘を行えないのだと言う事に気付く。……残念ながら、こんな頓珍漢な妖精と心が合うわけが無いじゃないか。何をほざいているんだ。
そうかそうか、つまりそれを知っていながら、ボクに戦闘をさせようとしたエミィは遠回しに「死去しろ」と言っていたのか。
「……」
「あはは! 無理だと思うけど頑張って!」
結局のところ、どうやらボクとエミィはそう言う部分で繋がっていた様ではあるが、何方も戦闘が勝てるとは全く思っていない様子だった。……これはエミィの言葉なんて無視して棒術を極めた方が良いんじゃないだろうか?
いや、でも、ボクが出来る武術なんて中学校で習った柔道くらいだ。……しかもABC評価で全てCだった柔道しか。
「じゃあ! スタート!」
そうして、ボクの戦闘方針が全く決まって居ないにも拘らず、満面な笑みを浮かべながら絶望に近い宣言をエミィが行う。……エミィは一体誰の味方なんだ、と言いたくなったが、どうせこいつは悪戯したいだけだろうとまた諦める。
「あ˝ぁ˝ぁ˝ぁ˝覚悟しろ!!」
それと同時に、反対側に体験を持ち構えていた男達は、ボクでは絶対にできない様な野太い雄叫びを出しながら、吶喊してくる。
ボクからしてみれば、あんなに図体が大きくて、更に言えば筋肉だらけだと言うのに、これほど無策に吶喊する物なのかと、意外に思いながらも、ボクは男たち以上に無策で直立している。
……だって、何しても無駄じゃね?
「はんっ! 妖精が居るからって、俺たちも甘く見られたもんだな!」
その様子のボクを見て、男達は何をとち狂ったのか、ボクが男達を煽っている様に見えたらしい。……残念ながら事実はその逆で、妖精すらつかないボクが絶望して、突っ立っているだけだと言うのに。
「うぉらぁ˝ぁ˝!!」
もうボクの目の前に来ていた男二人のうちの一人に、接近され、ボクに向かって大剣を振り込もうと動いていた。……勿論、死ぬ事が分かりきっている訳ではあるけれど、黙って死にに行こうとする程ボクは生を諦めている訳では無かった。
……いや、まあ、ゲームなんだけどさ。
そうしてボクは、刃だけには当たらない様に、手元の杖で刃と杖で十字を作る様に交差させて受け止める。
「ふべっ!?」
しかし、見た目から貧弱な腕をしているボクが、あんな脳筋な野郎が精一杯振るった大剣の衝撃を、真正面から受け止めきれるわけが無く、ボクはその斬撃から発生したエネルギーと共に、背後に二メートルほど飛ばされてしまう。
……勿論その時の衝撃を真っ先に受けた腕が、まともに使えない状態になった事は言うまでも無かった。
「へっ! 所詮は小娘か!」
吹き飛ばされたボクを見て、男達の内の一人はそう吐き捨てながらボクへと近づいて来る。……システム的介入とやらはどこに行ったんだエミィ。と言う怨嗟の気持ちを、未だに傍観者をしているエミィに対してはなってみるが、結局のところ怨念が伝わるわけもなかった。
「俺たちを馬鹿にした罰――」
そいつらが地面に転がっているボクの顔を覗くように除きながら一人が大剣をボクの首に振るう為に、大きく振り上げる。……もうだめだ。
「いや、まて、こいつ意外と上玉じゃねえか?」
そんな時、大剣を振り上げている男ではない方の男が、大剣を振り上げている男を制止しながらそんな事を急にほざきだす。……まさか、だよな。
「……確かに、なぁ?」
そうして、大剣を振り上げていた男も、静止した男の台詞で、ボクの顔をまじまじと見た後に、見ただけで背筋に悍ましい何かが流れてしまう位、生理的嫌悪のする舌なめずりを見てしまった途端、ボクは今すぐ死にたくなった。
「なぁ? どうだ? お前が俺たちに誠意を見せるんだったら、お前を生かせてもいいが?」
……下種がっ。
そんな、全く正義感も無いボクがまるで、清楚な女騎士が言う様な台詞が自然と心の中で生まれてしまう位にはこいつらは下種だった。気持ち悪かった。……と言うか、エロ同人でもないのにこんな事を言う様な輩が居たとは思えなかった。
「まあ、貧乳だが別に良いだろ」
ムニュン。
そんななか、男の内の一人が唐突にボクの胸を揉んできやがったのだ。
きもい、キモイ、と言う思考がボクの頭を占めた途端、今まで全く役に立たなかった杖から、急激に莫大な風が吹き荒れる。
「なっ!? また、妖精か!」
叫び声をあげる男達であったが、その異常なくらいの爆風には耐えることが出来ず、男達は一瞬にしてその爆風に巻き上げられ、いつの間にか、ボクの視界から見えない程、空高くへ飛ばされて行っていた。
「……」
「Lime? だ、大丈夫?」
黙って空を見上げて、そうしてなだらかな胸元を見て、また空を見上げて。その行動を五度ほどした後、遂に今まで傍観者として、これまでの事を見続けていたエミィは、凄まじく居心地の悪そうな創り笑顔を見せながら、ボクに話し掛けて来る。
「エミィ、冥府に永遠と落ちてろ」
しかし、そんなエミィに対して、静かに暴言を投げつけた後、ボクは既に開いていたメニューバーのログアウトと書かれたところをタップし、そのまま逃げる様にしてログアウトしたのだった。
好きな事をずっとやってたいよね。強制させられたり、指図されたりすると、吐き気を催しますよ。と言うか顔に吐瀉物掛けてやりたいですよ。